第126話【妻は夫の願いを叶える】
委員長な顔して、クラス代表って感じで、今から職員室に乗り込んで、無茶な企画を担任に一回、相談しようみたいなノリで。
いや、マジで?
僕は、そう思って、自身のこれからの行為に対してかなり疑心暗鬼になりながらも、それでも言ってみたんだ。
「あの、それ、やめてもらえませんか?」
すごい間抜け。
声は普通だけど、こう、どこか今の現状に添わない何を言ってる気分が物凄い。
でも、まあ、そういう事だよね。
そしたらさ、僕の仮想奥さんは考えこむんだよ。
でも、考えて答えを出さないでもさ、僕に、いや僕らの世界に対して、僕らは彼女、摂理とか境界に対して、止めてもらう為の代案というか取引条件なんて持って無くて、これは僕の一方的なお願いになるからさ、次のお願いの仕方、そして手段を考えなきゃって思ってると、僕の仮想奥さんは言うんだよ。
「わかりました」
って。
ほらね、わかっちゃったよ。
だから、ダメだって思ったんだよ。
確かに、人格を持って、擬人化してくれて、話やすくはなったけどさ、そんなに簡単に、やめてくれる訳ないじゃん。
ってそこまで先に思考が進んでから、葉山に腕を引っ張られて、グワんぐわん揺すられて、
「真壁、わかったって、わかったって言ったよ、真壁だと良いんだ」
って言うんだよ。
いやいやいやいやいやいやいや……。
え?
良いの?
そんな簡単で?
びっくりして、
「良いんですか?」
って聞いたら、
「はい」
って二つ返事だった。
僕は驚いて、アキシオンさんを見るんだけど、アキシオンさんは、さもわかり切った結果だと言わんばかりの態度で、三杯目のお茶を美味しそうに飲んでいた。
僕の仮想奥さんは、
「まずは、隔壁を取り除きます、この二つの世界を一つの世界に統合します」
って言うんだよ。
うあ、願ったり叶ったりだけど、良いのかな? こんなに簡単で?
「物理的干渉は、あなたの計画で進めて結構ですよ、こちらが手を出さずともそのやり方で大丈夫です」
って言ってくれた。
ああ、よかった、これで再び、脱線したって思ってた軌道が元に戻った気がする。
後は、ディアボロス君の出番になるな。
って思って、それは良いんだけど、そのことは良いけど、それ以前に、
「対価とかは、僕はお礼に何をすれば良いのさ?」
って尋ねる。
すると、僕の仮想奥さんでは無く、アキシオンさんが答える。
「オーナー、妻が、愛する夫の願いを叶える為に対価なんていちいち請求しませんよ」
って言い出す。
え? 何? どういう事?
未だ、疑問の範囲にいる僕に、
「なんの為に摂理という現象に人格を持たせて、さらにオーナーの妻と言う位置に配置したのか、考えてみてください」
と言ってから。ちょっとイラッとしながらいうから、僕としても何も言い返せない。そうなんだね、って思うしかない。
「対価というなら払うのは私ですね、若干手狭になったというか、この立場でのオーナーの独占が叶わなくなりましたから」
と、さぞつまらなそうにいうんだよね。アキシオンさんに不利益があったってことね。
よくわからないけど、なんかごめん。
って思うけど、特に悪気も無いのは、この時点て、可能不可能でいうなら、僕の計画は可能になったわけで、これで全部丸く治るなあ、って、ここでようやくお茶を飲もうとすつと、もうすっかり冷えていたであろうお茶は、僕の奥さんによってすでに入れ替えられていて、感心して、一口啜ると、ちょっといつものお茶じゃないなあ、って気がついて、そんな顔をしたからだろうか、摂理さんは、
「ごめんなさい、丁度切らしていたみたい」
って、本当にすまなそうにいうから、
「いや、いいよ、そんなの、これはこれで美味しいから」
って言ったら微笑んでくれた。
思わず、そんな大人の女性の微笑みに、微笑み返してしまう僕なんだけどさ。
ほら、葉山、揺すらない、今、お茶を飲んでるんだから、なんとかなるって決まったんだから、ちょっとは一息着かせてよね。