表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆終章 異世界落下編◆
1203/1335

第22話 【広島市防衛ボランティア 親友と真希】

 「ホント、まじにお前ムカつくよなあ、全然変わってないべさ、成長してないべさ、よくそれで母親とか言ってるべなあ!」


 「母親よ、秋産んだからね、これ以上ないくらい母よ」


 「やっぱ、アッキーは私が産むべきだったんだべ、こんな母性の欠片もない奴が母親なんてかわいそうだべ」


 「母性はあるわよ、これ以上ないくらいあるもの、秋を産んでるんだから、薫子ちゃんにも理想のお母さんって言われてるから、嘘じゃないから、これ全部本当だから」


 もう、家族の前で見せる様な表情ではない今日花に、そしてギルドを含めて仲間の前では決してこんな風に荒ぶる事がない真希である。


 激しく罵りあう二人の顔は、ダンジョンの最高組織としての顔、そして、真壁家の母親としての顔などどこにもなく、理性も知識も立場も捨て去った、ただ声を大きく、言葉を多く互いを罵り合う子供同士の言い合いにしか見えない。


 「わかったべ、確信したべさ、やっぱり私がアッキーを生んで育てた方が、よかったべ、きっとアッキーも幸せだったべさ」


 その言葉に、


 「まだあの時のことを蒸し返す…… 本当に老人はいやね、過去ばかりに執着してさ、決着はついたじゃない、私の完全勝利で、あなたもそれは認めたよね?」


 「私は1ミリも負けてないからな、お前なんて、片手で十分だったべさ、泣いて謝るから許してやったべ」


 「はあ? 泣いたのあんたじゃない、泣きながら帰って行ったじゃない」


 「あの時、輝郎が来なかったら、私はお前を倒していたべさ」


 「あの時、輝郎さんが来たから、許してやったんじゃない」


 「だいたい、春夏ちゃん(地底に横たわる名もなき偉大な白き神の方)をお願いした時、お前、私を『親友』とか言ったろ? まあ、あの今日花も丸くなったもんだべ、って思ったべさ!、こりゃあいよいよ異世界も落ちるわ、って思ったべさ!」


 「いいじゃん、どうせあんたに友達なんていないんだから、いやいやだったけど、親友を演じてあげたのよ、よかったわね、嬉しいでしょ?」


 「何を!」


 「何よ!」


 いがみ合う今日花と真希。


 その二人に、次々と襲いかかって行く、異世界でも異形にして強大な魔物達。


 それが、彼女達、今日花と真希に一瞥も与えられずに瞬殺されてゆく。


 しかも、命までは取らないと言った、実力差を示して、結果に、それなりの異世界からの刺客と言うか実力者が、抵抗する力も失って、次々と、その場に正座する形で留められる。


 ここに落ちて来る魔物達は皆、異世界の中にわずかに残っていた、この地、彼らの言うところの新世界である、北海道を征服しようとしていた勢力であった。


 彼等は、真剣に戦術と戦略を持って少ない兵力ではあるが、確実にこの北海道を陥すために行動をしていた。


 札幌から離れた場所に自分たちの最大戦力を集結させて、落ちかけた異世界から、この場所に出現していたのだ。


 その事実を、「なんとなく」と言って、駆けつける今日花と「匂いがした」と同じく駆けつけた真希によって、対抗と言うより蹂躙されている。


 ちなみに今、倒されて、力の差を歴然と見せつけられた魔物は、先ほど土岐とリリスの前に現れた田中の上位にあたるモノである。


 彼らがこちらの苗字を持っていないのは、あくまで、こちらの世界に敵対的であり、こちらの文化などに迎合するつもりは無いと言う意識の現れてもある。


 彼等、異世界の北海道侵略組は、最初から、異世界である自分の世界がこちらに顕現した際には、戦略を持って、この地を責めるつもりで、最大戦力が集まると予想される異世界の落下する札幌中心よりも、異世界が落ちてしまって、壊滅する札幌よりも、そこそこ大きな地方都市を狙って、こうして現れている。


 彼等の作戦は、まずは、離れた場所に拠点を作って、その後、ゆっくりと侵略を開始するつもりで、ここ札幌の隣町である北広島市のボールパーク建築地を自分たちの配下に収めようと算段していたのではあるが、そこに今日花と真希が待ち構えていたと言う事だった。


 だから、彼等、ここを目指して次々と現れる、異世界の魔物達の中でも武闘派な彼等は、彼女達、つまり今日花と真希を見ても、やはり、この場所は警戒されていないと、そう考えて、改めて今日花と真希を見てもやはり、戦力外の幼い女子と判断して、ここに一気に顕現を開始、戦力を集める。


 その姿は、遠目に見て、今日花と真希の実力を知る者なら、さながら誘蛾灯に突撃してゆく蛾でなく蚊の様に見えた事だろう。


 どの様な魔物であれ、どの様な強大な力を奮おうと、彼女達、つまり今日花と真希に接触した瞬間に終了するのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ