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第113話【造られた東雲は未だ居場所を探している】

 長いルーツを辿ると、その多月を中心とした、あの微水さま、つまりは青鬼の街で、一度だけ起こった村の一部の決起による当時のこの国の戦国の世に打って出ようと、影響を与えようとした事件は、その後生き残って再び勢力を取り戻して東雲によって潰えるんだけど、その時、謀反を起こした生き残りの勢力が反省した後、裏切った自分達が再び多紫を名乗ることが許されないと考えて、文字を少しいじって、紫を柴に変えて、新たな集落を作り、それが一族になって、その後、繁栄させて、現在の大柴グループになっているそうだ。


 初めて聞いた時にはびっくりだよ。だって雪華さんも巡り巡って僕や蒼さんの親戚になるって事だからね。もちろんその前段階として、僕と蒼さんにもそんなつながりがあるのってびっくりした。


 で、3派に別れた最後の東雲は長い歴史の中で、他の種族とかに吸収されて行って、緩やかに消えて行ったんだって。


 それでも、今もこうして、蒼さんや、春夏姉みたいな過去からの血を色濃く残す子供が現れてるのだから、きっと強者の集まるダンジョンウォーカーの中にも、意外な人にその血が流れているのではないかって言われてる。


 これらのことを考えてみると、今ではなく、過去から今に至るまで、結構な影響力をこっち側に与えてるわけなんだな、異世界。


 僕を含む一族は常に異世界と戦う運命にあったってことだね。


 それでも、彼ら異世界側って全部が悪いわけでもない。


 その証拠が北海道ダンジョン。


 だから春夏さんの存在。


 常に人の味方で、北海道の味方で、僕の味方。


 白を名乗る人たちは、僕らの身を案じて、『地底に横たわる名もなき偉大な白き神』である生まれたての名もなき神様を一柱をこちらに送ってくれた。


 それは全部終わらす為に、滅びゆく異世界を完全に破壊する為に、僕一人に、外に散った全ての東雲の一族と、異世界の白を名乗る人たちの願いによって、僕と北海道ダンジョンと、アキシオンさんはここにいるって事になるんだよ。


 もうタイミングバッチリすぎて泣けて来そうだよ。


 そして、もう一つ。こっちは影の部分。


 人工的に東雲を造ろうした事実を僕は知ってる。


 それは、人が、国が、世界が生き残ろうとする為に、倫理は常識を捨てておこなる所業に他ならなかった。


 これを行なった人は例外なく犯罪者でいいと思う。


 たとえ、その一人に雪華さんのお母さんがいたとしても、やっていいことと悪いことがある。


 でも僕は思うんだ。


 この事実がなかったら、僕は葉山を知らなかった筈。って。


 だから、ちょっとは海賀も肯定しようと思うと、自分自身の都合の良さに吐き気すらしてくるんだ。


 だから、もう、これは日陰において置くことはできない。


 そう思えるくらい、僕は葉山静流って言う一人の女の子の隠しきれない存在としての闇の濃さを知る。

 

 そして、その濃い闇は未だ彼女の心に深い影を落としている。


 彼女にとって、生きるとか死ぬなんて事は、とても小さい問題なのかもしれないって、ただそれだけは理解しているつもり。


 外からやって来る問題を、たとえ元凶の海賀を潰したところで、葉山はまだ救われてはいないって、僕はそんな秘密を知ってしまって奈落にいる様な気分になる。


 だから、彼女と同じ場所。


 あの時、救われたって思っていた時も、そして今もここにいるんだ。


 でも、ここから先は葉山自身の問題で、葉山がどう思うかって事なんだけど、それでも僕は一度握った手を離すことは絶対にしない。


 彼女が、葉山が何をしようとしているか、僕はようやく理解できたから。


 葉山は言うんだ。


 「春夏は絶対に真壁の前に姿を見せるよ」


 って、


 そして、


 「その時は多少姿が変わってても受け入れないとダメだよ」


 そう言って笑う彼女の顔が、僕には泣いている顔に見えるんだよ。


 人の手によって調整され作られた東雲は、未だ自身の存在を確立できないでいる。


 まるで、誰かの代わりに消えゆくことが、自分の生きている価値で実感だとでも言う様にだ。


 そんなの絶対に許さないから。

 









 


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