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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆終章 異世界落下編◆
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第69話【ツギさんの昔話】

 これはツギさんの話。


 ツギさんの昔話。


 ツギさんが言うには、


 「まあ、俺、鍵っ子だったがらな」


 なんて話だった。


 「小さなごろな、家中の鍵に飽き足らず、近所から隣町の家の鍵やら、施設の施錠やらを外しまぐる、そんな鍵っ子だったんだ」


 いや、それ鍵っ子違う。


 目に入る鍵やらセキュリティーやらを外しまくる迷惑行為で、ただの問題行動だと思う、しかも自分の家以外の鍵やら施錠って事は、きっと犯罪案件であり、それって補導されても不思議はないと思う。


 「ま、まあ俺、逃げるの早がったしな、証拠も残さねえし」


 ってちょっと照れてるツギさんだった。確信犯だった。


 「でも、このダンジョンがあるから俺の技能も役に立つんだよ」


 って言ってた。だよね、そうかもしれないね。趣味特技が「鍵を開ける事です」なんて言った日には、今日日ただのヤバイ人だもんね。


 油断も隙もできない人になっちゃうよね。もちろんツギさんは善人だし、でもそれは付き合っていかないとわからないし。


 なんて話をしていると、


 「開いたぞ、アッギー」


 って言った。本当に瞬く間に。僕の前に立ってきっと彼女達、半透明になってる合祀した三柱神に触れるか否いやの距離で、ジッと何かを見つめていたような仕草から、スッと手を出して、指先をススス、って動かしたいなや、すでに終了してた。


 思わず、


 「嘘……」


 って呟くも、


 「嘘じゃねえよ、呼びがげてみな」


 って言うから、


 「カズちゃん! シンメトリーさん! シリカさん!」


 って、それほど大きな声でもないけど、呼びかけると、ああ、デカくて高い場所にある顔がこっち見た。見て、すごい驚愕の表情してた。


 まるで、神様が天から語りかけるくらいの距離感で、


 「どう言う事だ?」


 ああ、これカズちゃんの声だ。


 「ああ、お前、ついに、私の心すら解錠したな、私の心を開いて、オープンにしてどうするつもりだ!久能次男!!!」


 やや上ずってるけど、これシンメトリーさんの声だ、相当にパニクってる、けどなんだろう、どこか喜びを感じてる様に聞こえて来るのは気のせいだよね?


 で、言われてツギさんは、


 「何言ってんだ? あいつ?」


 って燻しげな顔して、その巨大な高いところにある顔に言ってた。


 いや、どうするも何も、止めるつもりだけど?って思う僕は、次の実力行使をどうしようかって考えている最中に、


 「すでに物理干渉は可能ですね、切り刻みますか?」


 ってアキシオンさんは言うんだけど、


 「怖い事言わないでよ」


 って言ったら、


 「この状態でなら、北海道ダンジョンにつながる彼女達にはすでに死、消滅への状態にはなりませんよ」


 って言われる。


 それでもなあ、彼女達に攻撃を加えるのは違う気がするんだ。


 それじゃあ、今の状態を止められても、意味がないって気がするんだ。


 もっと、こう相手に自発的に……、なんとかしなきゃって気がするんだ。


 彼女達の行動と行為は、きっと向こう側の世界にも繋がっていて、だからつまり彼女達がもうこちらで幸せに裏切ってますよって、ああ、違う違う、そうじゃなくて、つまり、こっちでも大丈夫的な何かを発信してもらわないと、僕の計画というか、何もかも丸く収める算段がつまづくってか、逆転の発想で言うなら、未だ向こうに僕らの意識を飛ばせてないことを考えると、いい機会って捉えてしまう。アグレッシブに考えると、そうなる。


 だから、ここでなんとか説得を試みる。


 みようとする。


 で、何から始めようかな、って思ってると、


 「真壁、連れて来たよ!」


 って葉山が、土岐と八瀬さんを連れて来てくれる。


 「え? 何? 僕忙しいんだけど」


 って強引に八瀬さんの腕を引っ張って来る葉山に文句言ってる。


 「何? 僕に何か用かい?」


 って漸く葉山が連れて来た場所に僕がいる事に気がついて、八瀬さんがそんな風に聞いて来る。


 ちなみに土岐は悪魔の花嫁さんと一緒。


 なんかいつもより距離近くないか君たち?


 って感じの寄り添い方をしてる。


 そして、


 「真壁、これは後で言おうとした事だけどな、俺、この戦いが終わったら結婚しようと思うんだ」


 いや、それ死亡フラグだから、言っちゃいけないセリフだから。


 それにしても、土岐にしても八瀬さんにしてもこの巨大な三柱神である彼女達に気がついてないなあ、大きすぎるからかなあ? かえって気づかない?


 だから、空、ほとんど直上を指して、


 「これ見て!」


 って言ったら、二人とも懐疑的ではあるけどそっち見てくれて、そして、


 「うおお!」


 とか同じ言葉叫んでた。


 血は繋がってなくてもさすが姉弟だね、息ぴったりだ。


 土岐なんて驚きっぱなしだけど、さすが、指揮官である八瀬さんは、


 「うわあ、何あれ?」


 ってその正体というか現象をやんわり聞いて来た。


 「あれ、カズちゃんだよ、保健室の佐藤和子さん、シンメトリーさんとシリカさんも混ざってる」


 っていうと、


 「へー、そうなんだ」


 って普通に言った。ちょっと笑顔を引きつらせて言った。


 「あんなの一体どうしろっていうんだよ?」


 って土岐が言う後ろで、「我らの中でも『佐藤』の名は最強だぞ、太刀打ちできんぞ、夫を殺すきか?」


 って言われる。僕が言われる。


 「ちがう、ちがう、ほら、土岐も八瀬さんも縁のある人たからさ、その声が届くと思ってさ」


 って言うと、二人は顔を見合わせて、ちょっと疑問符を撒き散らすみたいな顔してた。


 「ほら、カズちゃん、保健室の、君たちの施設にも遊びに来てくれてた『ダンジョンお姉さん』」


 って言ったら、


 「ああ!」


 って同じ声色、同じタイミング、同じ音量で叫ぶ様に言う土岐と八瀬さん。本当に息ぴったりだね君達、ほら、リリスさんが、ちょっと複雑そうな顔してるよ。割って入り込めない姉弟の関係に一瞬、不安な表情を浮かべてしまったよ。


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