第52話【魔王として、星に襲われる】
きっと無理を言ってるんだろうなあ、って容易に想像がつくよ。
どこ行くんだろ?
「すまん、真壁氏、私の配置には他の者を当てておいた、ちょっとこいつのわがままに付き合って来る」
と言い残していた。
なんか、いつもと言うか日頃から思う事だけど、麻生さんって、大変だよなあ、て思ってた。
真希さんっていい意味で自由な人だからさ、それに付き合える人って、麻生さんくらいしかいないよなあ、って思うんだよ。
あ、それなら、今、北広島は母さん一人か……、ま、いいか。
特に窮地に陥る母さんを想像できなくて、こっちの方はこれ以上考えなくて良い方向になる。
母さんの近くに薫子さんが指揮するギルド分隊がうろうろしてるし、何かあったら、いの一番に声がかかるだろうとは思う。
そんな思いに駆られている僕に、急に誰かが言葉をかけて来る、割と遠くから、ダンジョンの入り口あたりから、
「真壁ー! 、ちょっと行って来る!」
と言うのは水島くんだった。紺さんも一緒にいて、その後ろにはどこかで見た人物が彼らと一緒にいる。
あれ、確か……
と思い出しの努力をしていると、
「海賀商事の本部にいた悪魔の『木村』さんでしょ」
と葉山に言われて、ああ。ってなる。
なんで、彼らが、木村さんと一緒に? って思ってると、
「この木村さんの家族が、こっちに来てから行方不明になってしまってるんです」
と紺さんが遠くから答えてくれた。
ああ、そうか、木村さん家族がいるって言ってたもんなあ、って思って、彼らを見つめていると、
「大丈夫だ、真壁、俺たち騙されて無いからな!」
って水島くんはこっちに向かってそんな事を言って来る。
ちょっと笑ってしまった。
いや、そうだよね、普通、悪魔な人と一緒にいる時点でそういう発想はあるよね、って思いつつ、そんな事もないだろうって確信を持ってる僕もまた、こんな日常に、木村さんの様な人物に慣れてしまっているんだなあ、って改めて実感する。
で、木村さん本人は、
「虜囚となるも、家族仲良くなりたいのです、お許しいただけませんか? 北海道魔王殿下」
と言って来るから、なんで僕の許可待ちなんだろう? って思いつつも、そのまま彼らに手を振ると、彼らも手を振替して、創生川方面に仲良く歩いて行った。
なんか安心してると、なんか頭上の方から、
「北海道魔王! 我は……」
と襲いかかって来る、変な星形の魔物が、葉山にぶっ飛ばされていた。
「クッ、出遅れた」
って、蒼さんが対抗意識を燃やしつつも、
「お怪我は?」
って聞いて来るから、
「大丈夫だよ」
と言ってから、葉山も名乗るくらい名乗らせてやれば良いのにと、そのまま地面に墜落した星型の魔物を見ると、何かいいたげに、大きな7つの目でこっち見てるから、
「名前を聞いておくよ」
って言ったら、
「星」
と一言呟いて、満足そうに事切れた。と言うか気絶した。
なるほど、名は体を表すって奴だね。
続いて、ギルドの人達が来て、「どれが手でどれが足だろう? 頭はどれだ?」と言う論争を巻き起こして、そのまま担架に乗せて休憩場に運んで行った。
ちょいちょい、こっち直接来るなあ、って思いつつ、もちろん願ったり叶ったりな訳で、その辺は良いかと思いつつ、未だ、空の上で出るに出られなくなってる異世界を見つめながら、アキシオンさんに、
「こっちから干渉できないのかなあ、本当はできるんでしょ?」
って尋ねると、アキシオンさんは何も言ってくれなかった。
異世界は、まだ落ちかけているけど、未だ落ちてこない。
こっちの秘密兵器を恐れているんだろうか?
と言うか、それが目的で、彼がこっちにいるって踏んでるんだけどなあ。
ともかく、僕は空を見上げて、滞る異世界に、ある意味諦めと、次の段階に進めない苛立ちと、どこか安心感を持って見上げていた。