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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆終章 異世界落下編◆
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第76話【葉山の気持ち、誰かの為への想い】

 そうだよ、結婚式でチューなら自然だよ、当たり前だよ。もう、普通にご飯を食べる時についでだからってお風呂に入っちゃうくらい当然の行為だよ。


 本当に、何を言ってるのか、落ち着きを取り戻す僕に、


 「このままじゃ初夜に突入されるって、そう思って、流石に自分の弟の様に可愛がって来た真壁の初夜を覗く訳にもいかないって出て来たんだって言ってた」


 そっか、なんか思ってたのと違う。


 て言うか僕と春夏さんの共通認識は一緒なんだけど、春夏姉がそこに加わるとなにもかも台無しになる感が否めない。


 少し考え込んでしまう僕。


 いいや、気を取り直して、ともかくあの時のキスがきっかけになったのは間違いなかったから、結果的にはいいや、になる。


 春夏さんが僕に伝えて記憶の中では、当時の僕が常に春夏姉と結婚するって言ってた事が最大の、この地に残っていた思念だって、それを拾えたのがきっかけだったから、そのキス、つまり結婚式が大きな、大倉山ジャンプ場のK点越えになったって認識だったんだけど、そうである様なないような、いや、結局は同じだけど若干の心境的な違いは否めないけど。


 その時の春夏さんの認識としては、かつて春夏姉が、死を体験した時に、最後の思った感情というか思考が、僕が、いや春夏姉から、いつか結婚(冗談として)するんだってことが、最後の大きなパーツになったって言ってたけど、それ以前から、思考と言うか思念みたい物は、春夏さんの中に春夏姉としてはあった訳なんだね、しかもそれは春夏さんが気がついてないから、春夏さんの中に在る春夏姉の記憶みたいなものなんだろうか?


 でもしっかり良い悪いくらいは考えてそう。


 なるほど、そっか。


 そんな事を考え込む僕に、葉山が気がついていたみたいに言うんだよね


 「あ、そうだ、言い忘れてた、春夏姉さんがね、真壁は弟にしか感じられないから、チューくらいならできるけど、やっぱり真壁とは結婚は無理、って伝えておけって言われてたんだ」


 うーん、そうなんだ。


 僕もそうだよ。


 でも、なんで今言う?


 で、なんで二度言う?


 さっきも言ったじゃん。


 そして、なんだろう、この僕の中の残念感。


 いや、本気で春夏姉と結婚したいなんて思ってないけどさ、でも、きちんと断わられた感がすごく心に響くし、ガチで失恋した感じになるのは何故なんだろう?


 本気で恋愛感情なんてないんだけどなあ、いや本当に、ガチにありえないけど、こうして正式と言うか人伝だけど言われると、多分、道を歩いていていきなり知らない人にすれ違いざまに『君、0点だから』って言われるくらいのショックはある。言われた事ないけど、そのくらいの衝撃はある。


 まあ、動揺はしないけどね。


 僕には僕の、春夏姉には春夏姉の人生があるんだからね。


 そんなの当たり前だよ。


 そっか、結婚、無理なのかあ。


 あれ? 僕、本当に落ち込んでる?


 意外に長く尾を引いてるなあ、ってこの感情がどこから来ているのか探していると、


 「でも、大丈夫だよ真壁!」


 って葉山が言うんだ。


 「春夏は私の体に帰って来る、私は、かつての春夏姉みたいになるの!」


 天真爛漫に言う葉山は本当に嬉しそう。


 また、ペシって叩いちゃったよ。


 「痛い!」


 って頭を抑える葉山。


 いや音の割に衝撃はないから、痛くはないから。


 「もう! びっくりするじゃない!」


 って葉山は頭を押さえて怒るけど、いや僕も怒ってるからね。


 「で、葉山はどこに行くんだよ?」


 って言うと、


 「だから、春夏の中」


 って言う葉山。


 話は最初に戻ったね。


 もうね、完全に春夏姉の婚約破棄の話いらないじゃん。


 ってか婚約ってしてないし。


 なんなんだよ、勝手に僕の知らないところで僕の事を決めないで欲しい。


 「だって、そうした方が真壁だって幸せでしょ、絶対に嬉しい筈だもの」


 ってほらはじまった。


 だから、僕の事は僕が決めるから、その周りの環境も含めて。


 誰かが何を誰の相談もなしに始める行動なんて、最初からろくな事にならないんだよ。


 前から言ってると思うけど、何かを失って何かを得るって事は何かを失ってる事に他ならないんだ、取り返しのつかないことの一つなんだよ。


 だからこうして選択しないで済む方法を撮ってるのに、この葉山ときたら。


 「何よ」


 って僕が真っ直ぐ睨みつける葉山の視線が、そのまま反射する様に葉山から返ってくる。そこに乗ってるのは、不満や猜疑心、そして隠し切れてない不安だ。


 わかってる。そんな事はさせないよ。


 僕はこの地に散り散りになってる、僕の知る僕の中にも今は含んでいるもう一つの不安を隠さない感情にそう告げた。


 こっから全部僕のターンだからな葉山、すっかりさっぱり言いくるめてやる。

 


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