第13話【札雷館、定山渓→石狩へ】
ここ大通公園の空には、いまだに、一部、異世界が飛び出してるって感じで、異世界は今ひとつ落下に踏みきれない様相を示している。
なんかモジモジしてるって感じかな。
それでも、その地から、ゾロゾロと地上に降り注ぐ様に降りで来てる異世界勢が、その喧騒が、若干近くなって来てるから、そのうち、ここ大通4丁目あたりに直接降りて来るやつもいそうだと、ちょっと気を引き締めてる僕がいる。
そんな中で、元ダンジョンウォーカーの意外にも、自衛隊とかも動き出していて、中でもそれ以外の戦える一般人、礼を上げると札雷館が、積極的に、南区あたりから動き出してる、みたいな報告が上がって来た。
怒羅欣がいた定山渓って、一応、あれだけ離れていても、札幌市の南区だから、大きいんだ南区、そこの市街に近いところに札雷館が入っている。間のところを『北海道ヒグマの会』って言う、いわゆる、怒羅欣の母体とも言える人たちが、まばらに入って、山中を警戒してる。
もう、何度も大柴マテリアルのラボで通った道は、普通に支笏湖に続く山で、それは定山渓に繋がってもいるんだ。
割と死角もなく配備されてるなあ、ってこの辺の指示は白馬さんなんだけどね。
何より、この一般人の参加は僕達がお願いした訳でなく、基本的に、今のダンジョンウォーカー以外は、ほとんど自発的な、いわゆるボランティア的に参加してくれてる。
もちろん、僕らの意見を通して、自衛隊とか、連絡の取りやすい方法で、その旨はお願いしているんだ。
その筈の札雷館なんだけど、どうしてか、今、僕の目の前にいたりする。
札雷館というか代表? 見たいな感じだから、そこにいたのは、春夏姉だったりする。
思わず、普通に、
「どうしたのさ?」
って聞いたら、春夏姉、
「いや、何、南区の方、結構人が入り込んでいるんだよ、お祭りみたいになっててな」
とか言う。
まあ、そうだね、札雷館なら青年の部だけでも結構、人も多いしね、それにヒグマの会まで来ているなら、そうかもしれない。
「で、私達は、このまま手の薄い石狩の方面に向かおうとしてるんだけど、その前に、ちょうど通るから、秋の顔見てこうって思ってな」
とか言い出す。
そんな横では、真冬さんが、ペコリって僕に向かってお辞儀する。
そしてその更に後ろには明日葉さんがニコニコして立ってる。
札雷館の代表だもんね。師範である冴木さんはいないみたい。
で、更にその後ろには有象無象に武器を持った男の人がいるんだよね。もうヤクザの出入りかよ、ってくらいの人相の悪さで、それでも北海道の街を守るために奔走しているって雰囲気があるよ。
きっと、春夏姉とか東雲の人で、明日葉さんもそうだけど、札雷館そのものが、こんな事態と言うか危機に対して作られたのかもしれないね。
すると、そんな男衆の中から、ヌッと出て来る、見知らぬ妙齢のおじさんがさ、
「この前、来たあの可愛い坊ちゃんは今日はいないんですか?」
なんて聞いて来るんだよ。
ああ、前と違って、ずいぶんすんなり歩くなあ、って思ったから、以前、札雷館の漢館で、桃井くんに傷を開かれて、怪我が治る以前んい戻された人達である事に気がついた。
「今日は、奥さんとまだ深階層にいるんじゃないかな?」
って言うと、
「そうですか、足が綺麗に治ったから御礼をしたかったんですが」
って言うから、
「うん、伝えておくよ」
って言ったら、ペコリとお辞儀して、明日葉さんの後ろの団体に戻って行った。
帰りの足も自然に運んでたから、もうすっかり良いみたいだね。
「なぜか、すっかりこいつらと一緒に組んじまったよ」
って春夏姉が言うからさ、
「もともと、そうでしょ? 春夏姉は」
って言ったら、僕の頭をチョンと突いて、
「お前が誘わないからだろ?」
とか言い出すから、
「いや、来ないでしょ? 札雷館の方が大事だからね、春夏姉は」
って言ったら、
「そうだな、確かに、ダンジョンには入ってはいたが、それほど積極的でもなかったかもな」
と言いつつも、割と頻繁に僕の様子を見には来てたんだよね。