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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆終章 異世界落下編◆
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第73話【葉山の決意、すっと思い続けていた僕への提案】


 ああ、今の段階では食べようとも思ってなかったよ、だから、スッと差し出すと、もうはちきれんばかりの笑顔。


 「おー、この御恩は生涯忘れません」


 と言って、上品にひったくると、そのまま開けて食べ始めた。今日はスプーン持ってるみたいだね。


 そんな様子を見ながら、


 「結局は最初の計画のままか」


 とカズちゃんが呟く。


 「『地底に横たわる名もなき偉大な白き神』が拾う命のままにだよ、あっちの世界でも変わらなかったろ?」


 ってシンメトリーさんが言った。


 「黒神様が頑張ってくれたお陰でここまで大地も保ったしな、いい落とし所だ」


 ってそんなふうにカズちゃんも会話をしていて、


 「やっぱり神様なんだね」


 って、思わずそんな言い方をしてしまう。


 うん、これは春夏さんの、僕のそばに寄り添う春夏さんの事を言ったつもりだけど、それでも、ちょっとした違和感は拭えないんだ。


 いや、ほら、僕の世界の、僕の知ってる神様ってのとはまるで違うからさ、もちろん、異世界側は現存している神様だから距離が近いのかなあ、ってそんな感覚を受けるんだ。


 すると、カズちゃんはそんな僕の思いを掬う様に、


 「なんだよ、今更、春夏の正体を知ってビビってるのか?」


 なんて言われるから、ああ、そうなのかな? いや、でも違うなあ、そうじゃなくて、なんか違うなあ、って考えてるだけで、なんて言うか、そのあり方が、ちょっと僕らの知ってる神様とは違っていて、


 「多分、僕達の世界と違って、神様が現存していて、しかも身近にいるなんて、ちょっと考えられないって言うか、不思議な感じがしてさ」


 と言うとカズちゃんが、


 「そうだな、お前らの言う宗教とはだいぶ違うからな、私達の神様ってのは私達に奉仕してくれる存在で、見返りは求めないんだよ、だから願えばたいていの事は叶えてくれる、もちろんできる範囲内でな」


 ああ、そうだね、だから春夏姉は生き返ったんだ。


 あの時は、僕は何か対価を払うなんて考えもしなかったよ。


 叶えてもらえて当たり前の子供だったんだ。


 そしてシンメトリーさんは言うんだ。


 「大分、お前らの方に傾いて来た、いよいよ最後の時を迎えるぞ」


 と、どこか誇らしげに、それでも若干の寂しさを思わせる表情が僕に言う。


 落ちて来る異世界。


 そしてそれは最後の時。


 だから彼が派遣されて来たんだ。


 僕は、その思惑をしっかりと受け取るつもりでいる。


 「準備はいいアキシオンさん」


 一応の声をかけると、


 「いつでも、どこからでもどうぞ」


 と僕に語りかけて来る。


 そんな時、差し迫る最中、急に葉山が僕に声をかけて来るんだ。


 「ねえ、真壁、ちょっと良い?」


 なんだよ一体、って思って、葉山を見ると、いつになく差し迫った感じ。


 絶対にロクでも無いこと考えてるってわかる。


 「そんな顔しないで、いい話だよ、それに絶対にうまく行くから」


 って葉山が言うんだよ。


 溢れる空気が風になって吹き荒れる札幌、ここ大通公園で、妙に通る葉山の弾む声。


 いいよ、聞くよ。聞くだけだけどね。


 僕はアキシオンさんへ声をかけて準備していた事を一旦やめて、葉山の話に耳を傾ける事にした。


 そして、葉山は語る。


 「春夏にこの体を、私の体をあげるの、いい考えじゃない?」


 ほら来た。


 本当にね、この子はね。


 あまり得意じゃ無いけど、ちょっと本気で怒ろうかなって、笑顔の葉山を見て思う僕だったよ。

 

 

 


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