第150話【終戦】
僕が地中から飛び出る随分前に、すでに液化した大通公園地表面は僕を飲み込んだ瞬間に普通の地面に戻って、続けて飛び込もうとした静流や蒼さんを受け入れる事はなかったんだって。
いや、助けたんだから、また飛び込もうと、リトライすんなよ、っては思うけど、僕と春夏さんが再び、地上に現れた時に、抱きつかれて、泣かれたから、心配はかけたんだなって思って、ごめん、とは謝っていると、そどこから現れたのか、春夏姉と明日菜さんに、突き飛ばされて、待機していた春夏さんのお父さんの車に乗せられて、春夏さん連れていかれてしまう。
毛布かな、シーツみたいな布を被されて、そのまま僕から離れてしまう春夏さんなんだけど、僕の方を見てね、笑顔で、手を振ってたから、心配かけた家族の元に行ったんだな、って思うから、もう僕の側を離れないって言ってたから、今はいいよ、みんなと仲良くしてよ、って、それだけ思って、今は、僕を心配してくれた女の子二人をまずは安心させようって、思ってると、今度は背後の方で、傾いて地面に沈みかけてた4丁目ゲートが、ゆっくりと同じ位置に、同じ高さに、まさに元通りになって行くのを見た。
そして、
「もうあれは空っぽじゃな、私がもらおう」
って、黒の神様がダンジョンに入って行った。
その行きがけに、僕に向かって、
「後は任せたぞ」
って言われるけど、なんのことだろうって、思う僕を見つめて、視線を離す黒神様の表情がさ、どこか春夏さんなんだよ、で、だから春夏さんに言われた気分になる僕は、「ああ、うん」って、その言葉の意味もを分からず返事というか了解してしまう。
ここで、僕は漸く、今の現状をみようと空を見たんだ。
空はどこまでも晴れ渡っていて、落ちてこようとする異世界も何もなかった。
普通の昼、いや大分夕方に近い日差しかな。薄い青で朱が刺しかかってる。
いつもはダンジョンにいる時間って感じだから、久しぶりに見る空の色だよ。
でも、澄み渡ったいい空なんだよ。
もうどこにも異世界のカケラも痕跡も土煙すらなかった。
ほら、僕急にさ、春夏さんの為にさ、混ざるの止めさせたから、その影響が、札幌の街に出てないか心配だったから、そのまま、静流と蒼さんに抱きつかれたまま、棒立ちで、周りを見回すも、何も異常は無さそう。
でも、何かなあ、ちょっと違和感がある。
何がって言われても、はっきりとは言えないけど、こうして大きく見渡すと、なんか違う気がする……。
それに答えてくれたのは、アキシオンさんで、
「藻岩山と円山、定山渓の一部と手稲山、そして天狗山に、その質量を分担して混ぜました、藻岩山で標高が1cm程度、高くなってます」
って僕の近くに歩いて来て、人型のアキシオンさんは言った。
「境界と資質の差は解消していますから、この世界で言う所の変化はありませんよ」
って摂理さんも言ってくれる。
「じゃあ、北海道には、札幌のこの周辺には問題無し?」
って尋ねると、
「分散しきれなかった所だと、ここを含む公園や、学校の校庭、河川敷周辺にもばらまいてますけど、そっちは1mm程度の変化もありません」
全ては自然に受け入れられる程度です。
ああ、よかった。じゃあみんな無事だね。街にも被害はなかったから、よかったよ、と、そんなことを思ってる僕の周りがまた暗くなる。
気分的な問題って訳じゃ無くてさ、本当に物理的に暗くなった。
日陰が来たんだ。
正確に言うなら、僕の立ってる大通公園が、彼らの登場によって、日光を遮られたって感じで暗くなったんだよ。
僕を日陰に収めるその正体を見ると、小さくても普通の住宅程度、大きくて、そのへんのビルくらいの魔物の人達に囲まれていた。