第110話【作戦なんてめんどくさいよ】
じゃあ、ともかく行くか、って扉を開こうとするんだけど、
「待って」
ってそこで、葉山のストップがかかる。
ひとまず扉にかけた僕の手を掴む葉山の手を見てから葉山を見ると、
「作戦を組み立てなさい」
って言われる。普通に委員長な顔して言われる。とういか叱られる。
「いいや、いらないでしょ?」
って言うんだけど、その言葉になんだろう、葉山の目からと言うか雰囲気全体にすごく怒ってる雰囲気を感じる。
「前も言ったわよね、どんな敵がいて、どんな攻撃をして来るのか? きっと中に敵が待機しているなら、もう私達の存在に気がついてる、この場合、どう行動すればいいのか、考えないと、全部後手に回るわよ」
って言われる。
すごく怒ってる顔して言われる。
仕方ないなあ、って、僕は僕の中に回答を持ってないので、他の人はどうかな? って助言を求めようとするんだけど、みんな視線を逸らすなあ。微笑んでいるのは薫子さんくらいのもので、一応、
「薫子さんにいい考えってある? ギルドではどうしてたの?」
って聞いてみるけど、
「私は何も考えないな、そう言うのはみんな雪華がやってくれるからな、特に大きな団体を率いる時はそうだぞ」
もう指揮官ですらなかった。
期待して損した。
でも、そんな薫子さんの割には、今みたいに、要所要所で自分の考えで動いては結果出してるからなあ、感とセンスで生きてる僕と同じ種類の人だったよ。
で、きっとこのメンツの中のインテリジェンスの塊でもある大魔法番長なんだけど、わざとらしく視線を逸らしている感じなので、ここは強引に、
「角田さん、何かいい案とか無いの?」
って聞いたら、
「秋さんが考えないとダメですよ、ほら、葉山のお嬢さんが待ってます、一生懸命考えましょう」
って言い出す。ダメだな、こう言う時の力関係においては、角田さんは全く期待できない事を悟ってしまった。本当にガッカリだよ、ちょっと真剣に至極当然に怒ってる女子に向かって、何も言えなくなるなんて、それじゃあ僕と一緒だよ。本当に情けないよ。
と思いつつ、なんだ仲間じゃん、ってある種の同調的な感覚もあるから、こんな時だけどうれしかったりもする。
本当にどうしようって思って、作戦なんて思いつかない僕と作戦を考えさせようとする葉山の間に割って入るのは、
「お館様は、この様に頭を使って攻撃作戦をとるのが苦手なのだ」
って、そう庇ってくれるのは蒼さんだった。
ほら、そうなんだよ、人には向き不向きがあるんだよ。
って一瞬思うのだけれども、ギロリと葉山に睨まれる。
うわ! まだ何も言ってないじゃん、思っただけじゃん、ってどうにか必死に葉山に言おうとするんだけど、なんで僕が怒られているんだろう? って思いつつも、僕の為って形で真剣に怒ってる葉山だからさ、僕が何も言い返せる訳もないくて、そんな僕に、
「だから、できない事をさせようとするな! お前だって、困ってるお館様をみるのは辛いはずだろ?」
って、再び僕を庇うんだ。本当にいい人だよね、蒼さんって。
「甘やかさないで、真壁がダメになるでしょ?」
と、蒼さんに向かってキツく言う葉山に対して、
「人には向き不向きがある、それを理解するのも、受け入れるのも私の役目だ、自分の思いに届く様に人にましてやお館様を強制するのはいいことではない」
と言ってくれるんだ。
そう、そうだよ、蒼さんの言う通りだよって思う。本当に思う。
すると、葉山はため息を一つついて、
「本当に、蒼さんって、真壁を甘やかそうとするよね」
って言う。
「当たり前だ、お館様なのだからな、その裁量を認め傅くことになんの不満もない」
って言い返す。