第63話【最強者、神である義務】
僕の前、3人、いや三柱を代表してそんな事を言い出して来たカズちゃんが、
「なあ、アッキー、もう私たちは敵だからな、遠慮はいらないぞ」
とか言い出す。
ええ? しかも戦いとか始まってしまうのかなあ、って考えたら憂鬱になるよ。
って迷う僕の前に、葉山と蒼さんが出る。
「いや、いいよ、もうそんな問題じゃないから」
と言って二人の気持ちを受け取って、引っ込んでもらう。
するとシンメトリーさんが後ろから、
「私たちは、それぞれが命であり理であり、世界なのだから、戦いとなれば規模もばかにならんぞ、放っておけば良い、もうここには関係のない物となるのだからな」
って言う。
「そうです! スッと行かせなさい、それがピュアゼリーでありマルセイユバターな、極めてタイムズスクエアな結論なのです」
とシリカさん。
自分の大好物、北海道銘菓を並べ立てるってことは、彼女達の出している案がどちらにとっても最上の落としどころって考えているみたい。つまりは結論であり極論って事だから反対するなって事……。ああ、シリカさんの思考とか読める様になってる自分に喜べない。
「ああ、ロイズの生チョコ入れるの忘れました」
とか言ってる。その後、「白い恋人もです」ってエッヘンって顔してた。
まあ、そうだね、それに『わかさいも本舗』とか、『三方六』とか加えておくと良かったかもしれないね。
え? ああ、そうかスノーマンもあったね、春夏さん好きだもんね、後、月寒アンパンとかも。
今はそう言う話をしている時ではない事を思い出して、
「ともかくダメだよ、みんなを行かす事はできないよ」
と僕は言った。
「なあ、狂王、聞いてくれ、少しでも、あちら側に大地を残すことができれば、それなりに世界は存続できる、混ざる事に異を唱える者はまだいるんだ、その者達と共に、再び向こう側に帰る事ができればいい、だからここは放って置いてくれないだろうか?」
うん、わかってる。
「帰ってどうするのさ?」
僕は問いただす。割と強い口調になってしまう。本当に焦ってる感じ。でも仕方ない。彼女達を止めないとだよ。
「向こうで生活するさ、いいだろ? 生まれたところに帰るだけだ」
とシンメトリーさん。僕はこの時、彼女の視線を、あっていた視線を何気なく外す彼女のそのしぐさに、この言葉は嘘ってわかる。こうして繋がってる思考を、流れ混んで来る情報を精査しなくても、これはわかる。
「嘘だ」
僕はたった一言だけ言う。
そして、その後、その言葉にある嘘の裏側にある冷たく動かし難い現実を理解して、
「どっちにしても、もう、私達の世界は滅ぶんだよ、ただ、それが今の速度で壊れて行くか、それとももっとゆっくり壊れて行くかの違いでしかない」
と僕は言った。
もちろん、言っててアレ?ってなる。異世界を『僕の世界』って言い方をするのは、これは僕の意識じゃなくて、これは彼女?。
だいぶ思考は奪われて、僕の意見じゃないけど、まあ僕もそう思うよね。でなければ、春夏さんが『一撃で世界を滅ぼして』なんて言わないもの。
つまりは、今、ここにいる真の三柱神が言っている事なんで、耳さわりの良い言葉を使ってるだけの自殺への遺言に過ぎない。 もちろん、僕も同意見だよ、いや、誰のって?
そりゃあもちろん、僕にこうして情報を入れて来る……、あれ誰だ? あ、僕が気がついたと悟って隠れたみたい。
もちろん、頭の中に入り込まれても尚、嫌な気分ではなかったから、その正体はわかってるつもりだけど、その辺、うまく散らされてる。決定させないつもりだ。
ああ、もう!
って苛立ちが顔に出てるのを僕はカズちゃんに見られて、
「まあ、そんなに怒るなよ」
って言われる。
そっちじゃないよ、それでも少し怒ってる風てはある、もう!って言う風にはなる。
でも、カズちゃんはそっちもわかってるみたいで、
「あ、悪りぃい、邪魔したか?」
っていつもの笑顔になるかっら、
「僕側から意識できませんし、それはいいです」
って断っておいてから、
「本気なんですか?」
って聞いたら、
「まあ、な、北海道にも縁はあったがあっちには恩があるんだよ」
って言い方をする。