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第124話【スキルに酔う異能者達】

最近ダンジョンに入り始めたばかりの駆け出しの普通のダンジョンウォーカーですよ、僕はなんとなく角田さんと顔を見合わせたら、角田さんはやれやれってジェスチャーをして、僕に手を差し伸べる。ああ、僕が対応しろって事だね、いいよ、僕リーダーだしね。


 「あの、そちらは誰なんですか? なんでこんな事してるんですか?」


 「ダンジョンウォーカーだもの、モンスター倒すのに理由なんている?」


 「目的は、桃井って人でしょ?」


 そしたら、その黒い魔女の人はクスって笑って、


 「いいわ、取引しましょう」


 と言って、樹脂化した桃井って人を指差して、


 「それを貰う代わりに、『エルダー』を倒した称号はあなたたちにあげるわ。こっちも、このラミアを追い詰めるのに、100名近い戦力を投入しているの、いい条件でしょ?」


 「桃井さんをどうするのさ?」


 すると、その黒い魔女の人は、大きな声を出して笑って、


 「ラミアの酸でも溶けないんですもの、そうね、『女の敵』は磨り潰してしまおうかしら」


 うわ、マジ、狂気だよ、この人。


 たぶん、この桃井って人を指して『女の敵』って言ってるんだ思うけど、でも今、僕が気にしなくてはいけないのは、僕の敵だから、彼女だよね。


 もちろん、彼女の申し出には応じられないからさ、


 「いやダメですよ、せっかく助けたんだし、ダンジョンウォーカー同士は危険に対しては相互協力が基本ですよ」


 「交渉は決裂、じゃあ、あなたたちは敵でいいわね? 倒すわ、良い?」


 なんて聞いてくる、良いわけないじゃん。


 「私、見ての通り魔法使いなの、雷を使えるのよ、中階層どころか深階層のモンスターにだって滅多にいない能力よ、良い経験ができてよかったわね」


 確かに、雷撃系って珍しい。それに、角田さんの魔法を炎の発現後に現れた感じで完全にレジストしてるから、この人相当な強いダンジョンウォーカーだね、かなりの実力者だよ。


 人数的にはこの人1人だけにしたからなんとなく勝てそうな気がして来たけど、残ったのが『ボス』クラスって、ちょっとヤバいんじゃないかな。


 焦る僕に角田さんはのんびりと、そんな雷撃系魔法を得意な感じのお姉さんを見つめて、ぼろっと一言、


 「典型的な『スキルジャンキー』ですね、それもかなりの重症です」


 スキルジャンキー??


 一応、話の上では聞いたことはある、文字通り自分の持っているスキルに酔ってしまった人、っている定義でいいんだよね。


 特に魔法スキルの人達には多いらしい。後、直接戦闘向けでも大きな力を持ってる人の中には割と深刻な状態の人もいるって話。


 この人を見ているとわかるよ、自分の中の大きな力に酔っている感じすごいするもの、きっと脳みそとか『ヒャッハー』な状態なんだろうな。


 僕にはよくわからない感覚だけど、酔うなんて言い方よりもむしろ中毒にも近いって話。人の欲望にスキルが根を張る様に絡んでゆくらしいから。



 この人も完全に自分のスキルって言う『特殊能力』で行使できる『暴力』に心酔している人間ていう感じだよ。でもね、角田さん。今はそんな事を言っている場合じゃあ…。


 「贖えないもんですよ、真面目な人間なら真面目なほどハマってゆきますからね」


 厄介なものなんだね、なまじ強いスキルがあると、スキルに自分が囚われてゆくっていう典型みたいな話だね。うん、わかるよ角田さん、でもね今はそんな事を言っている場合っていうか、僕らも彼女の雷に薙ぎ払われちゃうから、そんな事を言っている場合じゃないよね。


 そして角田さんは説明をしてくれる。割と大きな声で、ここにいる僕ら意外にも、敵である、この雷撃魔法の得意なお姉さんにも聞こえる様に、ものすごく詳しく親切に話してくれる。


 「この、『スキルジャンキー』を更生させるには2つの方法があって、1つは北海道が設立してギルドが支援する『更生施設』に入れること、これは結構時間がかかりますよ、中にはなかなか社会復帰できず、酷い例になるとそのまま精神病棟に放り込まれる人間も少なくはないです」


 うわ、もう病気の類じゃん。そう思うとちょっと気の毒になって来ている僕なんだけどさ、今はそれどころじゃないよね、嫌だよ僕、感電死。


 すでにwaist of escape(『逃げ腰』をかっこよく言ってみた)になっている僕を見て、全くいつもの角田さんは言った。


 「もう1つは、同種同型のスキルで圧倒的な力の差を見せ付ける事です、簡単にいうと、『上にはさらに遥かなる上がいる』っていう事を教えてやるのが一番手っ取り早いんですよ」


 ここまでは、確かに説明だったんだけど、次の一言で、今まで角田さんの言ってた言葉は、全て、この雷撃系魔法の得意なお姉さんへの煽りになってしまった。


 いや、角田さん、最初から煽っていたのかもしれない。


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