第123話【雷鳴の椎名登場】
雷鳴?
一瞬、稲光が見えた。
ここ水が多い部屋だから、みんな感電してしまうよ、って心配は、角田さんの金属の杖っていうバットに吸い込まれて事なきを得たみたい。避雷針か? そのバット、避雷針だから金属なのかな?
そんな疑問を向ける角田さんは、
「おっと、これは少しめんどくさい事になりそうですね」
とはいうものの割にはどこか余裕そうに言う。
突然の稲光と共に、今度は黒い渦が50個以上、そして、その真ん中に、ビカビカと光の球体が現れる。光の玉は未だ移動中な感じで、人って感じじゃない。
「多分、これ、蛇女を追い詰めた本体ですよ」
あの仕様で、この数で、そして転移魔法を扱う魔法使いがいて、もうこれって、パーティーっていうより、軍隊だよ。
幾ら何でも、この数は確かにマズいんじゃないかな。
「さっきは油断しましたが、今度は大丈夫」
って角田さんがいう。
本当に余裕な感じ。おお、カッケー角田さん、って感動している僕の前に、スッと春夏さんが立つ。
「今ので大体わかった、こんどはあの形態でも大丈夫」
って春夏さんが言う。
多分、あの形態って、黒い渦の時の物だと思う。その形でも彼女は攻撃が可能って言ったんだよ。
そして、今まで空気のようになってたシリカさん。真摯に訴える様に僕に向かって、
「誰かスプーン持ってないですか?、この際箸でもいいです」
ん、よし、3人で挑むよ。
ひとまずシリカさんをラミアさんのところにやって、黒い人達の行動を待とうとしたんだけどさ、その黒の集団が一気に焼き払われたんだよ。
もう、ゴオォォ! って感じに巻き起こった炎は現れた全員をほぼなぎ払って、一瞬で終わってしまった。
残ったのは焼け焦げた人たち、ちなみにまだほんのり生きている感じだけど、多分、もうこちらに攻撃するような行動はとれないと思われる。
「今の何?」
って角田さんに尋ねると、
「炎系の呪文で、下位から3番目の呪文ですよ」
「ハールの上っていう事?」
「まあ、この階層なら、制約があるんでこの辺が限界ですけど、こいつら魔法抵抗とか持っていないんで、まあいけましたね、1人残りましたが」
攻撃魔法って、ハリクすら観たことがない僕だけど、すごいものだね、目の当たりにしてみると反則な感じがするよ。でも、中階層から下になるとこんな戦い方が当たり前になるんだよね。きっと。
「なんか、こういうなの目の当たりにしてしまうと、僕とか春夏さんみたいな前衛というか直接攻撃系って意味ないなあ」
って思わず呟いてしまった僕に、
「いやいや、そんなことはありませんよ、1人残っています、呪文抵抗値の高い敵、特に魔道士系には直接攻撃が有効ですよ、これはモンスターにも人にも言えることです」
なるほど、そういうものなんだ。僕の存在意義復活。
中空に浮いた光玉は、徐々にその輝きを失って、やがて人の姿になり、鏡の海に降り立った。あ、でも、わずかに水面には触れていなくて、水の上に立っている感じ。これも魔法のスキルなんだろうね。
黒より黒い漆黒のマント。布のような色合いの中に時折、星のきらめきのような細かな光が射す。金属のきらめきのようであって、でも星の輝きみたいにも見えた。
そのマントを開いて、同じ黒に包んだタイトな肢体をさらすみたいな色合いとその姿は、女性の形をして、
どこか人のモノではない雰囲気を出してる。
もうね、まんま、魔法使いな感じ、今風の魔法使い、女性だから魔女だね。
深階層の出で立ちってこんな感じなのかな? 装備っていうよりもう一枚、魔獣の皮でも張り付けているみたいに見えた。
彼女は、周りで起こった出来事による結果、つまり、自分と一緒に来たすでにミディアムくらいに焼け焦げて倒れている黒い人たちを一瞥すると、同じように黒いフードを脱ぐ。
そして深いため息を吐くと、
「で、あんたたちは誰?」
と低い声でそう言った。
綺麗な女の人だった、ショートな髪型、ボブっていうのかな、なんか冷たい印象な人。ダンジョンウォーカーだから、年上でも18歳だけどね。
「|ダークファクト《ダンジョンから影響を受けた異常行動者》な連中には見えないわね」
と続けて言った。
さっきも言われたな、それ。