第98話【僕は気が付かない、あの日、時の攻防】
まあ、それは僕もそう思うよ。確かに、アキシオンさんの能力って反則すぎるもの。
「最近は、私達界隈では、鬼に金棒の上位の言葉として、真壁秋にアキシオンという言葉が流行ってるの」
って牡丹さんもいうけど、それって、絶対に此花さん達の間だけだよね。聞いた事ないよ。
「私たちは、アキシオンをどうにかはできないから、あなたの方から接続を切らしてもらったの」
っていうんだよね。
そうなんだね、つまり僕側から接触できないからアキシオンさんから何も帰って来ないって形にしてるんだね。
すると、
「正確にいうなら届かなくしてる、アキシオンが繋げっる回路は常に一定だったから、そこに分岐を設けてループさせてるの、つまりどんなに早くても、大量でも届かないって状態なのよ、だから安心していいわよ」
って言う椿さんだけど、まあ、うん、そうか、なんだ、そう言う事なんだね、って言葉の上を沿ってなんとなく理解できるけど、それ以上何がどうなってなんて今の僕には見当もつかない。
つまり、僕、とかアキシオンさんからとかじゃなくて、結局のところ、とどの詰まり、今はアキシオンさんの能力は使えないって事で、今は切れ味がちょっと常識を逸脱するくらいの扱い安いロングソードって事だね。
なるほど、納得いったよ。
だからこそ余計に思う。
いや、もう、本当にどうしよう?
だって、この戦いと言うか、いつものパターンで戦いに決着をつけるのって、僕がズバン! って、もう手加減なんてすることもなくて、その辺はいつもアキシオンさんに調整してもらってたからさ、斬るも斬らないも、うまいこと怪我させない様にって配慮は本当に完璧なアキシオンさんだから、僕は一切の手加減なんていらなくて好き勝手にやってこれたんだよ。
それにさ、この姉妹を知る僕だから余計に思うんだ。
此花さん達、まだ何かを隠してる気がするって、そう思うんだ。
「ほら、しっかり戦わないと、やっつけちゃうわよ」
って椿さんに言われる僕だけど、あれ? いつの間にか牡丹さんがいない。
ちょっと当たりを見回すけど、ずっと遠くに距離を取って立ってた。
「よそ見しないの」
って椿さん言われて、ヤバイ雰囲気を感じる僕はそのまま後方に飛ぶ。そしたら、その位置から、床から槍が、無数に飛び出て来る。地面の槍だ。そして空中からは光の矢。
綺麗に上下の飽和攻撃をくらい続ける僕なんだけど、ちょっとわかってきたけど、この魔法を物理の力に変えるのって、徹底的に行われた場合、僕の目の前あたりに、物理に干渉する形になるから、弾き返せる。ってか撃ち落とせる。対応が可能だ。
炎や雷なんかも、生まれる起点さえ抑えると、そこからのエネルギーの拡散は収束させる事ができる。
最も、わかっててもできる人ってそうはいないだろうけど、葉山とか蒼さんあたりなら可能かな、って思うから今度教えてあげよう。
ともかく、今の現状はなんとかしのげている訳で、何より今は椿さんだけだだからって言うのもあるし、って、あれ? 牡丹さんは何をしてるんだろ?
って思って見ると、遠く離れた牡丹さんに葉山が駆け寄ってる。蒼さんも一緒、離れた場所では何やら角田さんが難しい顔してぶつぶつ何かを呟いてて、桃井くんは、あれって祝福の魔法かな?
ネクロマンサーが、祝福って……。
でも、確か前に桃井くんに聞いた話だけど、死霊呪術師って、元を正すと高名な僧侶とか司祭の類って言う人たちも多くて、真面目に人の為に生きてきた聖職者が、何かのきっかけでたどり着いてしまって、その後、たまたま国や地域をガッツリ呪う様になった人達で、そんな中でも信心を忘れてる訳でも神様を裏切ってる訳でもない人は、神道系統の奇跡を操る事のできる術者って多いって聞いてたから、本当にできるんだって感心してた。まあ、祟り神も長い歴史の中で勉学の神様になったりするらしいから、そんなのもありって僕は捉えている。
なんて事をのんびり考えていると、うわ、蒼さんが樹脂化して吹き飛ばされるけど、遠目にちゃんと着地してたからその変化は一部だったみたい。すぐに桃井くんに解除されてた。
そのまま繰り返し、アタックして行く蒼さんの後ろに葉山が死角に隠れる様に追従してる。あ、ダメだ、椿さんには丸見えみたいだ。
魔法スキルを持っている人って感覚系のスキルを持つ人みたいに、そこの空間と一緒になるところあるから、僕らみたいな直接攻撃系はやりにくいなあ、って思うけど、でもこんな事できるのってきっとこの姉妹だけだとも思う。
本当に、椿さんって、魔法により遠距離攻撃の人なんだけど、ほとんどゼロレンジで、接近戦をしてる。もちろん使ってるのは魔法スキルだよ。
導言を必要とする魔法スキルをまるで剣や槍、時には盾の様に扱って、二人の攻撃を凌いで、時として攻撃している。
でも、戦ってるのって、椿さんだけなんだよ。
なんか違和感。ってか、あ、 僕これ知ってるぞ。
そして、僕は気がついたんだ。
あれ? なんだ、これ、ってかこんな状況に見覚えってか既視感があるぞ。