第113話【忍き無いな、この忍者さん】
忍者頭巾(?)で顔は覆われているものの、顔そのものは隠してないな、印象的には釣り上がった大きな目がで、だからちょっと痩せすぎたカマキリな感じに見える、ちょっと神経質そうって思えるのはもちろん僕の勝手な印象だよ。
顔もバッチリ見えてるし、この人。だから主張としての忍者かもしれないって、そろそろ僕の思考も、おかしな方向に向かってる中、彼は話始める。
「なんだ? 初心者ダンジョンウォーカーか? こんなところで俺に会うことになるなんて、運がねえな」
なんて勝手に話始める。
まあ、でも、この状況を理解するためには聞いておこうかな、って、いろいろ話てくれそうな感じだしね。って思ってると、
「忍者一匹ですね、一気に行きますか、焼いても、凍らせても、感電っての良いですね、ぶっ潰します?」
って角田さんが、相手に聞こえる普通の声で聞いてくるし、春夏さんに至っては、
「私がやる? それとも、秋くんやってみる? 今の秋くんがお試しにするならいい感じの相手だけど? あ、危なくなったらちゃんと手伝うから」
とか言い出す。
ちょっと、みんな、一旦、落ち着こうよ。
僕は忍者さんを見る。
黙って、こっちを見てる忍者さん。
ここで確信するんだよ。だから、僕は、なるべく小さな声でみんなに伝えた。
「いや、ちょっと、話を聞こうよ、この人、聞かれもしないのに勝手にベラベラ喋るタイプの人だよ、忍ばないタイプの忍者さんだよ、ここは、まだ黙ってよう」
って提案したら、春夏さんは「うん」って言って、角田さんは、「わかりました」って言って、シリカさんは空気だった。
僕らは、ラミアさんを背後にして、大きさ的には無理だけど隠す様に、その忍者さんと対峙する。
何はとこあれ、ラミアさんは守らないとだよ。
で、そこに自然な流れでシリカさんも入るんだよね。そして、ラミアさんはシリカさんを自分の体の下にしてくれるんだ。
もう、そんなに元気なさそうなのに、心配してるけど、ラミアさんもまた僕らを心配してるって顔してた。
この人から情報をある程度引き出したら、急ごうって思う。
角田さんが言うには、これ以上、傷つかなければ死ぬ事もないらしいから、精神的には余裕は出ては来てるんだけどね。でも、心配は心配。
さて、僕らの方は良いとして、どこか言葉詰まりの忍者さんだ。
これでもう大丈夫。さあ、続きをどうぞ、って感じで、その忍者な人を見つめる僕。
でも、その忍者の人、話の腰を折られて、ちょっと話辛そうになってるな、て気がつく僕は、この無言の空間がこのまま長くならないように、
「これは一体、どういう事なんですか?!」
って言って、話を振ってみる。僕らの相談は無かった事にする勢いで言ってみる。
ハッと、気がつく忍者の人。「お、おおおお……」って噛んでしまう。
急にいいパス来たもんだから、あまりの好機に焦ってしまったようだ、もちろんそんな事には突っ込まないよ。ここは華麗にスルーだよ。
ちょっと間があいて、一瞬だけど、周りの、この『鏡界の海』の静けさが痛いくらいの空気が通過する。
そして、
「驚いたか、小僧!」
いや、何に?
危ない、危ない、思わず口に出して言ってしまうところだった。また余計なツッコミで話の腰を折ってしまうところだった。
ちょと早い早い、何か飛ばしたよ。ちゃんと順序だって話て行かないとさ、こういう風に、一度、話の腰を折ると、その修正って時間と手間がかかるよね。自動的に話てくれそうなもんだから、こっちもそれに乗りたいからやたらと気を使ってしまうよ。
結構、デリケートな忍者さんかな?
仕方ないので、もう一回、
「ここで何してるんですか? これは一体?」
同じ趣旨の内容を違う言葉で言ってあげた。戸惑うように言ってみた。
すると、そのパスが通ったみたいになって、忍者さんは今までのことが無かった様に饒舌に話始めるんだ。