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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆終章 異世界落下編◆
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第114話【誰かが差し出す終着点】

 僕がその部屋、だから、『厭世の奈落』に第一歩を踏み入れた時に、改めて気がついたみたいに、葉山が「あ!」って短い叫びというか悲鳴と言うか、そんな呟きみたいな言葉を漏らしていた。


 もう入っちゃったもん。


 言いたい事があれば後できくよ。


 と言うわけで、ともかく中には入れたわけで、でもちょっと思い出すんだけど、この『厭世の奈落』って場所、扉なんてあったっけ? って曖昧に思い出すんだけど、以前来た時には、その後の戦闘とかが激しすぎて、ちょっと思い出せないけど、僕の手に、ここの扉を開いたって記憶が無い気がするんだよ。


 まあ、いいや、今はそんな事。


 ともかく、今はこの場所でしないといけない事がある筈なんだよ。


 それは一体って、思って、僕の思考は一旦停止する。


 いつもの、ダンジョン、洞窟、そんなイメージの無い、ここ『厭世の奈落』、どちらかと言うと、生き物の臓物に近い。


 よく見ると動いているし、今、こうして立っている所以外は、流動している。まるで、胃とか腸がさ、食物を消化しながら、奥へ奥へと送り込もうとしている、そんな緩慢にしてたった一つの目的で、この広い空間をゆっくり確実に動かしているそんなイメージ。


 僕はその中に入って、思考が止まるんだよ。


 どうして、なぜにって言われてると、簡単な事だよ。


 僕の先、この『厭世の奈落』の真ん中に立つ人影があるんだ。


 その人物は、まるで僕達、いや、僕を待っていた様に、静かにたたずみ、そして僕の方をジッと見つめているのがわかる。


 結構距離があるんだけどね、そうだね、意識がさ、間違いなくこちらをむいているんだ。


 僕の横に来た、葉山が呟くんだよ。


 「うそ……」


 蒼さんは、言葉も出ないでいるみたい。


 「どう言う事だ? もうその姿の彼女は現実にいるんだろ?」


 って薫子さんは僕に問うてくるんだけど、彼女に対して僕には答えられる正解なんて持ってない。


 でも、いつもみたいなに、僕だけが見ているって訳じゃない。


 みんな見ている。


 だから、ここにいる彼女は現実の物なのだろう。


 それが本物か否か、その問題の前に、存在としては間違いなく、本物なんだって、そう思った。


 そして、僕はここで自覚するんだ。


 今のいままでまとわり付いていた、いつもの春夏さんがいなくなってることを。


 この場所では色々な事が起こるなあ、妹の時もしかり、シンメトリーさんの時もしかし、同時に戦っていたあの時の葉山もしかり。


 「真壁!!!」


 葉山が叫ぶ。


 その時、僕は気がつくんだ。


 僕は彼女に近づいていたんだよ。と言うか最初に入って、彼女を見つけてから歩を止めていた。


 いや、だって、春夏さんだもん。


 本物とか偽物とか、そういう問題じゃないんだ。


 行かないと、ってそれだけ。それだけしかないんだ。


 ゆっくりと僕が近づくそんな姿を見つめて微笑む春夏さん。


 僕は、彼女と、彼女とのいつもの距離まで近づいていた。


 いつも一緒だった時の距離、それは友達距離でなくて、まして恋人な距離でもなくて、中間よりも遠くなく、近寄りがたいそんな距離だ。


 そこで、僕は、言葉を出そうとする、その前に、


 「秋くん」


 って春夏さんが言うんだよ。普通に言うんだ。 


 その声に僕は瞬時に反応する。


 「あ、偽物だ」


 って。


 そのまま後ろに飛び退く、と同時入れ替わる様に葉山と蒼さんが入る。


 更に逃げる僕前に、まるで守かの様に仁王立ちする様に立つ薫子さん。そして左右には角田さんと桃井くんが付く。


 完全に何があっても僕を守り抜く体制の様だ。


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