第104話【春夏姉と決着、その後再び、東雲と多月】
思い出して、僕は眼の前、高さににアキシオンを構える。イメージするのは弾丸。
切っ先を弾丸に見立てて、ピストルを撃つイメージで、前に突き出す。
検索、発見、実施の過程の後に、春夏姉の突きに間に合って、僕の剣と、春夏姉の剣。互いのアキシオンの先端が、激しく衝突するも、体を持っていかれるのは、春夏姉の方だった。
「うわ!」
って言って、まるで空気に投げられるかの様に自分の剣に巻き込まれ体が空に浮いて、床に叩きつけられていた。
流石に受け身はとっていたけど、結構ダメージ大きそう。
「イテテ」
と言ってすぐに起き上がる春夏姉、そして、いの一番に言ったのは、
「お前、それ、多月家の『貫』だろ?」
って言うから、
「うん」
って答えると、
「それ、門外不出な技だぞ、基本にあって奥義の一つだ」
って教えてくれる。
確かに少ない動きで、これだけの破壊力というか効果を持ってる技だから、いろいろ便利に使わせてもらってるけど、そんな大層な技たったんだね、蒼さんのおばああちゃん、褐さん、割と軽いノリで教えてくれたから、そんな事まるで知らなかった僕だったよ。
「多月の身内で、それなりの実力者だと認めないと伝授されないはずじゃなかったのかよ? 多月の娘」
って僕じゃなくて蒼さんに尋ねてる春夏姉。
聞かれた蒼さんは、どう言う心情なのかどこか誇らし気だ。
「くっそ、この技に負けるのは二回目になっちまったぜ」
って言ってる。
きっと、僕の知らないところで、春夏姉はあの、褐さんに会ってるんだなあ、って理解できたよ。
そして、今日に限って、協力的で、優しい従姉妹のお姉さん的な春夏さんの声色が変わって、
「まさかとは思うが、秋、お前、多月の家の奴らに取り込まれてはいないだろうな?」
って聞いてくる。
え? どうしたの? 急に人が変わったみたいだよ春夏姉……。
「お前は知らないだろうから教えといてやるが、多月家と東雲家は、生涯争う事を決められた、決して歩み寄れない事を互いに課している家系なんだぞ」
って言われる。
いやあ……、そんな事言われてもなあ、実際、蒼さんなんて家に住んでる訳だし……。
「その娘がな、本来東雲の家の出である今日花の息子に、傅いているなら多目にも見るがな、そこに取り込まれたら、秋、いくらお前でも、その時は敵だぞ」
って言われる、すごい顔して言われる、近いよ、春夏姉、怖い顔が近い。
そこに今度は新しい殺気。
顔を話して、春夏姉は言う。
「おい、秋、飼い犬の躾がなってねーぞ」
そこには蒼さんがいて、こっちを、と言うか春夏姉を、敵対する意思を隠そうとせずに睨みつけてる。
「お館様、これより蒼は、この者を討って、お館様を古き因習の囲いから解き放って差し上げます」
とか、こちらもいつもの蒼さんの声と雰囲気じゃあないなあ、って感じで言い出すんだけど、
「おお、良いぜ、できるモンならやってみろ、多月の!」
「覚悟いたせ、東雲!」
僕を放り出して、二人は対戦を開始する。
僕にはこの二人の家系の因縁とか因習とかよくわからなかったけど、少なくとも決着がつくまでは見守っていようとは思ったよ。
いつの間にか、僕の後ろには葉山と滝壺さん、そして僕にセイコマートオリジナルなドリンク『濃いお茶』を差し出して来る雨崎さん。
それを受け取りつつ、グビッとやって、いつこんなの買ったんだろ?って思ってたら、僕が春夏姉と話している間に、さらに結構な人が集まっていて、そこに露店とか出てて、あ、売り子は異造子の梓さんだね、だから当然、桃さんもいるし、そこには瑠璃さんもいた。
そして女子頂上決戦って、入場料をとってるギルドの人達。だから真希さんが中心になってる。
英雄を探しに来て、雪華さんの所為でグダグダになってしまった僕たちだけど、思いもよらないところでイベントになってしまって、でも、まあ、これでよかったかな。
決着ついたら、滝壺さんに英雄の件お願いしてって流れでいいかな。
そして、会場ではどちらが勝つかって話で盛り上がってるけど、僕から見てもどっちも負けるイメージってなくて、ともかく怪我とかしない様にね、って思いつつも、あ、雪華さんがいるから即死以外の方向でって言いかけて、そんな事を言うのも野暮だよなあ、って二人の、春夏姉と蒼さんの決闘には似合わない明るい表情を見て思う僕だったよ。