第14話【春夏姉を手に入れる為に越える壁】
で、その度に僕らの仲間にちょっかい出してた。
なんて会話を交わしていると、僕らの方に明日葉さん、だから春夏姉のお母さんから声がかかるんだよ。
「あの子はまだ戻ってこないのかしら?」
きっと春夏さんの事だね。
で、春夏姉も、
「で、そっちはどうなんだよ?」
って聞いて来るから、
「うん、まあ、そうだね」
ってちょっと考え込む僕に、春夏姉は何を思ったのか、
「ま、まあ、あれだ、もしも、な、春夏としての体だけはここにあるからな、そん時は私だって……」
とか変な事言ってる。
「春夏さんは春夏さんだし、春夏姉は春夏姉でしょ?」
って僕は極めて当たり前の事を言ったら、
「そうだな」
って言う春夏姉は、
「私じゃ、あの春夏の代わりにはなれねえしな」
って、当たり前の事言ってるから、
「そうだよ」
って言ったら、春夏姉はさ、あまり慎重って顔でもないけど、どこか真面目に僕に向かって言うんだよ。
「まあ、お前にはまだ礼を言ってなかっただろ?」
とか言い出す。
「一応はさ、こうしてきちんと確実に復活させてくれた訳だろ、生き返えらせてくれたからな、お前は」
そもそもが、春夏姉が、僕を庇ってってのが一番最初なわけで、お礼を言われる筋合いもないんだけどな、って考えてると、
「頑張ってくれてありがとうな、助かったよ」
ってまじまじと言うから、春夏姉に言われるとおかしな気分になる。
そして、春夏姉は、
「あと、もう一人いるからな、お礼をしないといけないヤツがな」
僕に、じっくりとしっかりとそう言うと、
「あれはもう、私たち東雲の家のものなんだよ、母さんがうるさいんだ、私の妹で、三姉妹の真ん中だそうだ」
って言ってから、僕の後ろの方でこの様子を見ている葉山を割としっかり見て、
「本当なら、お前も連れて来いって言われてたんだよ、あのギルドの小さいのと一緒にな」
って葉山を驚かさせていた。
明日葉さんって、春夏さん関連と言うか、関わって生まれて来た人は全部自分の娘とか息子って考えているんじゃないかなって、気がして来た。
だから真冬さんも連れて帰ってるんだとは思うけど、その明日葉さんが、割といまだ距離があるけど、そんな所から、
「秋ちゃんのお嫁さんは家から出すからね、お嫁さん100人なんて許しませんよ」
ってお上品に叫んでるから、もちろんだよ、って返事を含めて、明日葉さんに向かって手を振る僕だよ。
そして、春夏姉は、
「まあ、お前なら、私と同じ様にどうにかしてしまうんだろうけどな」
って言うから、
「うーん、まあ、そうしたいけどね、そうするよ」
って言うと、葉山の奴が急に、
「方法はあるわ、大丈夫です」
って僕と、春夏姉に向かって言い出すからびっくりした。
そして、言われた春夏姉は、凄い目をして葉山を見つめる。本当にジロリとした目だ。
「変な方法じゃあねえだろうな?」
って、久しぶりに怒ってる春夏姉を見たよ。
覚えがあるよ、僕も、こうして怒られて来た記憶がある。
この目を向けられたら全く逆らえる様な気がしない、ってかそんな僕の性格の一部を造ったのって、こうして見ると春夏姉そのものだったのかもしれないなあ、って今更気がついたよ。
そして、そんな目で睨みつけられてる葉山も、一歩も引かずに、春夏姉の目を見つめ返してる。
その春夏姉が言うんだ。
「その方法とやらが、誰も泣かずにできるってんならいい、だが、秋が泣くならダメだぞ」
って、春夏姉の、その態度、その視線とは裏腹な、その優しい言葉に驚く僕がいるよ。だからかな、一瞬、葉山の表情の方が翳るんだ。
だからなのかわからないけど、春夏姉は深くため息を吐く。
「まあ、いい、秋、ちゃんと周りも見ろよ」
って春夏姉に強く言われるから、
「うん、だね」
って答えると、
「もう、何かを失って、何かを得るって事は、何かを失ってる事の一つだって、私たちは知ってるよな?」
って僕の方も見ずにそう言う春夏さんは、待機させてる札雷館の元に振り向く。
僕は春夏姉の言葉には何も答えずに、どこかそんな言葉を受け取って、叱られた感じの葉山の方が気になっていたんだけど、葉山はジッと春夏姉を見つめていた。
その春夏姉がこっちを振り向きもしないで、急に言うんだよ。
「あ、そうだ、秋、お前を倒して私を手に入れるって奴がいるんだけど、ちょっと相手してやってくれよ」
とか不穏な事を言い出す。
すると、今度は、春夏さんと入れ違いに、いつか見た人が僕の前に立つんだ。
うん、まあ、イケメンだよね。
背も高いしね。