第106話【アキシオンさんと僕の相互不理解】
僕の方にくるのは前衛組の人たちで、『大地を抉る呪撃』とかいう、キラキラしてる棍棒というかメイスみたいな武器を振り下ろしで、床に穴を開けてる。
で、そんな振動やら衝撃なんてものともしてないでいる、前衛組の二人なんだけどさ、
「真壁! 手伝う?」
って葉山に聞かれるけど、いや、多分大丈夫って思うんだけど、その上で、アキシオンさんと、桃井くん夫婦に気を遣って綺麗に絶命させないといけないのは、ちょっと無茶かなあ、とは思うけど、よりにもよってこんな時にだけど、本気な人ってか悪魔来ちゃったなあ。
そして、その巨大な悪魔を取り囲む闇の中から、小さい悪魔、と言っても多分人間大だと思うけど、ガーゴイルなんかよりも強力なタイプに見える悪魔が滴る様に出て来る。
そして出て来た瞬間に、光線にも近い放射熱見たいな攻撃で、次々と焼かれて落ちる。
見れば、角田さんの請負頭が出て、そこからの照射みたい。
そして、蒼さんと葉山が左右から襲いかかる。
まるで相手の大きさなんて問題にならない感じで、葉山は首、蒼さんはその上にある顔に目がけて剣を振り下ろすんだけど、パズズさん、自分から発生させている闇に沈み込んで、こちらからは攻撃を通せない状態で、その暗闇の中から、おそらくブレスと思われる収束した、こちらもビームみたいな炎を吐いてくる。
かなり高温そうで、葉山も蒼さんも割と距離を取り始める。
「ほら、アキシオンさん、そろそろ機嫌直して、行かない? みんなだけに頑張らせてるのって気が引けるでしょ?」
って言ったら、僕、構えても無い剣、だからアキシオンさんね。そこから凄い斬撃な感じの一撃が飛び出す。本当にびっくりした。なんの予備動作もなくて、急に来たから本当に驚いた。
何より、今、まさにパズズさんに襲い掛かろうとしている葉山や蒼さんの行動なんてまるで無視するかの様な一撃なんで、
「びっくりするじゃ無い!」
って葉山に怒られるけど、僕じゃ無いから、アキシオンさんだから。
そんなアキシオンさんと、ひとまず、今の攻撃に巻き込まれなかった葉山と蒼さんの無事を確認してから、パズズさんの暗闇そのものを含んだ、パズズさん本体を一刀両断にしてり事実を知った。
「もう! 秋様、綺麗にって言ったじゃ無いですか!」
って桃井くんに言われるんだけど、まあそうね、体幹を支える背骨も頭も真っ二つだからね。これは使えないよね。
って、ごめんね、って気持ちにはなるけど、僕じゃ無いから、アキシオンさんだから。
ってここでその事を口に出したら、またアキシオンさんが拗ねてしまいそうで、
「いやあ、なんか、ごめん」
って謝ってしまう僕がいるよ。
その僕に対して、蒼さんが、
「流石、お館様です、よくあの重く硬い『闇』を斬れましたね」
とか言われる。
まあ、僕じゃ無いんだけどね、アキシオンさんなんだけどね。だって僕、剣すら振ってはいないから、本当に持ってるってだけの状態で、僕の斬撃を再現したみたいな感っじで、なんだろう、もう僕いらないじゃん、って気持ちになる。
そしたらさ、
「それです! オーナー、その気持ちですよ」
ってアキシオンさんがいうから、急に僕の頭に大声を出して来ていうから、びっくりしつつも、どの気持ちだろう? って思い錯綜する僕なんだけどさ、それでも、
「あ、そっか、そうなんだね」
って適当に返事を合わせておいたら、
「わかっていただけたらもう良いです、先を急ぎましょう、この先が本丸です」
ってさっきまでのアキシオンさんの声とは打って変わって、なんか急に生き生きして来て、まあ、よかったよ。機嫌が直ってさ。
今度はネクロマンサー夫婦が、真っ二つになってるパズズさんを見て、
「秋様、これならいけます、凄い綺麗な切り口です、みんなで、くっつけてしまいましょう」
って言い出すから、こっちもよかったね、ほっとする僕だったよ。
ここに来ていうことでも無いけどさ、きっと僕って、敵より味方の方が大変かな? って思っちゃったよ。
だって、敵は斬れば良いだけでしょ? 味方の人みたいに文句つけたり注文したりしないもの。ずっと手間いらずだよ。一回で済むもん。
でもまあ、アキシオンさんの機嫌が治って一安心な僕だったよ。