第62話【異世界に奉仕する三柱の々】
まあ、葉山の方は放っって置いて話は戻すけど、つまり、ダンジョン内でギルドで僕らを含めて全ダンジョンウォーカーに頼りにされていた、彼女達は、まさかのスパイ的な人って事でいいのかな?
「でも、私を全力で助けてくれたから」
と葉山は言う。確かにその通りだと思う。
あの時は、春夏さんの力が全てだとは思うけど、彼女たち、特にカズちゃんの働きやらシリカさんの手助けって大きかったと思う。
きっとやれることは全部してくれたし、それに、この北海道ダンジョンの安全と安心を守るギルドにあって、その骨幹にいたのは間違えなく、スキルを越えた能力を持つ彼女たちだってのは僕も理解している。
だから、ああそうか、ってちょっと悲しい気分になる。
つまりは、もう、そんな安全も安心も必要のない段階に入っている。
北海道ダンジョンの終わりを暗示しているからこその告白だったんだ。
この異世界落下によって、北海道ダンジョンは幕を閉じようとしている。
彼女達はもう、その役目を果たしてしまったと、そう僕に告げているんだ。
「そんな顔すんなよ、これから世界は均整の取れた正しい世界に戻るんだ、今までがアンシンメトリーだったんだよ」
といつに無く優しい口調で少しばかり離れた位置でシンメトリーさんが僕に告げる。
「今度はさ、故郷を守らせてくれよ、最後のわがままだ、もう真希にも断ってる、一応、狂王にもその意向は伝えておけって言われてるからな、言ったぞ、問うていないからな、もう決定事項だ」
とカズちゃんはそんな言い方をする。
「どうするんですか?」
と僕の代わりに葉山が尋ねる。
すると、
「ここ北海道を大地にして、今、顕になっている異世界を押し戻す」
ってカズちゃんは力強く言う。
その言葉に、僕は思考を介さずに答えるんだ。
「無理です」
と言う。言ってて驚く。いやだって僕がそんな事知る筈ないからさ、なんでこんなにも力強く言えるのか、ってそう思ったんだ。
すると、
「でも、やるんだ、それが盟約であり、ここまで好き勝手にお前達に付き合えたことに対するあちら側への礼、だから責任みたいな物だからな」
と言い出す。
その顔は、少し寂しそうに、でもそれは納得しているみたいな言い方だ。
ダンジョンの中にいる人で、今更言うのもなんだけど、カズちゃんは多分、大人だ。
その大人の考え方ってのはちょっとめんどくさいなあ、って思う。
もう壊れてなくなる世界に対して返礼とか落とし前とか、そんな事考えなくてもいいじゃんって思うんだよ。
でも義理を果たす的な、そんな考え方にちょっと僕は、怒ってるんだと思う。
この時も僕は、彼女達、佐藤和子を名乗る、三柱神の神様達が、その後どうなるかの情報がある。思って、的確に想像できる。
おかしいと思うのは、今までこんな情報は僕の頭の中になかったってこと。だから、これらの情報は今、僕の知ってる誰かが僕にリアルタイムで伝えて来ていると言うこと。
だからこの行動、カズちゃん、シリカさん、シンメトリーさんを止めて欲しいって、そういう事だと思ったんだ。
大丈夫、わかってる、僕は絶対に彼女達を失う様なことはしないよ。
この世界にある、ここにいて、北海道ダンジョンを支えてくれた人達だから、あえて神様なんて言い方はしたくない。
かつては葉山を助けてくれて、このダンジョン内外の子供達を絶対に守って、見せなくていいところは優しく包み隠して、まるで血を通わす様にダンジョンの隅々まで気持ちを巡らせて守ってくれてた恩人だもの。
そして、真希さんが僕に内容を告げる様に言ったのも、それはきっとこれから彼女達がしようとするであろう事を全力で止めて欲しいって事だと、その辺も大体わかって来てるからね。
決して揺るがない思い。
そんな決意というか、覚悟が彼女達からは伝わって来ている。
そして、あちら側の法則にのっとれば、僕の目の前に立つ、自分を敵だと名乗る彼女達は異世界での最高ランク、こちらでいうところの全国苗字ランキング1位。
『佐藤』の名前を持つ者達な訳だ。
だから、異世界最強者なんだよ。