第31話【吸血鬼とサムライ】
それでも人数的には少ないものの、キリカと真々地の二人きりというのはそれなりの戦力でもある。だからそんな強い人間と吸血鬼が守っている、ここは重要だと思わせる事に意義がある。
つまり、これは一種の囮であり、ここを重要拠点と思い込んでいる異世界の特に征服側の勢力が、積極果敢に四方八方からやって来てる。唯一手を抜けるのは、定山渓方面にはあの、怒羅欣がいて、そちらから藻岩山に入って来る魔物は皆無だ。
しかし、だからと言って、攻めて来る数は相当数になっていて、真壁秋からは、手に負えなくなったら、陥落を演じて逃げて欲しいと言うお達しが出ている。
そこで、陸戦ではかなりの実力者な真々地と、殺しても死なないキリカが空を飛べると言う脱出する上での利点から選出された。もちろん強力な二人故、そのチームワークなど度外視である。
登って来るのは数の多いゴブリン、オーク、そしてそれに混ざる様に、人型のデーモン、おそらくそれが小分隊を預かって、ここを攻めて来てる。
ちなみに、この『藻岩山拠点説』は、あの海賀商事にいた、異世界でも位の高い木村なる悪魔にワザとリークさせて、流したものであり、情報と地理的条件から、ここが北海道にとって重要拠点と信じて疑わない異世界勢は必死にせめて来ている。
繰り返すがもちろん、そんな事実は無い。
だからと言って、藻岩山展望台が大切じゃない訳もない。
札幌の市街地からも路面電車(内回だから、外回に乗ると遠回りになるけど、ススキのの夜景を見ながらならいいかもしれないけど、たまに走ってる『図書館行』乗ってしまうと、2駅前で下ろされちゃうから!)アクセスも楽チンでしかも、北海道のお土産をほぼ網羅できる展望台のお土産屋さんとか、ロープウェイからは札幌の夜景は最高だし、身軽な格好でロープウェイ停留所から向かう展望台までの階段もそりゃあもう楽しいよ、世界初のミニケーブルカー『もーりすカー』で展望台まで行ける、そんな藻岩山展望台を含み、しつこう様だけど、新日本三大夜景にもんなってる、そして自然としても原生林的にも指定されている、札幌市にあって、アクセスも簡単な(大事な事だから二回書きました)藻岩山が大事ではないなんて事はないのでその辺の勘違いはしないでほしい。
ともかく、そんな感じて、直接市街地への戦力を分散させる囮になっている真々地とキリカである。
それ相応の力を持って上がって来る相手に、展望台を中心に全方向からの防衛をたった二人で行うものの、全くその防衛力に陰りが見えない。
だからこそ、相手もここが重要拠点だと、ますます信じると言うドツボにハマっているのである。
そして、そんな中、キリカは、この周りの敵の数を把握して、倒した数を計算しつつ、この偽拠点の目的はだいぶ果たせたと、そう思い、周りを見渡すその上空から真々地の元へ降りる。
その足が地に着く前に、キリカは真々地に提案する。
「そろそろ引き上げだ、もう十分だろう、あとは、この山から市街地に向かうところで各個撃破するための戦力に任せよう」
と言うと、
「ああ、そうだな」
と真々地も納得して、脱出のための時間を作るために、攻撃範囲を広げて、展望台付近の敵を一掃する広範囲斬撃『必殺、クルンと回って水平斬(キリカ除く)』を放つ。
以前、真壁秋に破れて以来、ロングレンジでの必殺技の習得に余念がなかった真々地であった。もちろん真壁秋の協力の元、二度ほど試して見たがまるで効果はなかった。
そんな真々地も今は、
「よし、頼む」
とその身をキリカに預けようとする真々地。
作戦の上では、このままキリカに抱き上げられ、空を飛んで逃げる算段であった。
しかし、
「どけ!」
真々地は必死の形相で距離を詰め、来たキリカを突き飛ばす。
「何をする!」
と驚くキリカであるが、その怒鳴る相手、真々地が目の前で吹き飛んで行く。
先ほどの広範囲斬撃『必殺、クルンと回って水平斬(キリカ除く)』の際に、真々地から見てキリカによってできた死角にいた魔物の中に対吸血鬼向けの攻撃が出来る者が、大量にしかも反応できないほどの速度を持って、吸血鬼の弱点とされる木の杭を放って来たのだ。
とっさにキリカをどかして真々地ではあるが、即死こそしなかったものの、対応しきれずに、その身に何本も木の杭を受けてしまう。
その真々地を見て、驚くキリカ。
思わず、本気が出てしまい、これらのキリカと真々地の行動を隙だと感じた、ここを拠点だと信じて疑わない襲いかかって来る魔物達を、全ての魔物を広範囲に、敵を一瞬で音もなく灰に変えてしまう。
この藻岩山にいた魔物はキリカの能力によって砂塵と化した。