第108話【誰も使えないなんて言ってないじゃん】
だって、あれオノなのに、しっかり握る事を前提として造られてない欠陥品だよ?
「一応、あの武器の適正な扱い方は、今日花さんにレクチャー受けてるのよ、確かに私のバルカ意外は、槍といい戦斧といい、パッとしない神器だけど、本当に使いこなせたらそれなりの力を発揮するのよ」
って葉山が教えてくれるんだけど、
「ほら、ね、秋さん、使えない武器じゃなかったでしょ? そりゃあアモンからもかつては、『皿回し』とか言われましたけど、あのクソ長い金魚のフンみたいな槍よりはよっぽどマシってモンですよ」
なんだろう、いつも余裕な角田さんだけどさ、自分の王に与えてる武器に関して全くゆとりを感じないのはどうしてなんだろう?
普通に考えるなら自覚があるからってとしか思えない。いや、それもさ、僕にとってはどうでも良いんだけどさ。実際は使える武器なら良いじゃん。って思ってるのに、「いいえ、よくないです、この際ですから誤解は解いておかないと」って言い出す。「わかったから」って言っても説明を続けるんだよね。ほら、角田さんの指名する王が倒れてるよ、って言おうとするんだけど、なかなかどうしてやめてくれない。
第一だよ、必死に言って来る角田さんだけどさ、使い方を教えたのってうちの母さんじゃん、角田さんから貰ったってだけなら、この丸っこいオノ、使用目的じゃなくて、僕だったら真っ先に棚に飾っておしまいだね。
「ほら! 今もまだ使えないって思ってますよね? 今、そう言う顔しましたよね?」
良いじゃん、もうどうで僕の心だって読んでるんだから、もうそれで良いじゃん、ハイハイ、使えるよ、凄いなあ。
「もう、うるさい! 薫子が倒れてるでしょ! 静かにして!」
「すまない、私はここまでの様だ……」
とかシオらしく言う薫子さんに、それを抱き抱える様に葉山は、
「ばかな事言わないで、一緒に行こうよ! 薫子しっかりして!」
「秋さん、この際だから言わせてもらいますけど、秋さんは自分の剣を基準に考えすぎてるんです」
「フッ、近くでゼクト様の声が聞こえるな」
とか言い出す薫子さんに、
「ちょっと雑音遮断しますね」
って桃井くんか魔法というか祝福を授けようとするんだけど、ノイズキャンセラーみたいな効果があるのかな? でもそうだね、怪我というか疲労困憊な感じだから静かにしてあげた方がいいね。なんて思ってると、
「ダメよ、秋様と、葉山様の声は聴ける様にしてあげないと」
ってサーヤさんが助言をすると、桃井くんも「ああ!」って顔して改めて、祝福を授けてた。
僕と葉山の声ってことは、結局遮断したのは、神様ゼクト様角田さんの声だけだから、角田さんを黙らせた方が早かったんじゃないかな? と思うんだけど、その角田さん、
「おい、桃井、ダメだ、俺の声を消すな!」
ってすぐに気がついて怒ってる。
「だって、角田様煩いし」
って桃井くんに言われるんだけど、
「いいんだよ、俺の声は賢王にとって、『神言』に当たるんだ、普通の回復とは違う奇跡をもたらすんだぞ」
とか言い出す。
「本当ですか? 特に彼女を気遣う言葉でもなかったので、角田様の声は不要かと思いましたよ」
「そんな訳あるか! 王は俺の言質によって守られ、強大となり、民を導くんだよ、秋さんもそうだったろ?」
とか言う角田さんに対して、冷静な桃井くんは、
「でも、言葉は賢王に向かっていなかった感じでしたよ、自分の神器の自慢しかしてない感じでした」
的確に言われて一瞬だけどぐうの音も出ないって顔してたけど、そこは神様だから頑張って、
「いんだよ、言葉なんてどれでも、料理のレシピだって、その者に届けば、俺から祝福になるんだ」
って言い切ってから、そう言えば角田さんって、薫子さんにとっての神様である事を思い出した。それでもそんなこともあるのかなあって思うけど、
「そうなの?」
って聞いてしまうと、
「ええ、秋様は、ずっと守られてましたよ、常時回復状態でもありましたし、だから僕と角田様が特に秋様への魔法かける回数は極端に少なかったですよ」
全く自覚なんてないけど、僕自身が誰に守られていたのかわかるよ。そっか、そうだったんだ。