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第117話【そして形は成り始める】

 私は、その事実をだいぶ後で知ることになる。


 だから、その時、何も知らない私はただひたすら彼に悪いことをしたと言う罪の意識しかなかった。


 滅ぶにしても方法や過程がある。


 それを邪魔されたくなかった私たちも、次の殲滅の凶歌と当時は認識されていた春夏という少女の存在を消してしまったことへの後悔は持っていたのだ。


 今更滅び方もないだろうに。


 それを選べるほど、私たちは純粋な犠牲者でもなければ被害者ですらない。


 かつてこの新世界と呼ばれる地を蹂躙して来たのは他ならない私達なのだから。


 そして、その接触がいかなるモノだとしても、この世界の住人は決して私達を受け入れる事はなかった。


 新世界は、私達の力を、私達を拒絶し続けた。


 唯一の例外とするなら、あの青鬼の降りた、多紫町。


 そして、まるで試すように受け入れてくれた北海道だけ。


 かつて新世界に展開しようとした、それでも友好な私達の仲間は例外なく駆逐されている。


  まるで、自分達にない力を恐れて、いや、嫌うように、その力、奇跡を記録に残しながらなお新世界であるこの社会は拒絶した。


 どうやら私達の持つ力は手に余るらしい。


 こちらの人間は、誰もが簡単に利用できて、誰もが簡単に入手できる当たり前の力を望み、選ばれたもの、希少な者が扱えるこの力を切り捨てた。


 愚かな事だと思う。


 しかし、実際はこちらの新世界は発展してそして維持している。


 比べて我々の世界は壊れて疲弊する。


 今の私達の知識では、ここで言う所のスキルや魔法は、世界をゆっくりと壊して行くことがわかった。


 だから、今の大地を使い潰して、新しいこの新世界の大地へと乗り換えようとする。


 そして、ここを使い潰すつもりなのだ。


 かつて、こちら側に来た者達が、当時の歴史によって滅ぼされたり消されたりしたのは、この世界における大きな自浄作用だったのかもしれない。


 何より、新世界を我が物にしようなんて、そんな事、許されるはずもない。


 しかし、私達の世界の大部分の勢力は、この便利な力、大きな力を手放す気などなくて、今度はこちらの世界へ乗り換えようとしている。


 こちらの世界に干渉しないように、私たちは、私達の世界と共に滅びる義務がある。


 だから、私は少年の思いに答えよう。


 その小さな体に大きな戦闘力を宿していることに、私は運命さえ感じた。


 彼なら上手に私達を滅ぼしてくれる。


 全てを一撃で、私達の世界を滅ぼす力に私は期待した。


 だから、受け入れた。


 最初からできないと思う、彼の大好きな東雲春夏の再生を試みた。


 二柱のドラゴンは言う。


 「できるはずはない」


 「できる訳なないっしょ」


 と、


 他の三柱神も言った。


 「そもそも、外で起こったことだ、何より体も因果から外してしまっている」


 「位置が特定できない、彼女の残滓は、どこにでもあり、微かすぎて捕まえる事などできない」


 「生命倫理の法はこのダンジョンの中でこそ有効、外で消滅したモノは拾えない」


 今は3人の佐藤和子、三柱神はそう私に言い聞かせる。


 そして、アモンまでも言うのだ。


 「彼女、東雲春夏についてはもう諦めろ、変わりは私が確保している、これを育てて、夫にする、そしてお前の願いである運命の輪に乗せる」


 と言い出す始末だった。


 そして、同じくダンジョンとして表向きの三柱神を名乗らせている鬼の種族であるブリドが、この子を欲しがるものの、どのような因果の果てとして自分の思い通りにいかない未来を知って、諦めて帰って行ったと言う話だ。


 そのおかげで、私は理解してしまう。


 この子は私の因果となって形を整え始めている。


 すでに、性別を決められてしまった。


 本来、そのような意識など持つはずもないのであるが、急激に私はとりあえずある人格の中に性格と呼べるものを持つようになり、そして、意識は完全な女性となった。


 もちろん地底に横たわる名もなき偉大な白き神としての情緒は、数え切れないの命やそれに満たないものを生み出す性能上、最初から母性らしき欠片は持っているので、これは自然な流れだと思う。


 何より、これはこの後、春夏の中に入ることになる上で都合がよかった。


 もちろん、神とはいえ、所詮、こちらの世界へ捨てるように地に組み込まれた神だ。元より白き神だ、そんな個性と呼べる人格など最初からあるはずもなく、そんな仕組みも持たされてはいない。


 ここにいる凶竜が、自身の姿を捨て、この世界の小さい女子高生になった時の気持ちがわからないでいた私であったが、自分を、一つの人格として扱ってくれるこの状況をどのように受け止めていいのかわからなかった上で、私に向けられて来る具体的な彼からの意識は強烈で、衝動とも衝撃とも取れる彼の意思を受け止める為の個としての意識を持つことのこの変化に驚く。


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