第136話【異世界を一撃で壊す】
イメージは掴んだ。
だから一撃で行こうと思う。
後は……。
「真壁、もう異世界側に人はいないって!、落ちて来る異世界がら人が消える、無人になる、崩壊が始まるわ」
葉山が叫ぶ。
葉山の手にあるスマホからキリカさんと真々地さんの声が聞こえて来る。なんかキャーキャー言ってるけど、危ないことはしないでね。
キリカさんからダイレクトに連絡が来たみたい。仲いいもんね葉山とキリカさん。
じゃあ、もう何を憂うことはないね。
僕は頷くと、
「離れて、もういいわ、真壁の攻撃が入る!、距離を取って!」
ってともかく、キリカさんと真々地さんの安全を呼びかけてくれる葉山だ。助かるよ。
そして、前を見る。
もう、目の前って言ってもいいくらいの距離。
僕らから空を奪う様にそこに存在する異世界の土塊。
それに対して、僕は一撃を叩き込む。
迷う必要もなければ、特に気を張ることもない。
まるで、自分がなくなって行く感覚。
ああ、全部アキシオンさんに預けてしまった感じ。
続いて、正面から信じられないほどの衝撃波が返って来る。
音といよりも、波動。
そんなものが、落ちかけた異世界の大陸を走る。
すごい一撃。
でも、空に向かって放った一撃は、なんのことはない、いつもの僕の斬撃だった。
いや違うかな?
なんか喧しい、そんな感じ。
いろいろと乗ってる。
足から、腕に抜けて行く力は、きっとこれダンジョンから来てるなあ、ってわかる。
だって、暖かいもの。
足を支えて押し上げる様に力をくれてるのは、北海道だね。そのものだね。
そして、みんなの気持ちなのかな? 随分といろんな感情が集まって来る。みんなバラ
バラだけど、それでも、誰もが幸せになれるように、そんな優しい気持ちが入って来る。
この動きと体を支えるものは、僕が最初から持っていたモノ。
みんなの気持ちや思いや、期待やら、希望やらが統合もできるはずもなく、ワイワイガヤガヤとやって来てる。
わかってるよ、そんなに騒がないで。
大丈夫、みんな聞くよ、でも決して自分を見失わない。
単純なことだからさ。
誰に何を期待されても、願われても僕は僕だから。
北海道民で、高校生で、ダンジョンウォーカーで、真壁と言う人間、で春夏さんが託してくれた彼女が信頼してくれていることが嬉しい僕。
母さんから受け継いだもの以外にもたくさんあるなあ、ってものが、それが余す事なく全て発揮されている。
そして、腕からのフィードバックを感じるのは、アキシオンさんが僕に手応えを教えて
くれてる。いや、自己顕示欲かもしれないけど……。
僕のたったの一撃は、そんな形で奮われた。
受け止めた異世界は、細かく分解を開始する。
異世界を、分解された一片をディアボロスくんの掌で表す距離の立方体に分解されて行く。大きさの対比から行けばもう、顆粒って言ってもいいくらいの大きさ。
でも、これらの大きさと速度には意味があった、ディアボロスくんが処理できないといけないから、いろいろと調整はしている。
そして細かく分解された土塊の落下は完全に制御されて、ゆっくりと、まるで冬にはまだ早い時期に降る、雪の様にふわふわと落ちて来る。
「ああ、いいです、これならいけます」
本当なら土砂となって、札幌に撒き散らかられる全ては、今、ディアボロスくんによって、この北海道の地に混ぜられ始めた。
落ちて来る、土も、石もいわも、途中で消えてなくなって、薄く光をともなって北海道の大地に吸収されて行く。
これで全部終わるなあ、って思うけど、これだけの異世界の人たちを受け入れる北海道の行政はちょっと大変かな、って心配はするものの、多分、大丈夫だよね。って割と楽観的に考えてる。
だって、ほら、ここ北海道だし、来るもの拒まず去る者には、お別れ会を開いてしまう土地柄だからね。
方々から来た、たくさんの人が集まってこの地の民になった様な土地だから。
異世界の人くらいはきっと簡単に受け入れて、また新しい何かを生み出して行くんだろうなあ、って、そんな楽しみさえあるよ。
誰も失わないで、だから悲しい思いもしない。
一撃で世界だけを壊したよ。
これでいいんだよね、春夏さん。
僕は約束守ったよ。