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第120話【勘違いに人違いに、訂正される僕の認識不足】

 烽介さん、って元気いっぱいな感じだね。


 下がって距離を取ろうとする時も、どっか陽気に見えるよ、笑う顔とかひきつってるな、ちょっと困った顔にも見えるけど、足元とか、こんな隙だらけで後方へ下がってるのは、きっとそんな踊りなんだろうな、って思う。


 忍者な人ってみんなこんなかんじなのかな?


 本当に、1ミリも忍んでない。


 まるで、こっち来んな! 的にぶんぶんと忍者刀を振り回してくるから、まずは手始めに、ひとまず、打ち合いに誘ってみた。


 言ってみれば、僕の家でやる、剣を使ったリズムゲームみたいなものかな? 音楽は無いけど、乗ってくると、体の芯まで剣撃の音が響くよ。いいリズムでね。


 最近は、僕から積極的にしてるけど、以前は母さんからしか仕掛けられなかった、いわゆる遊びみたいに、自分と相手の打点の取り合をするんだ。


 お互いの距離の中心点から少しでも相手側に入れた方がポイントになる。


 ちなみに、今の所、僕は未だに母さんに、これを勝ててない。


 かなり食い込んだな、ってところでも、概ね、千から2千は多めに撃ち込まれてる。


 同じモーションで、同じ速度で打ち合ってる筈なんだけど、まるで勝てないんだよなあ。


 速度も力もそれほどの違いはないはずなのに、必ずって言っていいほど、僕の陣地へ押し込まれる。


 速さにこだわると、力で、力で押そうとすると速さでやりこまれる。何が違うのかな? って思う今はそこが自分の課題だって思ってる。


 じゃあ、はじめようかな。


 なんて思ったら、 烽介さんあんなところにいるし……。


 いやいや、あなたは知人距離で戦う人じゃないでしょ?


 何を警戒してるんだろ?


 仕方なく、僕は烽介さんと距離を縮めようと、歩いて行くんだけど、その分、烽介さんは距離を取ろうとするんだよね。


 「な、なんなんだ? お前は?」


 とか言っちゃてるし。


 だから、あなたの言う通り、普通の浅階層のダンジョンウォーカーだよ、さっき言ったじゃん。


 仕方なく、一気に距離を縮める。


 互いの間合いに入る。


 で、そのまま、相手のエリアに剣を振り入れてみる。


 僕と烽介さんの剣は、たった147回しか出会う事がなかった。


 浅くしか入れてないのに、体ごと持っていかれてる感じ。


 暇なときに家のドラム式洗濯機の中の洗濯物を見てる気分かな。どうしたんだろ?

 

 烽介さんが体が温まってないかもって思うからさ、そこは、手を抜いてってか気を遣って、いつもの10分の1もない速度で対応したんだけど、千回以上、僕のマテリアルブレードは互いの中心点から烽介さんのエリアに入ってるから、僕の勝ちになってしまう。


 いやあ、まだ、このマテリアルブレードの切れ味に警戒されてるのかなあ……、それとも自慢の忍者刀を削いでしまったからショックだったのだろうか? 烽介さん……。


 そりゃあちょっとは傷つてけてすまないなあ、とは思うけどさ、でも、北海道ダンジョンで、しかも深階層で、争いの中に身を置いていたら、武具の優劣なんて、よくある問題じゃあないのかな?


 それとも、絶対の自信があった事?


 烽介さんが何を考えているかよくわからないや。


 困ったな、戦いが、闘争が成り立たない。


 ちょっと途方に暮れてると、再び距離を置いた烽介さんが、急に、喋り出す。なんかね、もう、顔というか、その目がさ、喜びに満ち溢れている。で、言った言葉が、


 「そうか! わかったぞ、お前の正体がな!」


 なんて頓珍漢なことを言いだす。


 何? 正体って?


 って思ったらか、黙って聞いてる僕なんだけど、烽介さんは僕を指差し、じゃなかった剣で指して言うんだ。


 もうね、犯人はお前だ! くらいの勢いだよ。


 「お前、葉山だろ! 葉山 茉薙(はやま  まち)、そうだな!」


 葉山って苗字を聞いてびっくりしたけど、知り合いか? って思って驚いたけど、名前まで聞いて、なんだ人違かよ、って思っちゃった。


 葉山って苗字もあんまり聞かないけど、そうか、別人か……。


 その時、僕は予感めいたものがあったんだよ。


 だって、その苗字は同じで、名前まで聞いたら別の人の名を、知らない名前を言われて尚、僕の脳裏には、あの委員長、葉山静流さんが思い浮かんでしまったから。


 いいや、違う、絶対に無い。って、僕は心のどこかでそう思い込もうとしていたのかもしれない。


 まるで、ダンジョン全体から、この世界を見ている様な視点がさ、僕にその事実を告げるんだよ。


 おかしいよね?


 僕は、その葉山 茉薙については何も知らないんだ。


 なのに、それを知る必要がないって、まるで、ちょっと前に春夏さんが僕を葉山さんに近づけたくない様な、そんな感覚に襲われる。


 だから、ちょっと、そのことについて、僕は思考を手放した。


 あ、元に戻った。


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