第50話【未だ脱し切れない異世界は大通り公園の空の上】
僕はつまり、じっと見ていた。
特に偉そうなつもりもないけどさ、腕組みして、風が吹き荒ぶこの大通公園、4丁目ゲートを背にして、ほぼほぼ駅前通り付近で、大きくなった黒点の様な異世界の大地を見つめていたんだ。
なんか、なかなか動かないなあ。
空に穿つ穴から、まるで絞り出されるみたいに出て来た異世界なんだけど、きっとまだ半分も出てない気がする。どうも引っかかってる気がする。
「ねえ、アキシオンさん、もうちょっと穴大きくできないかな?」
僕は自分の剣、脇に挟んで保持しているアキシオンさんにそんな風に聞いてみた。
ここは4丁目ゲート前で、僕は仁王立して、空から出現している異世界を見つめてそんな風に思わず声に出して聞いてしまう。
もう、大っきい独り言みたいになってる。
いつもの格好にマスクに防塵メガネをして、ジッと空に出現した未だ中途半端にしか出てこない異世界の大地を見ていた。
確かに、ここ北海道に異世界は落ちて来るって話は聞いてたけど、まさか、出口、こっちから見たら入り口が小さくで、引っかかってしまうなんて予想だにしてなかったからなあ。
もっと直ぐにドスンと来るもんだと思ってたから、なんか拍子抜けしてしまう僕だよ。
ちなみに、このマスクも防塵メガネも葉山が僕に勝手につけて行った。
どうも、この異世界の排出仕切れないで引っかかっているところから発生する土と言うか鉱物なんかの微粒子が空に粉塵として舞い上がって、呼吸器官やら目に非常に悪いらしい。
ちなみにこの簡易なマスクだけど、アスベストにも対応しているらしいから、信頼性もある。
で、僕として、もっとサクッと行くと思ってたから、出口が小さくて、こちらから見ると入り口が小さくて困ってるなら、こっちから入り口大きくしてあげようかな、なんて思ってるんだよ。
「こちら側なら干渉できますが、あちら側だと管轄外ですね」
とかアキシオンさんが言い出してる。どうやら、素粒子も各異世界によって受け持ちが違う様だ。
「じゃあ、待ってるしか無いのかな?」
すると、アキシオンさん、
「いえ、もう既にこちらに現れている部分については干渉可能なので、今出現してる箇所から、突っ込んで行って攪拌するなら、異世界側にわずかに残っと大陸の切れ端など木っ端微塵ですよ」
とか怖い事を言い出す。
「え? じゃあ、あっちに残ってる人はどうなるのさ?」
「さあ、そちらの世界はそちらの世界の理なので、私には確定して申し上げることはできません、しかし想像ならできます」
「言ってみて」
「オーナーはこの今この中空に浮かぶ大地が崩壊してしまったらこの地に立つものはどうなるか、想像できませんか?」
とか言ってくるから、
「そりゃあ、もう、酷いことになるだろうね」
と言い返すと、
「では、その様になるのでは無いでしょうか」
とか言ってくるから、
「じゃあダメじゃん」
そしたらアキシオンさんは、
「では待つのが最良という事ですね」
って言う。誘導されたみたいに言う。
「そっか、じゃあ、待つしか無いのかあ……」
と言う。てか、仕方なく納得する。
まあ、今もこうして飛び出してる先端からいろんな人たちが降りて来てるから、このくらいの速度の方が対応しやすくていいのか、とや思うんだよね。
今の所特に攻められてる所もないし、窮地に陥ってるところもないしね。
偽装な本拠地な藻岩山展望台はあちら側の魔物によって占拠されてしまったみたいだけど、言い方を変えいると、唯一、集団戦を行おうとしていた勢力は、藻岩山展望台に貼り付けることに成功している訳だし、皆さんそのまま、札幌の街を、その雄大な夜景を見てみるといいよ。
白馬さんの話だと、降りてくる魔物の皆さんに対しては包囲網はすでに完成されているらしいし、あとは強力だけど、それなりに強い魔物に関しては大部分を母さんと真希さんがちぎっては投げ、してくれたから、それ以外の戦力にはみんな対応できてるみたいだし、このまま収束する気配も見え始めた。