第124話【誰も気が付かない、消失という穏やかな処理】
まあ、僕の将来はともかく、今はこの世界と、あっちの世界の平和のために頑張ろうって思う。もちろん、それは僕の未来がどうでもイイってことじゃ無くて、つまり明日がなきゃ将来も無いってことだから、優先する方は理解しているつもりだ。
で、その事についてアキシオンさんなんだけど、つまりはさ、さっきの気が付きました?って言葉の意味を問いただしたんだ。
「気がついたってことは、何かしてたってことでしょ?」
って聞くと、人化したアキシオンさんは、にっこりと笑ながあら、
「発声による意志の疎通は難しいものですね、まずは理解させる事を前提に置けない分、語彙が重なって、気を使えば使うほど遠ざかっている気がします」
とか言い出すんだよ。
いや、今はそういうのイイから、
「何をしたのかザックリと話してよ」
って言ったら、
「摂理と、それが生み出す境界という現象に自我を持たせて、女子化してた上に、オーナーの擬似奥さんに仕立て上げました」
「どういう事?」
もう一回わかりやすく説明を求めると、
「私と同じですよ、だからそれ以前の例だと、北海道ダンジョンと同じ処置です」
とキッパリ言い切った。
いや、何をするんだよ? 自分ができたからって、北海道ダンジョンもそうだからって、そんなにヒョイヒョイと擬人化して良い訳ないだろ?
って言いたくなったんだけど、でもまあ、摂理って言うこの世界を隔てた境界を人にしたっていんなら、まあ、そうか、ってなるよね。
だって、人だからさ、自ずと方法とかが見えて来るじゃん。
つまりさ、扉の鍵を開けるために、扉に話しかける人っていないから、大抵はその扉の向こうで鍵をかけてる人に話すか、そこを管理してる人にお願いすることになるからさ、この場合は、扉そのものに意識を持たせてるわけだから、扉に話すのが正しい方法になるよね。
僕は、アキシオンさんからの情報を得て、一回咳払いして、自分の仮想奥さんに向き合った。
何かを言いかけて、言葉を選んでいると、先に葉山が、
「あの、今、せっかく、向こうの世界がこちらに出てきてるから、みんな助けたいから邪魔しないで欲しいんですけど」
って、普通に言う。もっと違った言い方もあったかもしれないけど、率直に僕の思う言葉を言ったから、こんな言い方になる。
すると、僕の仮想奥さんは、
「できません」
ってちょっと怒って言った。眉間に皺がよってる。
あ、コレ最大限に怒ってる奴だ、僕がかなり無茶ぶりしてるってことだ。
「どうして?」
って再び葉山が尋ねると、
「この破綻が、全ての世界の破綻に繋がるからです」
と言う。
つまり、あれかな、一つルールを破ってしまうとその綻びから次々とルールが破られるって事を言いたいのかな? わかるっって言えばわかる。でも今はそんなことw言ってられない。
「そうすでに、世界は混ざり初めてるわ、それはイイの? すでに、あなたの言うルールなんて破綻し始めていると思うけど……」
おお、さすが葉山だ、諦めずに責め続ける。クラスで決めたルールとか守らせないと、って言わば、世界規模でその決まりを守ろうとする僕の仮想奥さんと、クラスの中の均衡を保とうとしている委員長の、規模は違うけど、そんな委員長対決だよ。
すると、僕の仮想奥さんは言うんだ。
「想定の範囲内です、誤差の修正は可能です」
「誤差の修正って何よ?」
「互いに干渉してしまった、個の廃棄、もしくは時間変動による後退ですね」
と言った。
つまり、今、この世界で起こっている事をなかったことにする、と言うか、その変に携っってる人達を消してしまうと言う事?