第66話【三柱を統合して世界を支える一柱へ】
3人の佐藤さん、カズちゃん、シリカさん、シンメトリーさんが合体(この場合神様だから合祀)した姿は、どこか3人に似て、そして3人の誰とも似ていないって、そんな感じがした。
いや、きっと大きすぎるからなのかもしれない。
ともかく彼女達は巨大だった。
今だ、札幌上空にある異世界に手を届かすのだから、雲よりも高くは大袈裟だけど、でも実際、その変にある低い雲よりもずっと高い。
そんな彼女達の手が今、出現した異世界の突端に向かって伸びよううとしている。ずいぶんゆっくりと見えるのは、大きくなってしまった所為なのか、それとも衝突に気を使っている所為なのか、そのどちらの様にも見えて、とても慎重に行動している様にも見えた。
「あくまでイメージですオーナー、あの姿は、このダンジョンと、異世界を連結する為の視覚的な物です、囚われないでください」
うん、ああ、とは言うものの、無理、それは無理だよアキシオンさん。
目の前であんなの展開されたら、意識は完全に持ってかれてしまうよ、もう、そんな風にしか感じられないし見れない。
ああ、そうじゃない、アキシオンさん、異世界を……!
「もうやってます、オーナーの意識通りです」
ああ、良かった。じゃあ、彼女達の手の衝突によって今、はみ出してる異世界も壊れないね。
ってホッとする。
「一撃で、あの異世界を壊すのではないのですか?」
ってアキシオンさんに突っ込まれるも、
「まだ、そのタイミングじゃないよ」
と言い返すと、
「そうですか」
とだけ、アキシオンさんは言った。
うん、そう、このままだと、札幌に被害出ちゃうし、それに彼が処理できる様にするには小分けにする必要があるから、やはり一撃で、って事にはなるんだよ。いや結果的には2撃くらいかな? まあ、そうなんだ。
多分だけど、物理的な意味では、春夏さんこの異世界の破壊を望んでいるんだけど、それは抹消とか抹殺とかの意味ではないんだ。ずっと一緒だからわかるよ。彼女はそんな事、望んではいない。
それができるかどうかわからないけど、でも、きっとみんないたらきっと良かったね、って思える結果になるから、ここで、カズちゃんやシリカさんシンメトリーさん達の、いかに故郷を思う気持ちがあるにしても、この離反を彼女は許さないと思うし、僕にそうして欲しいって考えてる筈なんだ。
なんでわかるかって?
だって、いつも一緒だからさ。
僕が、このダンジョンの前に、後ろに、横に、下に、そして今こうして上にいるから、ずっと彼女は寄り添ってる。
そんな事は疑い用のない事実で、たとえ、声が聞こえなくても姿なんて見えなくても、彼女はいる。
だって北海道ダンジョンだもの。
いるって思い込んでるとか、心の中にいるとか、いる様な気がするとかじゃないんだよ。
つまりさ、札幌には札幌駅があるでしょ? ああ、ちょっと自分で何言ってるんだろう? ってなるけど、そうとしか言えない。
だから僕には北海道ダンジョンがあるんだよ。
説明的には北海道ダンジョンに僕って方がわかりやすいかもだけど、意味的には前者の方なんだよ。
わかんないかな? ほら、だから、つまり市電だと電停があるでしょ?
「オーナー? 大丈夫ですか?」
ってアキシオンさんに言われる。いつも無機質なアキシオンさんに心配そうに言われる。
まあ、いいや。
説明できない僕の事情は今は良くて、問題は人の話も聞かなくなった彼女達をどう止めるかってことになってる。
だから、なんでもできるアキシオンさんに尋ねてみた。
「どうにかならないの?」
もう、声も届かない。あの姿じゃ僕らが触ることすらできない。
いまだに大きくなって行く三柱神化して、統合した一柱の彼女達は、その姿が透けてゆく様に希薄になって行く。もう、ほとんど周りの色と透過して、その輪郭だけが残ってる感じだ。
触ることすらできない彼女達を見て、最悪な気分を味わっている僕にアキシオンさんは言うんだ。もう、いともあっさりと言うんだ。
「なりますよ」
ええ?! なんだ、できるんじゃん。