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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆終章 異世界落下編◆
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第144話【北海道の地に流れる、巡り巡る僕と彼女】

 ここに飛び込もうとして、静流と蒼さんに向かって、『消失するな』って確かに言ってた。


 でも、僕はまだいる。


 消失なんてしてない。


 だってここに入って無事って事は、僕は春夏さんに認識されているって事だよ。


 この北海道の大地に溶け込もうとして春夏さんだけどさ、異世界を北海道を主軸に混ぜてしまおうとした春夏さんだけど、彼女の意識はまだ完全に混ざり合ってない。だから消えてもいない。


 でも、もうそれは春夏さんって呼べないものかもしれないんだ。


 灰になった遺体が空に舞う様な、その小さな粒子を春夏さんって呼ぶ事はもうできないって感じで、切なくて、悲しくて、でも悔しくて……。


 瞬時に僕は叫んだ。


 「春夏さーん!」


 返事してくれない。


 いや、小さく細かく散ってしまってるけど、認識はできるけど、返事できないのかも。


 もう一回、呼んんでみる。


 「春夏さーん!!!」


 声出てるかな? 一応、液化してるみたいだから、振動は伝搬してる筈なんだけど、失敗した、アキシオンさん、やっぱり連れてくればよかったよ。って思うけど、何か、僕と春夏さんの間には誰もいてはいけない気がしたからさ、やっぱりこれでよかったのかも。


 と一様の後悔もそんな風な判断で結果的に良かったって思うけど、やっぱり春夏さんは返事がない。


 異世界の人達を助けるって事には賛成な僕だけど、でも、春夏さんとは異なる考えで僕は行動してるからね、怒って出てこないのかもしれない。怒ってるならそっちの方がいい。


 異世界をこの世界に混ぜるって、春夏さんの決めたことだから、もう随分前から、それこそ僕の生まれる前から、こうして行動してたんだから、そりゃあ決心も硬いよね。


 異世界のみんなを助けるために、最初から僕も異世界を助けようと行動することだって予想して、自分の意識すら溶かしていたんだ。


 ここ、北海道に完全に溶けるために、混ざり合う為に、彼女は自分をこの地になろうとしている。


 誰がどう考えても、僕は春夏さんの邪魔をしている訳だ。


 だって、そして、そんな時に僕がここに落ちてしまったんだから。今はもう、この世界に混ざろうとする春夏さんにしてみればとんだ迷惑な話だよ。


 でも、あれは、静流と蒼さんを助けるための完全な事故だ。


 決して僕が自ら進んでここに飛び込んだ訳じゃない。


 多分、意識していたら、きっと僕は相当ひどいことになっているか、でも春夏さんの事だから、弾き返されてるんじゃないかなって考えてる。


 でも受け入れられた。


 ここに沈んでこの身を保ってる。


 だから春夏さんに守られているんだって思うんだよなあ。


 匂いも雰囲気も、こんなところだけど、春夏さんっぽいし。


 絶対に気がついてる筈なんだけどなあ。


 「春夏さーん、ねえ、気がついてるんでしょ? 聞いてる? 春夏さーん」


 なかなか馬鹿みたいに僕はブツブツと呟いてみる。


 そんな時だった。


 僕の目の前に、あの黒い神様が現れたんだ。


 沈んているみたいな僕に対して、彼女は普通に立ってる。


 すごいな、アキシオンさんや摂理さん以上になんでもありだな、この人。


 ってか神様だからいいのか……。


 「呼びかけに応えないのか?」


 って言うから、


 「うん、全く反応がないんだ、でもここ絶対に春夏さんの中だよ、それは間違いない」


 って僕は言い切る。


 すると、彼女は僕に言うんだ。と言うか尋ねて来る。


 「なあ、お前は人は人、魔物は魔物でいいと言ったな」


 って言われる。


 「うん、言った」


 「それは何故だ?」


 いや、何故って聞かれてもなあ、今もそうだけど、僕としては直感じみた答えだったけど、間違ってはいないと思うよ。


 「何故って言われてもなあ、そう思ったとしか……」


 すると彼女は言うんだ。


 「元々が、忌み嫌われて、互いに理解もできず、そして、人は特にこちら側を嫌う、そのために世界を分けたと言っても、そのままを受け入れると言うのか?」


 その真剣な眼差しに、そしてどこか呆れを感じさせる黒い神様の言い分に、僕は今まで見て来た事、知った事を考えるんだよ。


 ほら、土岐なんてリリスさんと結婚間近だしさ、それを言うならアモンさんとクソ野郎さんなんて、新婚ラブラブだしさ、そんな彼らが街を歩いていても、北海道の人間は何も言わないし、リリスさんなんて、普通にナンパされてるくらいだしさ、普通に生活している分にはみんな受け入れられていると僕は思う。


 だから、どうして人になりたいって気持ちの方がわからないでいる。


 そんな、答えなんて出せない僕を見て、まるでこの空間に溶けるように黒神様は、微笑み、


 「そうか、わかった」


 と言って、消えてしまう。


 何も答えてないのに、答えがないのが答えみたいな問答になってたのかなあ?


 僕はゆっくりとこの空間に撹拌されながら、その流れに身を任して、少なくとも不安なんて一欠片も無いってことに、今更ながら気がついていたんだ。

 

 

 

 

 

 

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