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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆終章 異世界落下編◆
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第9話【対真壁秋用必殺奥義【波動砲】

 僕は、今、定山渓の方で戦っているであろう、怒羅欣の人達を、そんな事を考えながら見ていると、イネスさんが、


 「私、誰からも狙われなくなるために、あなたに嫁入りするって言う手もあるって言われた事があるんですよ」


 とか言い出す。


 ああ、真希さんだな、きっと。本当にあの人は事を荒立てるようなことしかしないよなあ、って、もう、うんざりって顔してしまうと、イネスさんが、


 「いやですわ、そんな顔しないでください」


 ってクスクス笑うから、僕としても、


 「でも、イネスさんって、好きな人いるよね?」


 って聞いたらびっくりしてて、だから、はっきりと、


 「イネスさんって、お兄さん好きでしょ? すごく」


 って言ったら、顔を真っ赤にしてた。図星だった。ってか、それきっと真希さんも知ってると思うよ。


 イネスさんの戦闘スタイルへのこだわりとか、兄が負けたって(負けてないけど、本人はそう言いふらしていたみたい)矢も盾もいられず僕を倒しに来たのってのも、割とわかりやすくて、真希さんも放って置けなかったんだと思うよ。


 イネスさんって、あまり知られてないけど、結構優秀な魔法スキル持ってるからね。一切使ってないけど。


 「小さい頃から兄弟として育ってきてます、みんなが何を言おうと、私に取ってはナイトの様なカッコいい人です、おかしいですか?」


 って聞かれるから、


 「そんなことないよ」


 北藤さんって、ゾンビにならなきゃ良い人だし、かつては僕も助けられたからね。


 ほら、僕って最初の頃って、割とダンジョンでおっかなびっくりな心境でさ、特にあの時、蒼さんを出会い頭に倒してしまった時って、結構なショックを受けたんだよ。


 今にして思えば、ダンジョンやめてしまおうかなくらいまで行った。


 僕としてはさ、僕のために、僕が、誰かを殺してしまうなんて、本当に冗談じゃないんだよ。気ままにダンジョンを楽しんでいたかったから、過ぎた力は本当に余計で、怖かったら逃げる、くらいの気持ちでいた筈なのに、このダンジョンの中には避けられない殺意とかもあって、しかも一度絡みつくとその深みにどんどん嵌り始めるんだ。


 だから、僕の攻撃力をなんの根拠も無く僕自身が悪って決めつけてしまったんだ。


 かなり弱気になってた。


 ゲンナリしてた。


 で、北藤さんに出会って、あの暑苦しさと、一瞬の妙技に煽られて、自分の奥底から出て来る殺意に対して、僕は、慌てて否定しようとしたんだ。でも、北藤さんはそれを許さなかった。


 言われたのが、


 「奮え! 真壁秋! 止めてはならん!」


 その言葉は、今でこそ思うけど、体に来たと言うより、背骨から奮い立つ感覚を覚えたよ。


 そうだね、今思えば、僕の心と体、そしてこのダンジョンって環境は、あの時噛み合った気がする。


 思う存分力を奮う事ができるようになった気がするんだ。


 だから、正直感謝してる。


 あの時、あの瞬間、出会うべきして出会えたって感じかな。


 そんな気持ちが顔に出たのか、イネスさんはもニコニコしていた。


 そして、定山渓の方に、巨大な影が落ちて行く。あれ、あの大きさはちょっと大変かもしれないって、思っていると、イネスさんが、


 「大丈夫です、兄には、あなたと戦った時から、夢想して開眼した必殺技がありますから」


 って説明と同時に、ズズン!って、まるで地震、いや揺れているのは大気だ。


 ここからでもわかる。終わったんだ。


 あっと言う間に倒したんだ。


 これから先、もう定山渓へ敵はこなくなったらしい。


 まあ、峠茶屋で、名物の蒸したジャガイモでも食べててよ。


 同時に思う。今の、中山峠付近から、ここ大通公園までの空気を振動させる技って、対僕専用必殺技って訳じゃないよね?


 それを思うとゾッとするけど、イネスさんが、人差し指を立てて、自慢げにこう言うんだ。


 「波動(砲)拳って言います、ガード不能だそうです、コツは両手平にタキオン粒子を集める事だそうです。ちゃんと見ればその辺に飛んでいるらしいです」


 へ、へー……、と思いつつも、相当すごい技なんだろうけど、名前で効果もわかってしまうから、もうちょっと必殺技名捻りが欲しかったなあ、って思う僕だったよ。


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