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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆終章 異世界落下編◆
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第45話【創生川での二人、いつまでも二人】

 「安心して、でも、もう抵抗しないで、今、あなた達の仲間のいるところに、『休憩所』に案内るするから、そこで大人しく待ってて」


 とまだ、意識のある太田に対して、奏は告げる。


 すると太田は、


 「娘もそこにいるのか!」


 と満身創痍な体を起こして、奏に詰め寄る。


 そこで奏は納得する、だからこの魔物、太田は諦めずに抵抗を続けていたのだと。


 他の例だと、こちらの戦力が上だと知ると、ここまで抵抗もしないで、諦めて投降してくれるし、極端な例だと『殺してくれ』と懇願されるが、この太田はどの例にも漏れて、そうではなかった、娘の為に必死だったのだ。


 「娘さんがいるの? どうしたの? 迷子?」


 立て続けに聞くと、太田を名乗る魔物はパニックになる様に、頭を振って黙り込む。


 だから、それをフォローする様に鴨月が、


 「大丈夫、力になるよ、だから探そう、娘さんを最後に見たのはどこかな?」


 とその女性型の魔物に優しく語りかける。


 彼らはギルドに連絡を入れて、彼女の娘が『休憩所』にいない事を確認すると、


 人型とか言え、自分達の倍程度ある太田に、


 「一緒に探そう、他に散ってる人たちにも連絡を回してもらうから、大丈夫、安心して、僕らは僕らの魔王様に、敵対しない人は守ように言われているからね、まずはその娘さんと逸れた場所に言って見ましょう」


 鴨月が告げると、太田は頷き、創生川の方面を指差した。


 そして、このススキのスクランブル交差点にギルドから交代要員を呼んで、申し送りをしてから創生川に向かって歩き出す。


 彼女のはぐれたと言う娘さんの情報を聞きながら、急に何かを思いついた様に、ハッとする奏、横にいた鴨月もつられて驚いてしまう。


 「ど、どうしたの? 相馬さん?」


 「あ、鴨月! 私忘れてた!」


 とか言い出し、


 「私、これが終わったら留学するんだった!」


 これと言うのは今の状況で、異世界落下の結末がついたらの話らしい。


 「ほら、道央大会で優勝したじゃない、その時に、本場の審査員さんに目をつけられたみたいなんだ、競技ダンスを本格的に、インターナショナルスクールでスローワルツを本格的に取り組んでみませんか? って言われたの、ドイツだって」


 そして、急にそんな話を振られて、思いがけずのお別れ宣言に、ショックと言うか衝撃を隠せない鴨月である。


 でも、彼女が決めた事だから、と、そこは気持ちを持ち直して、なんとか笑顔で奏に告げる。


 「そうなんだね、良かったね、きっと相馬さんの本気が認められたんだよ、頑張らないとね」


 と、そう告げながら、心のどこかに大きな斬撃を喰らった様なそんな心情な鴨月に対して、


 「え? 何言ってるの? 鴨月も一緒だよ、もう留学の手続きとかもしてあるから、ほら、一人やるもの二人やるのも一緒だからさ、もう済ませてあるし、先生とかにも話てあるよ」


 常時、奏の思考に、たとえ1ミリだって鴨月が断るという選択肢は存在していない。


 その瞬間、一瞬だけど、鴨月から表情がなくなったので、その陰りを見つけてしまった奏は、


 「大丈夫だよ、まだ時間もあるし、準備はゆっくりできるから、時間がなければ私も手伝うし」


 と慌てて言う奏に対して、『そこじゃないよなあ……』って思いつつも、


 「うん、そうなんだね、ありがとう」


 と言う鴨月である。


 天真爛漫という巨大なハンマーに心を砕かれたイメージの鴨月であった。


 もう、自分がどういう表情をしていいかわからない。


 そんな鴨月に、


 「ほら、ドイツ楽しみかもだけど、今は太田さんの娘を探してあげないとだめだよ」


 と浮き足立つその歩みを見て注意される。


 そして、


 「まあ、これからもずっと一緒なんだし、今までも一緒だったし、よろしく頼むね、あ、でも嫌なところがあったら嫌って言ってね、私、そう言うのわからないからさ」


 と言う奏は鴨月の背中をバンバンと叩く。


 そこには照れも、戸惑いも、まして虚栄などもあるはずもなく、いつもの奏の顔をして、ただ、気持ち的に追い詰められている様な気分になって来るのは鴨月の方であった。


 それでも、常に一緒にいる奏の笑顔は綺麗だな、と、やっぱり凄い美人、大人っぽいけど子供っぽいところもあって、特に笑顔は素敵だな、とそんな事を考えてしまう鴨月であった。


 そして、彼等はいつものダンジョンと同じく、頼れるお姉さん、お兄さんとして、迷子に泣くお母さんを連れだって探索を開始するのであった。

 

  

 

 

 


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