第114話【殺戮に動く危険組織、黒の猟団】
きっと、普段忍んでいるから、ここダンジョンでは承認欲求の強めな忍者さんだ。
本当によく喋ってくれる。
「運の悪い奴らだ、お前たちは俺たち、『黒の猟団』の行動範囲の中に、まんまと落ちてしまったってことだ」
って言う。
黒の猟団???
結構有名組織じゃ無かったかな?
未だ浅階層の僕らも知ってるくらいの、確か、噂くらいはどんな人達か聞いてた気がするよ。
そんな僕の錯綜する思考はともかく、良い感じに滑り出せた感じはある。
だから、
「く、黒の猟団?」
って今言われた言葉を、未だ詳しく内容までは知らないけど、繰り返す様に口に出してみる。もう、さも驚いた様に言って見る。
あ、角田さん、そこで笑わないてよ、バレちゃうじゃん。
ほら、春夏さんなんて、全く表情を変えてないよ、見習いなよ、最も、春夏さんって、僕に対してしかあまり表情とか出さないけどね。
あ、今の、その『上手ね』って伝わって来る笑顔はやめてね、春夏さん。
ちょっとやばいなかあ、なんて思いつつも、忍者さんって、今、僕の顔しか見てなくて、それにちょっと嬉しそうな顔してるから大丈夫そうな感じだ。よかった。
「そうだ、黒の猟団だ、誰もたどり着くことのできない、蒼きゼロの頭首導く、最強にして、さらに最強を求め続ける、偉大な集団、戦い続ける組織、黒の猟団だ! 名前くらいはお前程度のやつでも聞いた事はあるだろう?」
うん、黒なのか青なのか、どっちだよ? って意味のわからなさ具合といい、でも、バックに控える大きさを予感させる言葉といい、大体、大丈夫、うまく話は乗った感じがする。
あとは、相槌的な適当な驚きを返せば、自然にこの人は喋ってくれる筈だ。
だから、
「何言ってる? 何でそんな団体がここ浅階層にいる?」
って角田さん、そして、
「それに今、黒の猟団は、ギルドの依頼を受けてる協力組織になってる筈だぞ、このラミアの件はともかく、俺たちに攻撃してくる理由は無いだろ?」
って、絶妙なスルーパス入ったよ。
忍者さんは、その目を見開いて、角田さんに尋ねるんだ。
「貴様は、ギルドの関係者か?」
すると角田さんは、
「そうだと言ったらどうする?」
って見事な挑発が入ったよ。僕だったら素直に『違います』って言っちゃうところだったよ。
それにしても、横で話を聞いている僕は、角田さんって、意外にギルドの内部な事情にも詳しいんだ、ってびっくりもしたよ。今のギルドのこのダンジョンでの動きを知ってるって事だもんね。
本当に、角田さんて何者なんだろ?
魔法の事といい、ギルドの内情に詳しい事といい、幹部の人達にも普通に話できるし連絡先知ってるし。
この忍者さんといい、僕の周りには謎しかないなあ、近くも遠くもわからない事だらけだよなあ、なんて思ってると、春夏さんが笑顔を向けてくれた。
じゃあ、いいか。
今は、目の前の問題に集中しようって思ったよ。