第134話【一撃必中の準備よし】
ダンジョンから出ると、今もう何時なの?ってくらい、空は暗かった。
徐々に暗くはなっていったんだとは思うんだけど、今までダンジョンに入って外に出たから、久しぶりに見る空は急に暗くなった感じだ。
でも、夕方とか、日の沈んで行く、そんな暗さじゃないんだよね。
何もかかもがハッキリと見えるんだけど、光そのものが少ないって感じ。
どんよりとした曇りの日よりも輪郭そのものはハッキリしてるけど、まるで皆既日食の様な、そんな感じの暗さだ。
きっと、前よりももっと、落ちかけている異世界の大陸というか島は、札幌の地方に近づいていると言う事だ。
この札幌市が大きな異世界の影に覆われているって事なんだって、思うと、その現実が目の前になって、ちょっと焦る。
「まだ昼なのに夜みたいな感じですね」
って、後ろの方では、ディアボロスくんが、白馬さんと三爪さんに、どこか無邪気に話しかけている。
流石に北海道には白夜とか無いから、こういう光による環境の変化ってのも珍しい。
何より、時折、吹いて来る大きな風が、多分、今出現している異世界の影響なんだと思うけど、まるで上から地面に叩きつけられる様に落ち拭いて来る風の生暖かさが、僕の知らない物だったので、ちょっと驚く。
「ほら、萎縮してないてやりますよ」
って言って来るのは僕の横に立つアキシオンさんの人型。
僕に見えているだけなのかもしれないけど、どう言うわけか、今回は僕の横にいてくれているみたいだ。
これも現実じゃないのかな?
って思ってると、
「真壁、その人は誰だ?」
って白馬さんが聞いて来るから、あ、現実にいるんだな今回。ってことに気が付けるけど、そのアキシオンさんとしての人物としての説明に困ってると、
「真壁の奥さんの一人よ、白馬さんも会った事ある筈よ」
って葉山が言うんだけど、白馬さん、不可思議な顔してる。具体的にいうとアキシオンさを見て、過去に出会った人の知ってる人物のデーターと照らし合わせて、適合はないって顔してる。
「隊長が出会ったお館様に関する人物のデーターに適合する人はいませんが……」
三爪さんが言うんだよね。
この人、まるで白馬さんが出会う人物を全て知ってるみたいな言い方だよ。白馬さんの人間関係を完全に管理されてるみたいな?
いや、笑い事でもないか。三爪さんも、どう転んでもあの多紫の人だから、そして秋の木葉の人だしね、そのくらいわするか……、そう考えたら笑えない。
「そうだな、やっぱり俺は彼女に出会ったことはないな」
って言うから、
葉山は自分の剣を抜いて、白馬に見せて、
「これ、あなたも持っていた、かつてマテリアルブレードのフランベルジュ型、私の双剣型、これの正体が、彼女、アキシオンなの、人格を持つ剣だったの」
って追加で説明する葉山に、ちょっと考えた後、至極納得したった顔しって、白馬さんが、
「そうなのか、そうか」
って言ってから、
「その時は世話になった」
と深々とお辞儀してたから、アキシオンさんの事実を納得して受け入れてくれたんだなあ、って思いつつも、白馬さんの柔軟性の前に、僕の方が驚く。
普通、剣が人でしたって言っても受け入れられるモノじゃないでしょ?
いや、だって剣が人の姿を取ってるって事だから……、そこまで考えて、でもまあ北海道ダンジョンがあるから、その辺は柔軟性は出るのか、しかも僕がやってる事なら尚更なのかな。
まあ、今はそんなことはいいや。
僕はそのまま白馬さん達から視線を空に移した。
前みたよりはちょっとは出てるって感じに異世界の島と言うか大陸の姿に、それでもこちらの地表に近づいて来た迫力に、圧倒されながらも、
「じゃあ、始めるよ」
と言うと、僕の横にいたアキシオンさんと、摂理さんが僕の前に出る。
スッと当たり前の様に僕の左右の前に立つ。
おお、と、なんとなく守られている実感を持ちつつ、そんな彼女達の示し合わせたかの様な動きに驚く。
「タイミングは、オーナーの方で」
とアキシオンさんが言う。うん、わかったよ。