第122話【アキシオン美人型の登場】
すると、すぐさま反応がある。
リビングボードの横にあった僕にとっても見覚えの無いチェストが、ぐにゃりと歪んで、人の形になる。
「きゃ!」
って短い悲鳴を上げる葉山に、身構える蒼さん。もちろん葉山の名誉のために説明しておくと、葉山だって戦闘への体勢はとってる。でもその上での悲鳴だったんだ。
僕も一瞬腰を浮かすくらいはびっくりしたからね、そのくらいキショイ変形だったからね。まだちょっとドキドキしてるよ。
もちろん、あのチェストのまま手足や顔が生えて来るよりは気を使ってもらった気がするけど、気のせいじゃ無いよね。アキシオンさんは、ほら、空気読む人ってか剣だから。
そして、その人型の姿は僕の知ってる形になった。
彼女は言う。
「オーナー、いつお気づきに?」
僕の前まで歩いてきて、僕の仮想奥さんの横に座って、そう言うんだよ。それと同時
に、僕の仮想奥さんは席を立ってどこかえ行ってしまう。
まるでアキシオン人間型(美人)と入れ違う様に……。
コレじゃあ、僕らはまるで、アキシオンさんと対峙しているみたいにる、と言うか、彼女、僕の仮想奥さんはアキシオンさんの下、だから配下みたいな感じで動いていたって事なのかな? って思うから一瞬の緊張の後、仮想奥さんが戻って来て、アキシオンさんの前にお茶を出した。
気が利くなあ、って思うって、このさりげない気配に所作なんて、もしかしたら万人の理想なのかもしれない。
い、いや、今はそっちじゃないや、今、アキシオンさん、なんて?
それに薫子さんは?
なんか静かになったなあ、一人満足気にしている人、いなくなったなあ、て思ってると、
「ここに存在で来る人格は4こが限界です、賢王様は満足している様なので、入れ替わりで、現実の世界へ帰ってもらいました」
と、シレっと言うアキシオンさん。まあ薫子さんが無事ならそれでいいんだけどね。同時に、なんだアキシオンさんは出入り自由なんだなって思う。
つまり僕らも行くも帰るもできる、だからこちらが操作可能な場所って事でちょっと安心した。
って僕は正面に座るアキシオンさんを見ると、その表情を曇らせて、僕を見つめるんだよ、すごい美人ってわけでもないけど、アキシオンさんに言わせると、この姿って、ほぼほぼ全部僕の理想らしいんだ。体型、顔、声に年齢や髪型に至るまで、僕がいいな、ってのをバランスよく配合して組み立てた物らしいんだ。
だから、僕が一目惚れするって言うのを狙ったらしんだけど、こうして好みの集合体になってしまうと、それって、もう僕の好みではなくて、ただの綺麗なお姉さんになってしまうんだよね。
好みとか、見た目の印象とか、そう言うのって相対的な問題で、その場所にあるから、いいな、って思えるものであって、そこを切り取ってしまうと、それはただのパーツになってしまって、全部集めたからと言ってそれが僕の理想になるとは限らないんだって。
ちなみに、以前の春夏さんの場合は、その好きなパーツってのは一つもなくて、寧ろ、葉山や真希さんとかにその要素は多く含まれているらしいんだ。
そんな分析をしながら、アキシオンさんは、「人って複雑ですね」ってこぼしてたよ。
もちろん、一目惚れってのもないけど、それでもその姿がアキシオンさんを名乗るのだから、それなりに親みはあるよ。安心もする。
ホッとする僕なんだけど、いや、違う、ホッとする前にアキシオンさんの言葉だよ、「いつから気がついていました」って言う言葉だよ。
僕は、そのままずっとアキシオンさんを凝視していたと思う。
「真壁、この人がアキシオンさんの人型なの?」
って葉山につつかれ聞かれる。
あ、そうか葉山には話してはあるけど、見るのは初めてだったね。って思うから、
「うん、この人が、人の姿を取って僕に話かけて来る時のアキシオンさん」
って言ったら、
「お世話になってます」
って葉山はアキシオンさんにペコリと頭を下げる。大人な対応だな葉山、つられる様、蒼さんもお辞儀してた。
「いえ、こちらの姿では初めまして、私の分体ホルダーである葉山様」
と綺麗なお辞儀をするアキシオンさん。