第67話【頑なな彼女達、固く閉ざされた心】
「じゃあ、早くやってよ、ってか教えてよ」
「その場合、お三方の存在と、生命形状がどうなってしまっても責任は持ちかねます」
とか言い出す。
「どう言うこと?」
「あの封印を含めて、彼女達の形状です、つまり自分で耳をふさぎ、口を閉ざし、目的へ進み決めています、ですからそれほど複雑ではなく、お口にチャック、耳に栓と言った、単純でいて堅牢な処置です、物理的に見えない自身の一部を使って施錠をしていると言った方がいいですね、その施錠を含めて彼女達なのですから、そここを破壊するなら、彼女達がどうなるかなんてわからないと言うことです」
ああ、そうか、つまり施錠もカズちゃん達も一緒って事だね。
だから、家に入れないからって、玄関の鍵を壊してしまったらもう鍵締めれないじゃん、って、つまりはそう言うことなんだね。
「違いますよオーナー、現在の問題点と、自宅の鍵についての相似点は全くありませんよ、行動に対しての結論として手を出せないと言うなら結果は変わりませんが、わからないから何もしないと言うのもまた賢明かと、理解されていないのならまた、後ほどゆっくり説明させていただきます」
淡々と、責めるわけでもなく僕に伝えるアキシオンさんだよ。
少なくとも今はそんな事説明している場合じゃない事は理解しているみたい。
そっか、違ったっか。なんとなく僕も言ってておかしいなくらいには思ってたんだよ、良かった理解してない事を理解されて。
ともかく、だ。
じゃあもう八方塞がりって事?
でも、ダメだ、彼女達をこのままにしておくわけにはいかない。
でないと、みんな助からない。
いや、きっと彼女達、カズちゃんやシンメトリーさん、シリカさんに期待している人達は、いまだ異世界に残る事を願っているのかもしれないから、ここは見守って、って、でも言ったじゃん、すぐに壊れるか、ゆっくり壊れるかの差だって。
そんなのダメだ。
それは僕も許すわけにはいかないよ。
方法があるなら、助かろう、って言う意識は僕らの勝手な考えかたかもだけど、その辺についても助けてからゆっくり聞くよ。
少なくとも、異世界に残りたい人達って、みんな異世界を、自分たちの世界が好きなんだってのはわかるんだ。自分だって北海道がだよ、もし、今の異世界にみたいにどこかに落ちて行くって言うなら、僕だってそうかもしれないし、きっと青森くらいまでは逃げると思う。
マグロモニュメント本州最北端の碑までは行くかも。
つまりは逃げるよ、だって、そんなの誰も望まないから。きっと僕らを支える大地、だから僕にとっては北海道、彼女達にとっては異世界だって、そこで生活する人の滅亡なんて望んでない筈。
だからきっと、ここにはダンジョンがあるんだよ。
それはきっと、今カズちゃん達が、故郷の落下を止めようとする事じゃない筈なんだ。
でも、なあ、意識的にはわかるんだよなあ、故郷とか大事に思う気持ち。
大丈夫、そんなに悲しい顔しないで、僕がなんとかして見せるから。遥か彼方、上空にある彼女達の顔なんてもう見えないけど、僕は、僕に寄り添っている優しく諦めようとする、僕以外の感情の流れを止めてそう言った。
あ、引っ込んじゃった。
でも、まあいいや、残った心の形、残骸。もっと小さいかな。
その残滓みたいなものから、今、言葉を言わずにその心境を伝えた相手が、僕が知る誰かだって事を、終わってから知る。
だから余計に、最初の、出発点に立ち返る。
全ては僕と春夏さんだけの思惑だった。
正確に言うなら、始まりは春夏さんの問題で、悩みで、もっと簡単に単純に行くと思っていた。
落ちて来る異世界がさ、ドーンって来たら、春夏さんに貰ってる力と、僕の力、そして、今はアキシオンさんがあるからさ、バーンって、一撃で言った所を、異世界からこちらの応援(本人は気がついていなかったみたい)としてディアボロスくん。
この日の為に送られて来た、最後の最後で発揮される彼の力で、大団円って思ってた。
でも違ったんだ。
みんな、それぞれが立場があって、死滅する為に抵抗をやめない異世界の人達やら、未だ本意で北海道を支配できるって思ってる人もいて、その中に、カズちゃんやシリカさんシンメトリーさんみたいに、無茶を承知で盟約やら恩義やら、立場的に逃れられない人達がいて、困ったことに殉じようとさえする。