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第119話【こうして僕のダンジョン最適化は始まる】


 意外だったのは烽介さんの反応が遅かった事。僕を目で追えて無いなあ。って、それがわかる。


 だって、剣を振る、いやこの距離なら恋人距離より拳一個多めくらいだから斬るっていより巻きつける感覚だからさ、その回転のための荷重を足にのせるための一瞬の停止でようやく僕を見つけたって感じだったから。


 僕のマテリアルブレードのが、烽介さんの剣に当たるその瞬間に、この人、勘がいいみたいで、そのまま受けなかった。その、高価な刀の後ろにいる烽介さんは、そのまま体を剃る様にそらして、自分の体をかろうじて、僕の振る刃から逃して、さらに刀でその起動を逸らそうとしたんだけど、僕もその時、しまったって思ったんだよ。


 いや、何がって、本来、浅い角度で当たって、どのまま流されるであろう、僕のマテリアルブレードがさ、そのままの勢いで、軌道がそれる事なく進むんだ。


 つまり、その浅い角度のまま、僕の剣は、彼の刀を剃るみたいに斬り始めたんだ。


 つまりナイフで鉛筆 を削るみたいに、一枚、この場合、刀の歯を、針金よりも細く、長く切断してしまった。


 おお……。


 なんなんだ? この剣。


 ちょっとおかしい、確かに切れ味は気分屋的なところがあったけど、ここまで鋭くなっているのって今回が初めてだ。


 今、僕、ほとんど手応えを感じなかった。切り分けられた細い刀身の一部だから、気がつかないかもだけど、ほとんど縦に入ってそのまま刀の刃の中を進んでいるってことはさ、最も硬い部分をあの厚さで斬ってるってことだから、それって、その厚さの金属を両断してるってことに他ならない筈なんだ。


 まるで、空間そのものを斬ってる感覚ってのかな?


 もちろん、そんな手応えは今までかつて経験したことがないから、自分でしたことだけど、意味不明な怖さがある。


 なんでこんなに急に切れ味が増したんだろう?


 いや、まさかな……、もしかして、烽介さんにナマクラ呼ばわりしたのを怒ってる?


 それじゃあ、この剣は感情とか思考があって、さらに自分の好き怒りで切れ味とか調整できるってことになるじゃん。生きてる剣? って事??


 そのまま烽介さん、背をそらしてバック宙みたいに後方にセットバックして距離を開ける。凄い、忍者みたいだ。


 そして見開かれた目は、僕、と言うより僕の手の中にあるマテリアルブレードを見据えたまま、唖然とした口が開く。


 「お前、なんだ、その剣、なんだ、今の動き??」


 動きに関しては普通だよ。でもまあ、この剣に関して言うならその驚きは僕も一緒だよ。


 なんなんだ? この剣?


 この切れ味を保持するのって、かなり危険な気がする。


 だから、仕方なく、やってみる。


 「キレないで、僕は誰も殺したく無いし、誰も死なせたくは無い」


 僕はマテリアルブレードを見る事なく、烽介さんを見据えたまま呟く。本当に勘弁して欲しい。対モンスター戦ならともかくとして、対人戦に置いて、僕は相手の即死なんて望んでないから。


 その為に、僕は一年間、ダンジョンに入れなかったんだから、その辺の手加減とか上手にできる様になってる筈だから。その努力を無駄になんてしたくはない。


 一瞬、僕の頭、いや、その鼻先に血の匂いは漂う。


 わかってる。


 これは現実のモノじゃない。


 ちょと前の記憶だよ。


 一年前か、だから結構前かもしれないけど、忘れられる様なものではないよ。


 あの時、失敗して、間違えて、母さんと一緒に、家を壊してしまった時の記憶だ。


 だからあの真っ赤な血塗れの手と匂を僕は思い出してしまったんだ。


 未だ整理できてない、その感情のまま、僕は右で剣を振り下ろして、自分の左手を斬って見た。さっきと同じ速度で、そのままの切れ味なら僕の手が手首から無くなるくらいの勢いで感覚。


 バシンと、僕のマテリアルブレードは、僕の手首を叩いて、そのまま弾かれた。


 普通に、皮膚一枚くらいは向けるかな? って覚悟はしてたけど、毛ほどの傷もついてなくて、それもびっくりした。衝撃はあったのに、痛みもないし。


 この当たりで行こう、って僕は僕と剣に言い聞かす。これでいいから、本当に余計なことはしないで、って何度も念を押す様に心に思い描く。


 それにしても、こいつ、人選んで切れ味を出してるのか?


 冴木さん、最先端の『現代剣』って言ってたけど、AIでも入ってるんだろうか?


 今度、機会があったら聞いてみようと思う。


 まあ、今はいいや。


 とりあえず、形の上では、これで、僕にとっても、烽介さんにとっても安全な剣になったから、仕切り直して行くよ。


 じゃあ、勝負再開だね。


 


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