表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆終章 異世界落下編◆
1210/1335

第29話【新しい世代に高まる悪魔胸】

 だから、ここで、一つの役目を終えようと、そう考える高橋でもあった。


 高橋は、言う。間違いなくこちらの世界の発音で、言葉で彼らに提案する。


 「お前達に、この首をやろう」


 伝える内容に誤差が生まれない様に、高橋はその首をトンと己の手刀て叩いて見せる。


 「え?」


 と驚く少女達、そして異造子達。


 咲と言われた少女が、まるで警戒もしないで高橋の足元に近づいて来て、首が痛くなるほど見上げて言う。


 「死んじゃうって事ですか?」


 まあ、殺せって言っているのと同義であるので間違えではないが、そこは殺せと言っていると捉えていいので、頷く高橋である。


 咲は、再びみんなの元、つまり後ろに控えていた異造子と小雪の元に帰って行って、


 「あの人、死んじゃうって言ってる」


 すると、小雪は、


 「違うよ、殺せって言ってるんだよ」


 「同じじゃん」


 「同じじゃないよ」


 事もあろうか、彼らはまるで高橋を警戒する事もなく、輪になってワイワイと話している。まるで巨大な魔神である高橋に対して恐れる風もない。


 そして、再び、高橋をそーっと見上げる子供達。


 目が合うと、そこで普通に笑顔になる咲、そして小雪であった。


 本来、巨大な魔物。巨人族の筆頭としての力を持ち、そして、底抜けの生命力を持つ高橋を名乗る魔物は、その純粋で無垢な視線に少し表情を躊躇う。


 そんな様子から何かを悟ったのか、咲と小雪は、その表情をじっと見つめている高橋から視線をそらして、また相談し始める。


 「悪い人じゃなさそう」


 「うん、いい人そう」


 そして、そこにいる柊に、


 「この人、大丈夫だから、みんなは、他のところへ行っていいよ」


 と呼びかけ、少しみんなで話し合いを行ったが、今度は死亡フラグでないと、確信する異造子達は柊だけを残して、他の場所へと向かった。


 そして、異世界から戦いに、立場上ではあるが新世界征服を使命とする高橋と名乗る魔物は、そんな彼らを、隙だらけな彼等を攻撃する事なく、ただ、見守る様に、立ち尽くして見ている。


 そして残った3人は、高橋に向かって、


 「あの!」


 と声をかける。


 その中の咲が、


 「首をいただけるんでしたら、私たちの勝でいいですか?」


 とか言い出す。


 一瞬、返答に困るが、その質問に対して元々、ここで最後を迎えようと思っていた高橋なる魔物は、


 「ああ、好きにすると良い」


 と肯定的な返事をする。


 「じゃあ、降伏ですね」


 と今度は小雪が言うので、


 「そうだ、降伏する」


 と返事をした。


 すると残った3人は大喜びして、


 その中の小雪が、


 「じゃあ、もう、いいです、戦いは終わりです」


 と、その終了を宣言する。


 そして、小雪は言う。


 「じゃあ、これから休憩場に案内します、真壁秋が、全部終わらすまで、そこに待機していてもらいます」


 「大きいから、駐車場の方かな?」


 「でも、おじいちゃんみたいだから、冷えたら可哀想」


 と言って、急に高橋に駆け寄る咲は、サンダルの様な履き物をしたその巨大なローブから出ている高橋の足の指を、なんら躊躇する事なくペタっと触って、


 「冷たい! 寒いんだ、温めないと!」


 と言って、慌てる様に高橋に、の顔を見上げると、


 「あ、顔もちょっと青いかも……」


 ちなみに、悪魔種でもある高橋の顔色と体温は、常にこの程度の色と温度である。


 「バックヤードから足だけでも入れてもらう? コタツみたいに」


 と小雪が言うと、


 ちょっと、先にアクセス札幌行って相談してみるよ」


 と柊が駆けて行ってしまう。


 「休憩場には暖かい飲み物と、簡単な食事もあるから」


 と、咲が言うと、


 「いっぱい飲むんなら、すぐ近くにセイコーマートの物流センターとかもあるから!」


 高橋は、この世界を立場上征服しに来た巨人な悪魔は、そんな彼らの様子に、異世界の子供達と、新世界の子供達が共にしている姿に、そして、まさにその姿は魔物であり、恐ろしい姿を、まるで怖がる様子も見せずに接してくるその様を、未来の姿の一端を見た気がした。


 「じゃあ、行くよ!」


 と先導しようとする小雪に、


 「そんなところにいたら踏んでしまうぞ」


 と言う高橋。


 「避けるもん」


 「避けるもん」


 と咲と小雪が声を揃えて言った。


 その姿に、ついに堪え切れなくなった高橋は、まるで咆哮の様に大きな声を出して笑ってしまう。


 「良き子供達だ」


 もう、何も言うまい、そして思うまい。


 彼らに任せよう。


 そして、異世界でも指折りな第二位の位置にいる巨神と言われた悪魔は、新しい時代に向かって一歩、その足元をチョロチョロ走り回る彼らを踏まないように、歩き出した。


 思う事は、


 「こんな奴らに勝てるわけがない」


 と、たった一言、意識もせず綻ぶ顔をして高橋はそう思うのである。

 

 


 

 

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ