第1話【世界が堕ちる】
覚醒して行く僕の耳には、Jアラートの轟が入って来る。
あ、ミサイルじゃ無いから、その音響パターンはかなり違うし、これはもう、国営放送他、地上にも試験的に流して覚えてもらってるから、聞いている人は、すぐにわかる。
しかも流れてるのって、ここ、北海道と、青森の一部にだけだからね。
つまり、落ちると言われていた異世界が、今はもう完全に把握できる段階になっているって事。
続けて、葉山の声。
「起きて! 真壁!!」
もちろんもう完全に目覚めていた。
だから、
「来た?」
って尋ねると、
「うん、大通り公園4丁目の直上に出現だって」
って言ってから、僕の顔をジッと見て、
「泣いてるの?」
とか聞いて来るから、
「欠伸でしょ?」
って答えた。
そう言いつつも、頬に触ると本当に涙がツーっと一本出てた。
本当だ、なんで泣いてるんだろ?僕。
もちろん、今の時点では悲しくも、まして痛くも無い。
それでも、そう思う心の中に何かが引っかかって、本当にそうかな? って考えてしまうけど、ともかく今はそれどころじゃないよね。
そして、
「白馬さんから連絡来てるよ、例の直通回線」
ああ、そっか、こう言う事態の時のために、家には政府や防衛庁からの直通回線を引いているんだよね、家の電話がそうなってる。
ほら、実際にいろんな状況が考えられるから、少なくともスマホの回線とかは瞬間的にパンクしてしまう恐れとかも考えられるって事で、僕の家にもこんな仕様になってる。
確か、僕のスマホも通常回線から切り替わる筈だ、まあ、ともかく今は状況を確認する為にも、電話に出ないと、ってとこまで思って、あれ?ってなったよ。
ってかなんで白馬さんだろ?ってことは自衛隊に復帰出来たって事かな?
僕は、ともかく家の電話に急いで出た。
「真壁、大丈夫か?」
受話器からの白馬さんの声。
「うん、大丈夫、起きたよ」
「異世界が出現した」
「うん」
「同時に、その異世界からの宣戦布告が、政府に通達された」
「うん」
「本当、大丈夫か? 起きてるか、真壁!」
って怒鳴って来るから、漫画みたいに、受話器を耳から離してしまったよ。どうも、僕の反応の薄さにイラッとした、電話の向こうで「班長! 声! お館様がびっくりしちゃうじゃないですか!」って、三爪さんに怒られた。本当に大きい声だよね、この隊長さんは。怒鳴るからさらに大きくなってびっくりするよ。
基本、僕の周りには怒鳴り声を上げる人っていないから、親父に怒鳴られる、くらいの感覚かな。怒鳴られた事ないけど。
「以降、自衛隊の式は俺が取る事になった、その為に、俺はお前と行動をともにしてたからな」
とか言い出す、そっか。そうだったんだね。
黙って聞いてる僕に、
「難しく考えなくていい、つまりだ、お前と言うパーティーに自衛隊の全方面隊というメンツが加わっただけだ、よろしく頼む」
ああ、そうだね、わかりやすくて助かるなあ、って、
「白馬さん達はいつも通りで、この緊急回線、もうスマホも繋がるんでしょ?」
って聞いたら、僕の手に持っていたスマホがけたたましくなって、出ると、
「お館様、三爪です」
って出るから、「通話が確認できましたので、切ってください」って言われるから、確認後、スマホを切る。すると、今度は家電、だから直通回線の方から白馬さんが、
「この通信回線は、ギルドやお前、全ダンジョンウォーカーに開いている、端局もすでに防備しているから問題は無い」
そして、スマホの回線は電源は入ぱなししておけと言われる、これは他のダンジョンウォーカー、僕を含めて、葉山もみんな一緒みたい。
じゃあこれでみんなと連絡が取れるわけだね、って納得して、今度は僕が白馬さんに、
「あと、民間人の避難誘導と、その安全の確保をおねがいします」
「それも、すでに始まっている……、三爪、状況は?」
電話の向こうで何か話してる。そして今度は僕に向かう受話にに、
「現在は、札幌周辺、大通りからススキのエリアの封鎖を完了した、後、各ダンジョン入り口を周辺に部隊を展開している」
仕事早いなあ、って感心しつつ、
「絶対に、ダンジョンに入って来ようとするから、その辺は上手くやってください」
って言ったら、
「ああ、わかった」
そして、白馬さんが、
「なあ、真壁、俺に手伝えることは無いか?」
っていつもの口調で聞いて来るから、
「そこまで徹底してくれるんだったら、後はこっちでやる、それより、逃げる人や、戦えない人の方をお願い」
と言ってから、僕は一言。
「今日は思いっきりやるから」
と言葉を繋いで言い切った。