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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆終章 異世界落下編◆
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第84話【異世界転生エルフさん登場】

 それは転生じゃなかった、転移さん達がいるってことではなくて、こうしてこちらに来る流れが滞っているって事がだ。


 と言うか、きっとこれ、僕らと言うかこっち側にも気がつかない内に終わっていなきゃならない案件だって事に気が付く。


 本来なら、異世界が出る、僕がその大地を一撃で壊す。そしてそれ以前にみんなこっちに来てるって流れのはずだったんだけど、何かがおかしい。


 それに魔物さん達の配置だ。


 僕らは木村さんの情報から、こうしてダンジョンの入り口付近を守っている。


 真希さん達の、だから母さん達の方へと降りて行く魔物さん達、つまり武闘派って言われる人達以外の、賢くて強い魔物さんはダンジョン周辺に集まっている傾向がある。と言うかダンジョンを狙っている?


 最初はダンジョンに、北海道ダンジョン制圧がその目的って考えていたけど、何か違う気がして来た。


 まいったな、これから先のプランに関して、そこそこ難しいだろうけど、決定的な計画があったんだけど、この想定外の、つまり異世界転移さん達が現れるなんて、全くの想定外だった。


 だから、こうしてダンジョンの入り口付近にいる魔物さん達については他に目的がある様に感じてしまう。


 そして、今また4丁目ゲート付近に喧騒が湧く。


 何やら、ダンジョンから出ようとしている人がギルドの人達に止められている。


 パッと見、雰囲気が転移さんにカブるから、きっとあれもまた異世界から帰って来たこっちの人だってわかる。


 そして、ギルドの人達も、暴れてる新しい転移さんを取り囲んで、ワイワイやってる。


 なんかススキノで暴れる酔っぱらいを取り囲むススキノ交番の人達みたいに見えるからちょっと笑えた。


 どうやら、今度の転移さんは女の子みたいで、こっち見て、


 「貴様が北海道魔王か!」


 って叫んでる。


 僕が返事をする前に、


 「そーだよ!」


 って相手に対して手を振りつつ僕を指差して、割と呑気に答えてる葉山だったりする。


 いいけど、そうだけど。


 すると、その新しい転移さんは、こっちに向かって、一気に駆け出す。


 ギルドの人達、比較的に小さいからまだ新人さんかな? 心配そうにこっちに転移さんを追いかけてこようとするんだけど、僕は手を降って、いいよいいよって伝えてみる。


 そして、絶対に普通のダンジョンウォーカーじゃ出せない戦闘速度を持ってこっちに向かって来る。


 早、ってか足長、ってか身長長! あれ?


 僕は、迷いも無く、長剣を抜き放ってこっちを襲いかかって来る新たな転移さんを見て、驚く。


 驚いてる暇とかは無いけど、それでも、形をタイミングはわかるので、普通にびっくりする。


 「真壁あれ!!!」


 思わず、


 「うん、そうだね」


 ってうなずく僕に、回避にしろ受け止めるにしろ、一応大事になるといけないと判断する蒼さんが僕の前に立とうとするんだけど、


 いいよ、大丈夫。


 って振り下ろすその長剣、その持ち主の顔が間近に見えて、綺麗なゴールドなブロンドの髪の間から、人とは思えないくらいの長さの耳が見えた。


 思わず、その耳に触れて、


 「本物だ」


 ってびっくりして、その後、振り下ろされた長剣を受け止める。


 そして、僕は思わず、


 「エルフな人?」


 って本人に聞いてしまったら、転移さんは肯く。


 しっかりと答えをいただいて、関心する僕は、「だよね」って納得を口に出してしまう。


 それにしても、エルフの人って、弓に魔法のイメージあるけど、この押し付けて来る長剣からやって来る力、強いなあ。


 「やっぱり、いままで伝説や伝承の存在って、概ね存在していたのね」


 って葉山は鍔迫り合いみたいな形になった僕ら見て、と言うかエルフさんを見てそんな風に感心していた。


 そして、


 「あなたも、こっちでお亡くなりになって、向こうで蘇った人?」


 って普通に尋ねると、


 「私は、『木の根の切れた葉』村の族長の娘として転生したものだ、いますぐダンジョンを解放して、我らの村の人間を北海道を解放して受け入れろ!」


 って言われる。


 その一言で、一回弾き返した。


 僕のアキシオンさんから走る力と衝撃は、彼女の長剣と腕を伝搬して、膝のあたりに力を残して、後方へ追いやる。それは伸びきった彼女の膝と足では吸収しきれずに、切に尻餅を着く形になって治る。


 「北海道ダンジョンを解放ってどう言う事? 北海道も解放するってどういうことなの?」


 って言ったら、エルフさん、「ヒィ!」って小さく声を上げてた。


 「お館様、怖いです、抑えてください」


 って蒼さんに言われて、ようやく僕自身が怒ってることに気が付くよ。


 「春夏絡んだら、本当に感情剥き出しになってるんだから」


 って葉山にも言われる。諭す様に言われる。


 ああ、そうなの? いや、ちょっと表情筋が硬いかな、くらいには思ってたけど、僕、怒ってた?


 違う、違う、そうじゃ無いんだ。ダメだな、そんなんじゃ。


 ちょっと心を切り替える。深呼吸する僕の背中をポンポンと叩く蒼さんに、心配そうに覗き込む葉山の顔だった。


 そんなに? そんなに怖かった?


 ともかく落ちつこう。


 深呼吸、深呼吸……。


 よし、もう大丈夫、もうね、自分でも笑顔になってるのがわかるくらいの表情を作って、未だ座り込む様うな姿勢のエルフさんに声をかける。


 「ごめんね、大丈夫だから、何がどうなってるか話てみてくれないかな?」


 って言うと、彼女はそれでも僕の顔を見るのを拒む様に話し出す。


 「私たちは、力の無い者達を先導して、『地底に横たわる名もなき偉大な白き神』が創造した大地の穴から、皆を引き連れて脱出する予定だったのだ」


 と言った。


 つまり、異世界の魔物が全部が全部、戦えるわけではなくて、大半は一般市民的な平和な、戦闘なんか無縁あ人達なのだそうだ。特に、このエルフさんの村は農業に従事していて、と言う話で、まあそうだよなあ、あっちにも社会はありそうだし、どこかで誰かが生産しないとやってはいけないだろうなあ、とは思っていたから、その辺は納得だった。


 「そうだね、魔物の戦う人達が軍隊で、貴族だとして、一般市民がいないとそれも成り立たないから、ここで、命張って、そんな人達を新しい大地に導くのだって当たり前よね」


 って葉山が感心していた。


 「一人でも多くの、守るべき者達を逃す為に、私の命なんて必要ない、私を育ててくれた父母のためにもここで奮い立たなくてどうすると言うのだ、私は暖かいあの家にもう一度帰りたいのだ」

 

って言ったんだけど、言われたんだけど、別にそんなのいいよ、やったらいいじゃん。ってそうなる僕らはお互いに、だから葉山と蒼さんと顔を見合わせて、


 「いいんじゃない?」


 ってどうしてか僕が代表して口に出して言った。


 すると、エルフさん、


 「いい、だと! ふざけるなよ!」


 って突然、怒り出した。


 びっくりするくらいの激昂。


 そのままの、腰を下ろしている姿勢のまま、彼女、エルフさんはその両腕を大地に、ここ大通公園だから、石畳と言うか煉瓦敷きの地面に叩きつける。


 ドゴーン!!!って凄い音したよ、大地揺れたよ、どこまで力強いんだよエルフ、僕の中にあるエルフのイメージが完全に払拭されたよ。森の人ってか、大地の人って感じだよ。線は細いんだけどなあ……、そのまんまエルフなんだけど、やってることはサイクロプスかミノタウロスかって感じだよ。


 でも、まあ驚いてばかりいられないので、


 「何を怒ってるのさ? 脱出したいのなら、勝手に脱出すればいいじゃない、僕らは誰も邪魔はしてないよ」


 と、そう言った。


 そしたらさ、エルフさんは言うんだよ。


 「皆が、あの大地から直接降りて来れるわけでは無い、だからダンジョンを使を追うとしたのだ、『地底に横たわる名もなき偉大な白き神』は、この日の為に、世界をつないで下さっていた……、しかし……」


 そう言って、首を項垂れるエルフさん。


 僕は、まだやらなきゃいけないことが、あっち側からやって来ている事実をここで初めて知った。


 そっか、じゃあもうちょっと落ちるのはやめてもらおうかな。


 って、こっちに気を遣ってゆっくり出現を続ける異世界の大地に若干の気遣いを感じて、僕らは、エルフさんの話に耳を傾けることにしたんだよ。

 


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