第10話【雪華さん防衛担当 茉薙】
一応、こうして待ち構えているものの、なかなか来ないなあ、異世界勢。
まあ、ここ城砦って訳でもないけど、僕らの本丸だからさ、ここに敵がたどり着くってことはもうすでに、こっち側の守りも崩壊してる筈だから、そんな事にならない様に勇者生産した訳だし、きっと特種な相手でもない限り、ここに辿り着くのは不可能だと思うから、のんびりしてはいるんだけどね。
大きな入り口の代表としてはここ、4丁目ゲート、7丁目ゲート、中島公園ゲートがあるけど、それなりの人を配置してるし、多分、おそらくは何も起きないと思う。
それでもここ、北海道ダンジョンに、異世界が接触するってことは一発逆転もあり得るので、大切にこうして守ってるって訳。
だから、戦闘はさっきの北藤さんじゃないけど、小さな接触戦がああして局地的に起こるだけって前から予想されてはいた。
だから、こうして仁王立ちってしてる訳じゃないけど、4丁目ゲートの外で、門番の如く待ち構えてる僕なんだけど、なんだろう、後ろの方でうろうろしてる奴がいる。
何かを言いたげなんだろうけど、でも、向こうからのタイミングを待ってやってあげた方がいいいかなあ、って微妙な気分でいるんだけど、でもそんな空気も読まない人がいて、その葉山が、
「何? 茉薙、用があるならちゃんと出てきなさいよ」
ってこっちから声かけちゃった。
「べ、別に用なんてねーよ」
って、ゲートから出て来るのはさっき雪華さんと、ここの地下一階にあるギルドに向かったはずの茉薙が出てきた。
どうしたんだろ? って僕も声をかけようと思うと、僕の方を睨んで、
「雪華が様子を見に行けって言うから、ちょっと見にきたんだよ」
返事的な反応をする前に、
「別に、お前が心配だったんじゃねーから」
って言ってから、
「静流とか、心配もしてねーから」
って、ツンとしか顔で言うから笑ってしまいそうになる。
かつて、ここにいる葉山の体の一部だった少年。
あの時、葉山の命ですら、あのままだったら後、1ヶ月、いや1週間も怪しかったから。その前に、そこに結合せれていた命もまた失われていた筈だった少年。
今はすっかりどこに出しても恥ずかしくない小学生頑張って見てギリ高学年くらいの男の子。
北海道ダンジョンによって、あちら側の理ではあるものの、雪華さんの『人類創造』強力なスキルも合間って、人の体を手に入れて、今はすっかり普通の少年になってる、言ってみれば葉山の弟見たいな存在。
「本当? でも本当は心配だったんでしょ、やっぱり茉薙はいい子だね」
とか葉山に言われて、「そんなんじゃねーから」って反抗してる。目一杯、言葉では否定してる。
なんか、この二人を見てると普通の姉弟って感じがするんだよなあ、若干の中の悪さと言うか、姉から遠ざかろうとする弟って感じが、本位の姉弟ってこんな感じだんだと思う。
同じ血肉で生きて来た二人だからね。かつては離れたくても離れられず、ってのがその環境がこんな関係を生み出したのかもしれない。僕の周りに割と妹とか姉弟とか多いけど、割と普通じゃない方々が多い気がする。
「なんだよ?」
って思わず茉薙の顔をジッと見ていた、僕の足を蹴る茉薙。
「茉薙!」
って怒る葉山だけど、まあ、痛くないし、茉薙の挨拶見たいなものかな。最近気がついたけど、反応の悪い時にこっちに接触したい茉薙がやる仕草ってのがわかって来た。ソースはギルドのみんなと、真希さんと、僕。
どう、声かけていいかわからない時に取る反応で、しかも、特定の人にしかやらないらしいんだよ。
ちなみにそんな茉薙を小学校に編入させようとした雪華さんだけど、その時、父兄として学校に茉薙を連れて言ったら、借りて来た猫というより、ほぼ剥製でもまだ喋るんじゃないかなって、くらい内に籠もって何もしようとはしなかったんだって。
しかも、学力はあるけど、団体行動とかにも問題があってさ、今は近くの学校のカリキュラムの一環と、雪華さん家族、事実上の雪華さん監督の元、学校に通わない小学生をしてるみたい。ちなみに学業の成績はいいよ、もう大学校3年生くらいの学力は持ってるんだって。流石雪華さんだよね。
で、僕を蹴った事によって葉山に怒られる茉薙なんだけど、まったく反省なんてしてなくてさ、それをまた怒る葉山だけど、
「いいよ、で、なんだよ茉薙」
ちょっと叱りつける様な顔して茉薙を見る葉山に言ってから、茉薙に用事を問うてみる。
「べ、別に用事ってほどでもないけどな」
って言ってる。なんか顔を下に向けて、モジモジしてる茉薙は、男の僕から見ても可愛いな、って思うよ。