第107話【輝く白き梟は、扉の前で翼を開く】
敵の本気度が如実に見えて来ているんだけど、角田さんに言わせると、パズズが、このダンジョンの、所謂、普通に出るタイプのモンスターとしては最大だって言ってるから、そろそろ打ち止めかなあ、なんた淡い期待をしている僕なんだけど、『厭世の奈落』へと続く長い回廊は、も少しで終点の扉になる。
普通、通路に魔物は出ないんだけどね、その辺のセオリーってのは、今回ガン無視されてる。もちろん、これってダンジョンの意思では無いし、ここにある仕組みを利用しているだけの存在の介入なので、その辺は臨機応変に対応していってるから問題はないんだけど、ここに来て、通路を歩く僕らはちょっとした驚きというか発見があった。
倒されている魔物数が、増えてるの。
僕らが倒した数以上の魔物が床に、壁に張り付く様に転がってる。
デイモンタイプの魔物の遺体というか残骸が増えて行くんだけど、僕らが倒した意外にも結構な数がある。
この先で誰がか戦ってたんだ、ってのは直ぐにわかるけど、一体誰だろ? って思ってるうちに。
つまり、目的地に近いって事になる。
その扉も見えたこようかって時にだよ、僕らの前に、『厭世の奈落』を背に意外な人物が現れたんだ。
ってか、そういえば今回の僕らのメンバーにはいなかったなあ、って思って、でもまあ、ギルドの方もあったからいないのも当たり前かなあ、って思ってたんだけど、その人物、薫子さんが、僕の方を見て、
「やあ、遅かったな」
って言う。
そして、
「大丈夫だ、表は守れた、だから扉は開くぞ」
って言うんだけど、よく見るとボロボロな感じで、驚いて駆け寄る前に、すでに葉山が薫子さんの前にいて、
「何やってるのよ!」
って、今にも倒れそうになる薫子さんを支えていた。
「大丈夫だ、大きな怪我はない」
と言いつつも、フラフラな薫子さんなんだけど、そんな薫子さんの姿と、そしてこの場所に転がるデイモン達の死体の数を見ると、ここで何が起こっていたのかわかる。
「一人で?」
って僕が聞くと、
「ああ、一応、ギルドは、私と雪華に任されていたからな、私が駆けつけたと言うわけさ、シリカさんのマップでおかしな動きをしていた奴らがいたのだ、ダンジョンウォーカーでもなく、異世界の人でもなく、扉を壊そうとしていた奴らがいたからな、これは堅守せねばと思ったのだ」
そう言い切ると、膝から力が抜けてしまう様にガクんって感じで倒れそうになる薫子さんだけど、そこはしっかりと葉山が支える。
「薫子!」
「いや、私は大丈夫だ、ダンジョンの加護があったからな、そして、ここで戦って扉の裏表どちらかが無事なら、中に入れる事を教えてくれた」
そう言ってから、僕の方を見て、
「そして、お前が来ることもな」
って言うんだ。
薫子さんは、葉山にその場に寝かせられる様にそっと置かれるんだけど、僕は良くもこれだけの相手を倒したなあ、ってそっちに感心してた。
ほら、薫子さんって、僕の勝手なイメージかもだけど、一人では個の戦いに向いた人なんだって思ってた。
特に、蒼さんの家に行った時に、もらって来た剣、『白梟』だったっけ? 本当の名前長いから今はそんな言い方してるけど、その白い大剣をもらってから尚、そんなイメージがついてた。
少なくとも軽いとはいえ、あの大剣を使っての戦いとなると1対多数は辛いかもって勝手に決めつけていたけど、そんな事もないなあ、って感心してたら、
「まあ、俺が譲渡した『破斧グラウコーピス』との連携なら、可能ですよ」
ってどこか、いや、完全なドヤ顔で角田さんに言われる。
こちらも僕のイメージで、完全に使えない神器としての武器ってイメージ持ってたからびっくりしてしまう、あれ使ったら余計にピンチじゃん。