第120話【心なんて読めなくて当たり前、障壁があって当たり前】
おじゃまします……、って言いかけて、ここ僕の家だって事を思い出して、僕らはリビングのいつもの場所に座った。
というか、僕の家に見立てて作られて世界、かな、かなり手狭な。
家の中の物を見てもいつもの僕の家の様子で違っているのは僕ら以外に他の存在がないって事くらい。
若干家具の配置とか変わってるしね、あんなところにローチェストなんてなかったなあ。うん、ちょっと模しているには若干の違和感、雑までは行かないけど、そんな風にひっかっかる程度。
だから母さんがいない。
「薫子さんはこの世界では自分が母さんの娘ってどうしてわかったのさ?」
おそらくこの様子なら、母さんと薫子さんが会ってないのはわかるからさ、ちょっと気になったので聞いてみた。
「何を言っている弟の真壁秋」
って言うんだよね、いいけど、弟をフルネームで呼ぶなよ、とはなる。でもいつもの薫子さんだから、特に何を思う事もないけど。
そんな僕の質問に、薫子さんは、自慢気に言うんだ。
「そんな事、自分が一番良く知ってるだろう?」
って言い出す。なんだ、結局は思い込みかよ、ってなる、薫子さんそう言うの強い人だからなあ、って思いつつも、僕らにお茶を出してくれる僕の奥さんを見て、
そういえば、僕も最初から彼女を自分の妻だって事を認識していたような気がするから、ちょっとガン見してしまう。
「そう、真壁はそんな人がタイプなんだね」
って、底冷えするくらい低いところから言われる。どっから声出してるんだよ、葉山。
そう言われてみると、そうかもしれないなあ、とも思うんだよね、だって僕彼女に対して特に嫌な気持ちも抱いてないしさ、もちろん春夏さんとはにても似つかないから、自分の好みとは違うと思うけど、強いて言うなら、嫌いなところが無いって言う選択肢かな、とも思う。
「否定しなさいよ!」
って言われるけど、何をだよ、それを言うなら、さっきの葉山の旦那だって、どこにも僕要素なんて皆無だったからさ、今、思い出してみるとあれが葉山の理想なのかなあ、って思うと、どこか蒼さんの仮想ご主人と似通っている所もあるから、やっぱり、女子の理想って長身イケメンってのがあたり前なのかなって思う。
「あんなの全然理想じゃ無い」
って、置いてきた仮想ご主人のことを言ってるである葉山に蒼さんもうなづいていた。
コレって、どう言うことだろう?
もしかして、世間一般の女子で言う所の平均化された理想なのかなあ、って思う、顔は全く血が言っている仮想ご主人ズだったけど、雰囲気とかってのは結構似てた気が薄るから。
そんな風に考え込む僕は、未だ玄関の前に立ち尽くしているであろう、二人のご主人に対して、特に何を思うこともなく、ただ、何も言わないとあのままずっとい続けるのだろうなあ、とは思いつつ自分の今の窮地というかこんな立場を優先した。
つまり、理想は理想、現実は現実って事で、誰に取っても夢想する形よりも、自分の為にいる現実の形を優先しているって事なんだな、女子って現実的だもんね、男子ほど、自分の理想を追うことはないもんね。永遠のリアリスト的な?
そんな事を考えていると、
「何よ……」
って葉山が言うから、
「だから、僕の思考を読まないでよ」
って一応の、ルーチン的なクレームを入れると、
「違うのよ、ここに来てから真壁の思考を読めないのよ」
って葉山が不安気にいうんだよね。
「え? そうなの?」
って思わず尋ねてしまうと、
「何喜んでるのよ、真壁の思考に入っていけないのって、不安なんだよ、心許ないのよ」
って真摯に訴えかけて来るから、いや、それが普通だから、当たり前の事だから、って言いかけて、言ったら言ったで何か言い返されるのは目に見えてるんだ、
すると、葉山は真摯に訴える。
「真壁と心を繋げられるのよ、体は未だだけど、それって凄い関係性なんだよ、揺るぎないんだよ」
「そうなの?」
どちらかと言うと、僕が葉山の心に入れないから一方的って感じもしないでもないけど、葉山的な事情的にはそうなんだろう……
あれ? 心じゃない方はなんて言った?
もちろんここで聞ける内容でもないので、心の底にしまうよ、大きんなコレ、ちょっとかさばって、あちこちにぶつかってしまうけど、今はいいや。