第104話【アキシオンさんのため息】
敵の数というか圧力が濃い。
数もそうなんだけど、完全にこちらを包み込んで、すり潰そうって魂胆が見え見えだ。
つまり、絶対にこの奥にはいかせたくないってはっきりとした意識が丸出しになってる。
最初の敵襲の時、致命傷を与えて、後方に流した敵が、瞬く間に桃井くんによってゾンビに変えられて、僕と葉山、蒼さんの守る前線へと返されて行く。
魔物の死体兵は僕らの前に出て前線をさらに前へと押し進める。
それでも、倒すためへの段取りや手数が多くなったものの、生きてる魔物の方が強いみたいで、ゾンビを倒す事を覚えた敵たちは、手こずりながらも、コツを覚えたのか、前に出ようとする僕たちと、押し返そうとする魔物達の力の均衡は崩れ初めて、だんだんと押され初めてる。
今戦ってるのって、多分、デイモンだって、角田さんが言ってた。
でも中には背中の羽の白いのもいるから、きっと天使とかも混ざってるかもだね。
まるで、大通公園付近にいるカラスの群れにカモメが混ざってるみたいな不思議な感じだ。
いるんだよ、札幌市街、カモメとか、中島公園の菖蒲池とか我もの顔で泳いでる。
それはともかく、どうやら僕らを追い返そうとしている敵は、天使も悪魔も、その性質や性格を考えないで、能力でこちらに当てて来ているみたいな感じだ。
つまり、味噌もカレー粉も一緒って事。
あ、、誰もが知ってる、もっと下品になる例えな言い方だけど、北海道ではこんな言い方になるんだよ。
ほら、味噌ラーメンとスープカレーとか有名だから、そんな形に整えられてるのかもしれない。
って、天使も悪魔も敵に回すと厄介だよ。
悪魔は、毒を、天使は麻痺攻撃とか仕掛けて来るから。
でもまあ、天使の麻痺攻撃って、信心深い人にしかその効果を示さないっていうから、ただでさえ、僕らは無神論者が多いしさ、特に北海道ならそれって尚更で、信仰心が乏しい人が多いので、ダンジョンのモンスターとして現れた場合、悪魔系の敵の方が厄介な相手ってイメージが強いんだけど、今、ここに現れた天使って、悪魔にはない攻撃をして来て、ブレス吐いて来るんだ。
しかも、キラキラした光のブレスで、この最新鋭の大柴マテリアルのジャージ着てても結構痛かったりする。
当たった瞬間のイメージがどうも湧かなくて、一回、食らってみたんだけど、バシン!って感じで引っ叩かれたみたいな痛みが直接、ジャージを素通りして皮膚にやって来る。本当にびっくりした。
慣れてしまえば、紙ゴーレムの攻撃と変わらないなあ、って感じだけどね。
なんて、やってるうちに、今度は急にゾンビの生産速度が上がった、普通に倍くらいの速度になって、綺麗に倒した天使と悪魔がゾンビになっていい感じの速度で、前線にやって来てくれる。
なんだろう? って思ったら、桃井くんの隣にサーヤさんがいた。奥さん来たんだね。
なるほど、ネクロマンサーが二人になるとそりゃあゾンビも増えるよね。
って納得の僕なんだけど、ちょっと気になる点があるんだよね。というか問題がある。
それは、さ……。
「そろそろ機嫌を治してよ」
って一応は話しかけてみる。
すると、
「別に……」
と返事をしてくれるアキシオンさんだけど、なんか反応が鈍い。
そして僕の手に伝わるのはあからさまな不機嫌だ。
まあ、今も普通に僕の剣として必要最低限は働いてくれてるから、このまま放っておいてもいいかなって思うんだけど、なんか放っっておいたらもっとめんどくさい事になりそうで、仕方ないなあ、って思って話しかけてるんだけど。
「ハァ……」
ってため息しか返って来ない。
アキシオンさんて呼吸とかしないから、息吸わない剣が排気なんてするはずもないんで、これは所謂、不機嫌アピールって奴だと思うからさ、何か言いたいこともあるんだろうなあ、って思って、
「言いたい事あったら言いなよ、アキシオンさん」
って天使の放つ矢を避けつつ、うわ、一本しか射ってないのに飛んでくるのは24本って数に変わる。
これこの距離だからこの本数だけど、離れると、その射距離によって数が増してるみたい。
でも遠くから射ようとすると溜めがいるみたいで、そんな隙間を葉山が許すわけもなくて、ても添えない腰にしたバルカで次々に撃ち落としている。
近くに来ての敵は蒼さんが投げナイフというか短刀の投擲で倒してる。