第108話【愛弟子とのたわいのない毎日】
今更なんだけど、僕って、一応は魔王を名乗ってる。
つまりはダンジョン側の代表な訳で、もちろんそれに伴う実力も実行力も認められているからなんだけど、その辺は以前の大通りに一件が大きく絡んでて、僕自身の能力の開示によって認めらてる訳なんだよ。
まあ、僕ってか概ねあの、国連との紛争の結果はアキシオンさんによるところが大きいんだけど、そのアキシオンさん曰く、あの時、僕の中にある北海道ダンジョンと直結した能力を遺憾無く発揮した場合、瞬時の殲滅も可能だったらしくて、アキシオンさんとしては今後の事も考えてソフトランディングさせたに過ぎないって言われてる。
つまり、魔王を名乗りながら、国連を含む機関やこの国の政府にも、好意的に見られているのはアキシオンさんのおかげってことになるなあ。
あの時は、僕自身、北海道ダンジョンを誰にも取られたくなかったし、いきなり武装してやって来て、好き勝手な事言うな! って感じだったから、今、思い出しても僕の中であまりない怒りの感情に支配されていたんだと思う。
周りも見えなくなってたしね。
って、素直に反省する僕に対してアキシオンさんは、
「初彼女を奪われそうになってる、彼氏やってる男の子なんてそんなものですよ」
ってよくわからないフォローを入れてくれた。
そうなの? よくわからないけど。『配偶者維持の本能』ってアキシオンさんは言ってた。ふーんって聞き流すいつもの僕だったよ。
それはともかく、今は多方面とも関係も良くて、事実上の人畜無害の上、普通の高校生な訳で、普通に日常を送っている訳なんだけど、この時点で、報道機関も国の中でも特に文科省、そして何より北海道庁に強く言われているおかげで、連日連夜、マスコミに追われれる様な生活も最近はしてはないし、それなりに気を使われている。
もちろん魔王としてはダンジョンを公言して守れるし、形の上では君臨しているわけなんだけど、僕が何しようとダンジョンはダンジョンな訳で、普通にモンスターがダンジョンウォーカーを襲うのは以前からのお約束な訳で、僕がどうこうってよりも、その魔王って言葉事態も、単なる呼称に過ぎなくて、むしろ、雰囲気というか、その実態は一日駅長さんとか、一日所長なんてものに近いのかもしれない。
政府の人達と一緒になって落ちて来る異世界への対策とかも練れるし、魔王って言う割りに、あまり非人道的な行いはしていないし、また犯罪的な行動もしていないから、特に何を恐れられているってわけもなく、言うならば普通な魔王なわけだ。平素な魔王って感じなんだよ。
その代わり顔とかは覚えられてるから、それなりの有名人ではあるけどね。
特にダンジョン内外問わず、知らない人からの挨拶にも慣れて来ている昨今ではあるんだよ。スーパーとかコンビニはともかく、個人の商店とかいくとおまけしてくれるしね。
ともかく僕を取り巻く今の日常な訳で、特にこの所は平和に満ち満ちていたんだけどなあ。
「で、あれ一体どう言う事?」
って僕に凄い顔して尋ねて来るのは僕と一緒にリビングでお茶飲んでる葉山だった。
その後ろでは、
「お、お、お、お館様、弟子が師匠の生活の世話をするのは、し、し、至極当然の事でありますから、わ、わ、わわ、私としては何を憂うつもりもございません」
って言ってるのは蒼さんだよ。言いながら、僕の腕の摘んで引っ張ってる力が意外な程強くて、痛いよ蒼さん。
「皆さん、落ち着きましょうよ、別にお夕食を作るくらいは当たり前じゃないですか、ねえ秋先輩」
ってど言うわけか、雪華さんもいるんだよなあ、もう夕食の時間だから家に帰ればいいのにね、今はお母さんの雪灯さんも雪華さんの家に帰ってるし、一家団欒じゃないかなあ、って思う。
で、雪華さんもいるから茉薙もいる。