第105話【アキシオンさんの主張】
なんだ、手裏剣じゃないんだ、って思う僕だけど、こっちの方がコスト的に安いし、致命傷を与えられるんだって。
でもなあ、手裏剣はロマンだよね。
まあ、それより今はアキシオンさんだよ。
って、もう一回、
「どうしたのアキシオンさん?」
って尋ねると、
「ハア……」
さっきよりももっと大きなため息を吐く。
だからもう一回、
「言いたい事あったら聞くよ、何をそんなにガッカリしてるのさ?」
って尋ねると、
「まさか、私とオーナーの関係性を、オーナー側から断ち切られると思いもしなかったなあ、と、なんでこんな事を気がついていなかったのかなあと」
ってここでようやく話をしてくれた。
「仕方ないよ、此花さん達だからね、こっちの事も研究し尽くしていたんだよ」
って、まあ、慰めでもないけど、事実をそう言うと、
「私とオーナーの関係は、おいそれと他人が外部から断ち切っていいものではないんです!」
とか言い出す。そして、
「私は努力しましたよ、断ち切られ無い様に、オーナーはどうです? しましたか?」
うん、めんどくさい。
放っておけばよかった、今、そう思った。
「そして、断ち切られてからは、何度も何度もオーナーに繋がれる様に努力もしました、オーナーはどうなんですか?」
いや、ほら、僕も僕で忙しかったからね。今も忙しいけど、ゾンビのお陰でちょっと余裕できたけど、だから話しかけたんだけど。
ちなみに僕の意識はダダ漏れでアキシオンさんに余す事なく隠すこともできずに伝わってる筈だから、特に言い訳もしないんだけど、黙ってたら、
「あーあ、そうですか、私は必要じゃないんですね、いらないんですね、どっか行っちゃえって、そう思ってるんですね」
って言い出すから、
「いや、アキシオンさんにいなくなられると困るけど」
正直、何言ってるんだよ、って感じで、普通のトーンで言ってしまうと、
「剣ですよね、剣」
っていうから、
「全体だよ、全部だよ、全部含めてアキシオンさんじゃない」
「本当ですか?」
「ホント、ホント、いつも頼りっぱなしじゃん、急にどっか行っちゃうなんて怖いからやめて!」
なんて思ってると、なんか凄いの来た。ゴオッって頭上から何か打ち下ろされて来た。
まあ、普通に受けるけどね、って思って受けたんだけどさ、それって、もう棍棒とかメイスってレベルじゃなくて、巨大な岩の塊、で、所々、光を反射してるから、輝石とか宝石の類が混ざってる凶悪な代物だったよ。
多分、大きな人型の体なんだけど、自身の発する闇に紛れて、その一部の顔と、今、攻撃した腕くらいしか見えない、こんなに近くにいるのにね。
そしてそれを振るう相手は僕の遥か頭上から僕を見下ろす巨大なデーモンだった。
後ろの方から、
「パズズです、秋様、今の攻撃『大地を抉る呪撃』です、よく受けとめましたね」
って感心する様にいうと、
「綺麗に殺傷してもらえると、もれなくゾンビにできますので助かります」
って桃井くんの隣のサーヤさんに言われる。先に念を押される形になる。
「いや、でも、僕のアキシオンさん、なんか本調子じゃないみたいだからなあ」
って呟くも、後方にあるサーヤさんはその意思を汲んではくれないみたいで、鉄皮面の様な笑顔を崩さないでいる。
隣の桃井くんも同じ笑顔だった。
なんか似た物夫婦だよね。いや似てるから夫婦なのか、それとも夫婦だから似てしまうのか、卵が先か鶏が先かみたいな話になって来てる。けど、いきなり現れたパズズさんは、その攻撃の手を緩める気配は微塵もなくて、ドカン、ドカンって攻撃して来る。
どもうも魔法の効きが悪いみたいで、角田さんはスルーするが如く、後ろに下がる。