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第105話【今、英雄が求められている!】

 結局、ダンジョン頂上決戦(女子)と一応は呼ばれた春夏姉vs蒼さんは、決着が付かず、7時間におよぶ戦いは、互いの足腰をたたなくなるほどまでに、余す事なく全力でぶつかり続けて、最後の方は、どうやら剣も重たくて上がらなくなって、お互い素手殴り合うものの、相手にダメージを与える様な一撃も入れられず、まるで、仲良しの猫が中腰になって爪も出さずに猫パンチの応酬の様に見えた。


 見学者も僕ら意外にいなくなったあたりで、二人とも棒きれの様にパタンと倒れて、その後は舌戦となったところで、それぞれの陣営に引き取られた。


 引き取った時には、蒼さんも春夏姉も、もう息をするのも面倒臭いくらいに疲弊していて、こうなるまでも、戦い合わないといけない互いの存在を、僕はひたすらすごいと思った。


 もう、互いに憎しみとか、因習とか、仲が悪いとか、そんなんじゃなく、顔見たから戦う、くらいの条件反射が長い歴史の中で身についている一族同士なんだなって思った。


 変な仏心から、余計に、仲介とかしないで放っておこうって心に誓ったよ。


 蒼さんは、葉山と薫子さんが抱え上げて、僕は春夏姉さんを担ぎ上げたところで、真冬さんが来て、ペコリと僕に頭を下げて春夏姉を連れて帰ってしまった。


 そんな後ろ姿を見ながら、僕は僕の本心を、誰にも言えなかった、得体の知れないわがままを、すっぱりと春夏姉に形にされてしまってなんか気分が良かった。


 蒼さんの方はと言うと、僕らと一緒に帰るって言ってて聞かないから、そのままその変に打ち捨てる様に転がってる。本人も「お見苦しい姿を申し訳ありません」ってピクリとも動かないで言ってるのでただの疲労だから、最後に連れて帰れば今はいいなあ、って思った。


 「あとは、滝壺さんを口説くだけだなあ」


 なんて口に出した時に、葉山から、


 「真壁、まだ女の子ふやすつもりなの?」


 って言われて、だから、こう言う時こそ心を読んで悟ってよ! そう言う意味じゃ無いから、って思って葉山を見る目が呆れる僕は、


 「そんなの怖くて見れる訳ないじゃん!」


 ってプンスカしている葉山を他所に、最後まで事の成り行きを見守って残っている、滝壺さんを含む3人のところに行ったら、僕を確認してから急に滝壺さん、頭を下げて来るんだよね。さっきまでの怪訝な表情なんてどこにもなくて、


 「あの時はありがとうございました!」


 って言うから驚いて、


 「聞きました、石狩川で私を助けてくれたのは魔王さんだったんですね」


 って言う。


 あの白粉とかで顔とかよくわかるなあ、って思ってたら、彼女と一緒に、桃さんと梓さんがいたので、彼女達が説明してくれた様だった。


 「そんな、助けただなんて……」


 と恐縮する僕。


 だって、僕は、ちょっと橋の上で危ないなあ、って思って行動しただけで、あの後、剣の賠償の事とかで動いたのは、雪華さんや瑠璃さんや桃さんだから、僕は特に何にもしていないよ、って言いいたいんだけど、


 「でも、お前が動かなければ、誰も動かなかったんだぞ」


 って桃さんが言うから、そんなもんかなあ、って思いつつ。


 「そんなのはいいよ」


 って言っておいた。


 まあ、海賀の方のやり方にも正直、見かねていたものはあるしね、だから、滝壺さんを助けたと言うより、みんなを助けたかったんだよ。


 もちろん、その中には雨崎さんも含まれていた訳だし、その辺は気にしなくていいよ、って思って、それを告げようとしたら、


 「やります」


 って滝壺さんがいきなり言うからびっくりして、


 「まだ何も話してないよ」


 って言ったら、


 「頼みたいことがあるんですよね?」


 って尋ねられて、


 「うん」


 って答えると、


 「やります、やらせて下さい」


 って聞く前から言われるから、


 「ちょっと落ち着いて、といいうか説明させて」


 と言って、僕はこの内容を懇切丁寧に説明した。


 「あのね、あなたには。英雄になってもらいたいの」


 って横から葉山が言い出す。


 まあ、どっちが説明してもいいんだけどさ、この辺は言い出した僕に言わせて欲しかったよ。


 でも滝壺さんは、葉山の言葉を受け取ってから、僕を見て、


 「そうなんですか?」


 って聞いて来るから、その後は僕が説明した。


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