第40話【お門違いの白馬の打診】
キリカと真々地。
一目惚れとは違うと思うが、自分を守ってくれる、しかも体を張っての命がけとくれば、そんな男の子にはキュンと来ちゃうよね、
キリカちゃんくらい強い魔物でハイエイシェントなら尚更だよね。と、その事は納得の三爪である。
これからは全力で応援しようと、キリカ達を映すモニタを見ていると、
「心配か?」
と、白馬が聞いてくるので、ちょっとムッとする三爪であった。
この人はいつもそうだ。
いつも私の考えている事に対して、思いやりからなのだろうけどちょっとズレた事を言ってくる。
少なくとも三爪はキリカの心配はしていない。むしろ、よかった、くらいに思っているのであるが、その根本がわかっていないので、その周りを大雑把に掬いあげて適当な事を言ってくる。
いや、確かに心配もしているかもしれない。
白馬の一言で、そう思わされるのも何か嫌な三爪でもあった。
なんか、こう、そうも考えていたのではないかって、惑わされている気分にもなるのである。
だから自分としてはキリカを心配している訳ではなくて、その辺の誤解というか勘違いを解いておこうとする際に、
何かを言おうとするも、先に、
「すまん、いらんお世話か?」
とか言われるのも腹が立つ。
この白馬はいつもそうだった。
彼と初めてあったのが、三爪が小学校を卒業して、自衛隊少年工科学校での事だ。
彼らは皆、自衛官として、年齢としては小学校を卒業してから、志願して自衛隊青少年学校に集められる。
そこには、全国から集まる、いずれこの国に国防の主幹を担うであろう子供達が集められている。
しかし、三爪は以前から、それらの国防意識、そして体力やその他付随する数値は軒並み下がっていると、多紫出身の、この自衛隊学校の教官を務める者の、嘆きを昔から良く聞いていた。
本来であれば、どの様なコースを辿ろうと、多紫町の者が防衛省に入るのは容易い。特に自衛官を目指すなら最初から幹部としての採用になる。
しかし、そんな愚痴みたいな内容を聞いていた三爪は、どうせ中学生になると同時に、この町から出るのだからと、その自衛隊学校に入る事にした。
最初は、ほんの好奇心で、そして、男気のある三爪は機会があるなら、その学校自体を叩き直してやろうとも、当時、だいぶ武闘派だった三爪はそう考えていた。
もちろん、自衛隊側としては、多紫の、しかも一桁姓の三爪の入学は願ったり叶ったりであった。
双方の希望として、鳴り物入りで入学、もちろん他の生徒には知らせてはいない。あくまで一般人としての入学。
そして三爪は、入学後に驚く。
何にって、もう、他の生徒のあまりの脆さにびっくりしていた。
もちろん、それは子供の頃から物心つく前から、戦闘が日常として育てられる多紫の人間と、多少は体力のある将来の自衛隊を担って行くとはいえ、一般の人間とでは、もう人としての作りそのものが違う。
彼らの必死に合わせて、上手に手を抜かないと、本気で怪我をさせてしまう。
もちろん話には聞いていた三爪ではあるが、その現実を目の当たりにして、愕然とショックを受けてしまったのを忘れる事はできない。
そして鍛え直そうににも、根本が異なっているのだから、三爪一人の力では無理であり、以前、三爪の前で愚痴を溢していた多紫町の出身者はの気持ちがわかる、と言うか実感してしまう。どうして愚痴だったのか、それはもう対処の仕様のない事であり、その不満は多紫町の出身であるが故の不満である事に気がついたのである。
もちろん、中学生から自衛隊に入れる子供達は、世間一般ではトップクラスの子供達なのは間違いない。しかし、だからと言って、童子の頃から刃物を持って鍛えあげられてる多紫の子供達は比べるまでもなく、自衛隊学校の子供達は普通なのである。
それを知った時、知った時から、三爪のフラストレーションは溜まり続ける。