第5話【北海道へようこそ! 異世界様】
だから改めってそう言われても、僕自身にその自覚がないから、ちょっと自分ながら反応が薄い。
「君はさ、狂わすんだよ、自分が狂うんじゃなくて、周りを狂わすんだ、どんどん、おかしくして、巻き込んで、既存ってものを破壊して、それなりの平和を造ってしまうんだよ、それって、一生懸命自分の砦を守ってる古い体制にとっては恐怖以外の何者でもないよね?」
って言われるから、「うーん」ってなる。
そう言うことは自分じゃわからないよ。
「まあ、そう言う僕も、君に救われた人の一人って訳さ、だから僕としてはこれからの事は何も心配してないんだ、またそのデタラメな力でなんとかしてしまうんだからさ、だからこっちの事は僕に任せてよ、うまく回すから」
って八瀬さんが言ってくれる。
そして最後に八瀬さん、
「あ、そうだ、言い忘れてたよ、ってか聞き忘れてた」
って言うから、ちょっと黙ってその先の言葉を待つ僕に、
「君、僕のこと苦手でしょ?」
嫌いって言い方じゃないのが八瀬さんらしい。
「いえ」
と一言で否定するすると、
「なんだ、そう、ならよかった。じゃあまた後で!」
って八瀬さんは、自分の仕事をしにダンジョンの中に入って行ってしまう。
あ、しまった。
って思ってたら、
「ディアボロスくんならギルド本部に詰めてますから、御用の際には声をかけてください」
って雪華さんが言った。
その背後から、水島くんと紺さんも来た。
「お館様、ここで迎え撃つんですか?」
って紺さんが聞いて来るから、
「うん、全景を見える場所でね、って考えてたから」
すると今度は、水島くんが、
「工事用機械みたいな真似させて悪いな」
って特に悪びれることもなく言うからさ、
「いいよ、それより、残存の魔物がダンジョンに入って来る方が心配だよ」
「だよな、お前の愛しのダンジョンだもんな」
って言う水島くんの頭を紺さんが思いっきり引っ叩く。
「痛えなあ!」
「申し訳ありません、シメときますから」
って何故か紺さんが謝って来る。こう言う時ってさ、付き合ってるどっちかがバカやったら、関係ないと思われる彼女さんが謝るものなんだろうかって思ってしまうくらい自然の流れだよね。ってか一心同体?
その後、二人でギャーギャーと騒ぎながらダンジョンへと入って行く。
本当に、ギルドの人っていつもと変わらないから返ってびっくりするよ。
この異世界が消えてしまうことで、このダンジョンがどうにかなってしまうかもしれない可能性なんて全然考えてない。と言うか、ネガティブなイメージが一切なくて、もしかしたら、あの時の、何も知らないでラミアさんとかに出会ってしまった『浅階層の長い1日』の方の時が余程緊迫していた気がする。
他の人はどうかは知らないけど、この辺で生活する北海道民にとってダンジョンは日常で、ダンジョンに慣れてしまったから、この異世界が落下して来る雄大な光景もまた日常の一部なんだろうか?
慣れってすごいよね。
僕らは、そのまま4丁目下ゲートの前で、その光景を見て、待つ。
「はじまったわね」
って葉山が言うんだ。
出現した一部の異世界から、まるで胡麻塩ふるみたいに、小さな粒が地上に注がれて行く。
異世界というなの陸地事態は魔法によって維持されているらしいので、あれは土や岩盤なのではないね。
降りて来る速度がバラバラだから、落下を制御できる、つまり飛んでいる者もいるって事だね。
そう、いよいよ、異世界の魔物がこの地に降りて来たって事。
彼らが目指すのは、この地上にあって彼ら側の施設、だから、彼らの処点になりうる場所。だから、この北海道ダンジョン。
ここを目指して一気に来る。
そんな時、葉山が、
「北海道にようこそ、でいいのかな?」
とか言ってみる。
そうだね、ともかく歓迎しないとだよ。