第129話【ギルド現着!! 敵は誰だ???】
黒い魔女の人の完全な無抵抗で発現された13212回に及ぶ、北海道ダンジョンに置ける最低最弱の魔法『ハリク』は、角田さんの目的を完遂して、彼女の持つ、アンク、つまり手からぶら下げたロケットを破砕し氷結し、さらに砕いた。
角田さんの狙いは、最初から、彼女ではなく、彼女の持っていた、杖代わりに使用していたアンクの破壊だったみたい。要は力の差って奴を見せつければいいんだってさ。
間近でそれを見ていた黒い女の人は、あまりの力の差の前にほとんど抜け殻のようになって持ち物どころか自身のプライドとか、心とかを文字通りズタズタに砕かれてしまったわけだ。
僕の隣では、全く余裕の角田さん。
それにしても、良かったよ、こんな人が仲間になってくれて。
今ひとつわからないんだけど、どうして角田さんは僕の仲間になってくれたんだろうか? 側から見ると、甚だ疑問だよね。
この実力ならさ、たぶん、深階層の深部ですらトップクラスの実力だよね。きっと。
気が付くと、黒の猟団は、目に見えてる部分は全滅だね、やったね角田さん。
ひとまず助かったって思っているところに今度はたくさんの足音。声とかも聞こえてくる。
先ほどの黒い人たちとは違う、明らかに『隠す』意思の無い人たちの喧騒だ。
今度は何だろう?
って一応警戒していると、駆けつけて来たのは、ギルとの人たちだった。
上の階から来たみたいだから、多分、非番な方達だ。
角田さんが呼び出した人たちだな、良かった、これでもう一安心だね。
結構な大人数で、その中心にはフルプレートアーマな人が数人、多分、幹部連中?
真希さんと達以外の幹部な人を見るのは初めてで、それでも、まあ、何とか助かったなあ、くらい簡単に考えていた。
その時点で僕らには大きな問題が1つあったことに全く気がついていなかった。
もう、過ちって言ってもいいくらい。
「みなさん大丈夫ですか?」
そのフルプレートアーマーの人は言う。
僕らにではなくて、焼き払われて、もしくは心を打ち砕かれて倒れる人達に向かって声をかける。この時点て、なんかおかしいよね、
攻撃されてたの僕達なのな、って、違和感?
で、この初段の時点でもっと真剣に考え対処するべきだったんだよね。
しかし、そんな事を考える間も無く、ギルドの人たちはどんどん増えてゆく、現在、この『鏡界の海』には多分、50名以上のギルドの構成員さんたちでごった返した。
「エルダーラミアです、確認しました」
その中から、先ほどとは違うフルプレートを着た女の子が言った。
こちらは僕とそう歳は変わらなそう。でも立派な出立で、もうなんて言うか、ナイトかパラディンって感じ、後から来た人たちの先頭にいたから、きっと彼女も幹部さんなのかもしれない。
「喜耒くん、ひとまず敵-勢力を包囲、こちらは、ラミアにトドメを刺す」
んんん????
なんか僕らを囲い始める。
「『佐藤 和子』さんがいます」
確実に喜耒って言われた女の子、シリカさんを見てから、僕らの方を見て言う。
すると、幹部ぽいフルプレートも男の人も、……どっかで見た事ある人だなあって、思ったよ。
「人質というわけか」
なんて、僕らの方をみて呟く。いないよ佐藤さんなんて、って思っていると、
「そちらには渡しません」
ってシリカさん。
いやいや、いないでしょ、佐藤 和子さん。
「あー、秋さん、佐藤 和子ってシリカの本名です」
またまた、角田さんったら、そんな、どう見ても金髪碧眼の外国の方じゃん。
って言おうと思ったんだけど、角田さんの言い方は冗談を言っている感じじゃない。
「え? 真面目に?」
驚いるのは、シリカさんの姿よりも、あの辿々しい日本語だよ。外国の方ならぎりでセーフって思っていたんだけど、完全にアウトじゃん。
「シリカさん、呼んでいるから行った方がいいよ」
って仕方なく言うと、
「私、まだスプーンを頂いていませんから、食べないと」
どうしても、どうあっても今、この夕張メロンピュアゼリーを食べたいらしい。