第97話【アキシオン、音信不通】
今、僕はかつてないほどの窮地に立たされてる。
いや、何がって、こんな状態で、アキシオンさんが全く反応しないんだよ。
ひとまず、今の段階でできることって言えば、アキシオンさんに切れ味を調整してもらって、『絶対に斬ってはダメ』ってモードになって、ひとまず今もてる力を全てぶつけて、安全に此花さん達の戦いを制しようって考えてたんだけど、それができない。
アキシオンさん! おーい!! アキシオンさん!!! ちょっと!!!
ダメだ、全く反応が無い。
そんな困った僕に対して、一旦、魔法スキルによるところの波状攻撃が止んで、不意に椿さんが僕の目の前に現れる。
「どうしたの? 何か困ってる?」
って普通に聞いて来るからびっくりする。
いや、そもそも今、こうして椿さん達と戦ってるって現状が困ったことになってるんだけどさ。
って言おうと思うんだけど、椿さんの普通ってか、通常モードっぷりに、もう驚くやら、反応のないアキシオンさんに驚くやらで、もう、どっちにびっくりしたらいいのか分からなない僕は、
「いや、なんか、アキシオンさんが反応なくなってさ」
って普通に聞いてしまった。
すると、椿さんは、
「あ、なんだ、アキシオンね、意思の疎通ができないからビックリしてたんだ」
って普通に笑顔で言って来る。角田さんに言わせると、炎系の最大呪文を放ちながら、炎に煽られる僕に、そんな事を言って来る。
そして、
「よかった、体調が悪いとかじゃないのね。ほら、急に風邪引いたりとか、お腹が痛くなったりじゃないのね」
って言う椿さんの言葉に、
「私達、『メディック』は使えないから、病理に対するケアはできないの」
って、牡丹さんが椿さんがよかった、って思う理由を話してくれる。
うん、そうね、別に体は健康そのものだよ。
そんな事を言いつつ、再び魔法スキルの波状攻撃が再開された。風と真空の刃が僕を襲って来る。
「そっか、最近なら、そのアキシオンの意識体も女子化して、仲良しだったものね」
って椿さんに言われるからそっちも驚く。
そんなの僕しか知らない事実だよって思ってたから、まだ誰にも言ってなかったし、なんで知ってるのさ? ってなる。もちろん隠すつもりもないけど、聞かれないから黙ってた。
いや、もう驚きっぱなし。安心して受けて流して躱していられる乗って、彼女達の攻撃くらいだよ。普通に安心して魔法スキルの生まれる起点や、その効果の範囲を切り裂いて事なきを得てるって言うルーチンを行う事で、一安心できてる。
一応、今の僕の現状を説明しておくと、もう、蚊を一匹殺す為に、総合火力演習する地上部隊の一斉放火を浴びてる気分。もちろん、僕が蚊ね。
そんな中、椿さんが、
「アキシオンちゃんは無事だから安心していいわよ」
って言い出す。
ん? 何がどう言う事なの?
最大級の疑問を前に出す、そんな顔をしながら、未だ彼女達の魔法スキルの波状攻撃から逃げ回りながら、彼女の言葉の意味を考えてるけど、答えなんて出ない。
「あのね、今、あなたとその剣のマネしている暗黒物質、あなたの言う所のアキシオンは、意思を疎通するためのチャンネルが切れている状態なの」
って言われる。
「どういう事?」
って普通に聞いてしまう僕がいる。
ちなみに、今も普通に戦ってるよ。
どんな状態でどんな態勢かって言うと、光の矢が無数に僕に飛来して来る中、それを避けつつ回避してるんだけど、そんな僕の左右に此花さん達が一緒についてきてるって感じ。
僕の移動速度に足を使ってついてきているって感じじゃなくて、どっちかって言うと、僕からの距離と速度を無くしてるみたいな感じかな。
だって、普通に立ってるだけだからさ、この姉妹。
で、こんな状態でも僕に対して疑問に関してはちゃんと答えてくれるんだ。
「あなたが剣だと認識している世界そのものの一部って、やっぱりどう考えても卑怯なのよね」
って椿さんが、ため息混じりでいうんだよね。本当にヤレヤレ、って感じで。